Skip to main content

モロッコの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(FAO)が発表した2024年7月のデータに基づくと、モロッコの牛乳生産量は1961年の35万トンから2023年の195.7万トンへと長期的には大幅に増加しています。しかし、2020年以降は縮小傾向が見られ、とくに2022年と2023年のデータでは急激な減少が観察されます。地政学的課題や気候変動、農業政策がその背景にあると考えられます。

---

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,957,000
-5% ↓
2022年 2,060,000
-20% ↓
2021年 2,575,000
-1.96% ↓
2020年 2,626,500 -
2019年 2,626,500 -
2018年 2,626,500 -
2017年 2,626,500
2% ↑
2016年 2,575,000
2.04% ↑
2015年 2,523,500
2.08% ↑
2014年 2,472,000
4.8% ↑
2013年 2,358,700
-8.4% ↓
2012年 2,575,000
13.64% ↑
2011年 2,266,000
15.79% ↑
2010年 1,957,000
8.72% ↑
2009年 1,800,000
5.88% ↑
2008年 1,700,000
6.25% ↑
2007年 1,600,000
6.67% ↑
2006年 1,500,000
7.14% ↑
2005年 1,400,000
1.82% ↑
2004年 1,375,000
10% ↑
2003年 1,250,000
1.13% ↑
2002年 1,236,000
9.09% ↑
2001年 1,133,000
-4.35% ↓
2000年 1,184,500
1.77% ↑
1999年 1,163,900
10.78% ↑
1998年 1,050,600
-14.93% ↓
1997年 1,235,000
41.06% ↑
1996年 875,500
2.41% ↑
1995年 854,900
1.22% ↑
1994年 844,600
0.74% ↑
1993年 838,420
-11.52% ↓
1992年 947,600
2% ↑
1991年 929,000
3.8% ↑
1990年 895,000
-7.06% ↓
1989年 963,000
8.45% ↑
1988年 888,000
13.41% ↑
1987年 783,000
7.26% ↑
1986年 730,000
0.27% ↑
1985年 728,000
4% ↑
1984年 700,000
-12.5% ↓
1983年 800,000
1.27% ↑
1982年 790,000
1.28% ↑
1981年 780,000
6.85% ↑
1980年 730,000
-2.67% ↓
1979年 750,000
20.97% ↑
1978年 620,000
10.71% ↑
1977年 560,000
12% ↑
1976年 500,000
9.41% ↑
1975年 457,000
-4.79% ↓
1974年 480,000
-4% ↓
1973年 500,000
4.17% ↑
1972年 480,000
3.45% ↑
1971年 464,000
3.11% ↑
1970年 450,000
2.27% ↑
1969年 440,000
6.02% ↑
1968年 415,000 -
1967年 415,000
1.22% ↑
1966年 410,000
7.75% ↑
1965年 380,500
6.03% ↑
1964年 358,875
6.89% ↑
1963年 335,750
4.76% ↑
1962年 320,500
-8.43% ↓
1961年 350,000 -

モロッコの牛乳生産量の推移を振り返ると、1960年代からおよそ60年間にわたり全体的には増加傾向が続きました。1961年の35万トンから1970年代にかけて堅調な成長を遂げ、一時的な停滞を挟みながらも、1997年には123.5万トン、2010年代にはさらに増産が加速し、2017年の262.65万トンをピークに安定する状況が続きました。これはモロッコにおける農業生産基盤の整備や品種改良、農村部のインフラ強化の成果だと考えられます。一方で、近年では2020年以降、明らかに減少に転じ、2023年には195.7万トンまで下落しました。この急減は、主に自然災害や政治・経済状況の影響を受けた可能性があります。

モロッコの牛乳生産量増加の背景には、政府による農業振興政策が重要な役割を果たしました。特に2008年から進行した「グリーンプラン」と呼ばれる農業改革では、乳製品を含む国内農業の競争力強化や、地域振興、輸出拡大が主な目標とされました。しかしこの間、新型コロナウイルスの流行や、異常気象による干ばつなど、持続可能な資源管理の課題が浮き彫りとなり、生産の持続性が問われる局面にあります。

また、2022年から2023年にかけて生産量が急激に減少した理由として干ばつや水資源不足が挙げられます。モロッコは地中海性気候に属し、降水量が不安定であり、持続的な灌漑や水管理が難しい地域環境にあります。さらに、近年は気候変動の影響により降雨パターンがさらに不安定化し、農作物や牧草が十分に生育しない状況が続いています。これにより、乳牛の飼育環境が悪化し、生産効率が低下しました。また、ウクライナ紛争を背景とした国際的な飼料価格の高騰がコスト増加を招き、生産システムに大きな負担を与えています。

モロッコの牛乳生産量の世界的な位置付けを見ると、アフリカ大陸内では上位に位置していますが、主要な生産国であるインド、アメリカ、中国、EU諸国(ドイツ・フランスなど)と比較すると生産規模は大きく劣ります。特にインドでは、国内消費需要の急拡大に合わせて生産量が増加しており、2023年の生産量は約1億8千万トンに達しています。対照的にモロッコでは、牛乳や乳製品の輸入依存が一定の課題を残しており、ローカルな需要をまかないきれていない状態です。これは国内の畜産業の強化と技術革新が求められる大きな理由の1つです。

解決策として、持続可能な生産体制を築くためには、まず気候変動への対応が急務です。干ばつに強い牧草の普及や、灌漑システムの技術革新、水資源管理の効率化が求められます。また、飼料の自給率向上を目指した農地改革や、効率的な飼料生産技術の導入も不可欠です。さらに、地域コミュニティを巻き込んだ農業教育プログラムの推進や、農業従事者への経済的・技術的支援も長期的な持続可能性の鍵となります。

国際社会との協力も、生産を活性化させるための重要な一環です。フランスをはじめとするEU諸国との技術提携や、アフリカ内の協力(例:アフリカ連合内での資源共有)により、モロッコ国内の課題を緩和し、全体的な生産性向上を目指すべきです。また、地域衝突が与えるリスクを最小限に抑えるため、安定した政策環境の確保も並行して進める必要があります。

結論として、モロッコの牛乳生産は過去数十年間にわたり目覚ましい進歩を遂げた一方で、近年は気候変動や外的要因による試練に直面しています。今後、国際的な協力や政策的支援を活用し、持続可能な生産体制の確立に向けて努力を続けることで、モロッコはさらなる発展を遂げる可能性を秘めています。これにより、国内食料安全保障の向上、および地域社会への経済的恩恵の拡大が期待されます。