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モロッコのサトウキビ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータに基づくと、モロッコのサトウキビ生産量は、1974年から2023年までに大きく変動してきました。1974年の生産量は10,000トンと非常に低い水準でしたが、1990年代後半には1,300,000トンを超えるピークに到達しました。その後、減少傾向が続き、2023年には385,310トンと低水準に落ち込みました。この長期的な推移には、気候変動、政策の影響、農業技術の進展など複数の要因が影響していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 385,310
-32.63% ↓
2022年 571,894
-6.74% ↓
2021年 613,254
-22.62% ↓
2020年 792,492
52.71% ↑
2019年 518,956
-15.77% ↓
2018年 616,114
11.39% ↑
2017年 553,115
29.69% ↑
2016年 426,503
7.89% ↑
2015年 395,316
41.92% ↑
2014年 278,551
-55.04% ↓
2013年 619,561
14.52% ↑
2012年 540,985
-29.18% ↓
2011年 763,913
20.82% ↑
2010年 632,280
-22.23% ↓
2009年 813,040
-10.91% ↓
2008年 912,600
-2.28% ↓
2007年 933,850
-6.33% ↓
2006年 997,000
27.45% ↑
2005年 782,290
-10.31% ↓
2004年 872,180
-2.94% ↓
2003年 898,620
-5.32% ↓
2002年 949,080
-14.8% ↓
2001年 1,114,008
-22.42% ↓
2000年 1,435,931
4.63% ↑
1999年 1,372,395
9.26% ↑
1998年 1,256,065
69.11% ↑
1997年 742,740
-17.39% ↓
1996年 899,116
-12.82% ↓
1995年 1,031,320
11.44% ↑
1994年 925,440
-1.92% ↓
1993年 943,600
-5.05% ↓
1992年 993,745
-3.12% ↓
1991年 1,025,772
0.66% ↑
1990年 1,019,080
3.48% ↑
1989年 984,780
-10.01% ↓
1988年 1,094,320
29.03% ↑
1987年 848,080
7.05% ↑
1986年 792,240
10.03% ↑
1985年 720,000
-7.1% ↓
1984年 775,030
5.46% ↑
1983年 734,920
44.12% ↑
1982年 509,950
-17.95% ↓
1981年 621,500
65.66% ↑
1980年 375,160
27.85% ↑
1979年 293,440
-13.05% ↓
1978年 337,500
90.21% ↑
1977年 177,440
128.66% ↑
1976年 77,600
23.57% ↑
1975年 62,800
528% ↑
1974年 10,000 -

モロッコのサトウキビ生産量の推移を見ると、1974年から生産量が増加を始め、1980年代には持続的な成長を遂げ、最初の大きなピークである1988年には1,094,320トンに到達しました。その後、1998年から2000年にかけてさらに成長を確認でき、この時期には1,400,000トンを超える最高水準で推移しました。しかし、それ以降、生産量は減少の兆しを見せ、2010年代には大幅な減少が続きました。特に、2023年の生産量は385,310トンと50年前の水準に近づいており、気候条件や農業の生産性に関する課題が浮き彫りになっています。

この大きな変動には、様々な地理的、経済的および政策的課題が関与しています。モロッコは地中海性気候および乾燥した気象条件に支配されている国であり、サトウキビのような水を大量に必要とする作物にとっては不利です。特に最近の数十年で影響が増大した気候変動は、乾燥化、異常高温、降雨量不足を引き起こし、灌漑資源が限られるモロッコの農業全体に深刻な影響を与えています。また、社会経済の面では、他の作物の需要や農地の利用が影響を及ぼしており、政策変更や農業収益の変化がサトウキビ産業に影響を与えていると考えられます。

さらに、これらの課題に加え、技術的な進展や政府の施策の遅れは、生産の効率性の向上を妨げています。例えば、隣国の国々と比較した場合、例えばインドでは、潤沢な水資源と高度な灌漑技術がサトウキビの一貫した高い生産性を可能にしています。モロッコはこれに対処するために、乾燥地農業のための革新的な方法や技術を導入する必要があります。

このような背景を踏まえると、モロッコが今後サトウキビの生産量を安定させ、あるいは増産するためにはいくつかの具体的な対策が求められます。まず第一に、農業用の灌漑技術を全面的に見直し、近代化する必要があります。たとえば、節水型灌漑技術を農村部まで広めることで、生産量の安定が期待できます。次に、気候変動への適応策の一環として、水資源管理を強化し、乾燥に強い品種を導入することが重要です。さらに、持続可能な農業政策を支援するために、地域共同体や農業者と密接に協力する枠組みを設け、技術支援と財政支援を並行して進めることが解決策となるでしょう。

地政学的背景も無視できません。モロッコはアフリカ北端に位置し、ヨーロッパやアフリカ諸国との貿易や政策協定において重要な役割を果たしています。この地域における資源争奪や水の利用問題が進行する中、サトウキビ生産が安定しないことは、国内農業に限らず輸出や経済全体に波及効果をもたらす可能性があります。特に、地政学的なリスクが高まる地域紛争や気候変動により水資源がさらに減少する場合、モロッコの自給自足と経済成長に影響を及ぼすリスクが懸念されます。

最後に、2023年の非常に低い生産量は、これらの課題を克服する適切な政策や技術導入が急務であることを示しています。国際社会や開発援助機関との連携を強化し、資金提供やノウハウの共有を行うことで、効率的で持続可能な農業の確立を目指す必要があります。気候変動への適応技術、広範な灌漑設備、乾燥地特有の品種育成への投資を優先することで、モロッコのサトウキビ産業が再び成長軌道に乗れる可能性があります。