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モロッコのテンサイ(甜菜)生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、モロッコのテンサイ生産量は1961年の70,000トンから緩やかな増加を見せ、1990年代から2000年代にかけては安定して約3,000,000トンの生産量を維持してきました。しかし、2015年から2018年にピークを迎えた後、生産量は減少傾向に転じ、2023年には1,469,789トンと大幅に落ち込んでいます。この変動は、農業技術の進歩や自然災害、政策変更といった要因が関係していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,469,789
-22.56% ↓
2022年 1,898,040
-26.26% ↓
2021年 2,573,991
-29.12% ↓
2020年 3,631,554
-1.66% ↓
2019年 3,692,884
-0.48% ↓
2018年 3,710,514
-0.83% ↓
2017年 3,741,438
-11.32% ↓
2016年 4,218,923
8.86% ↑
2015年 3,875,638
20.79% ↑
2014年 3,208,617
49.78% ↑
2013年 2,142,221
31.69% ↑
2012年 1,626,670
-46.41% ↓
2011年 3,035,143
24.6% ↑
2010年 2,435,910
-11.53% ↓
2009年 2,753,370
-5.89% ↓
2008年 2,925,700
17.78% ↑
2007年 2,484,000
-2.65% ↓
2006年 2,551,690
-22.71% ↓
2005年 3,301,540
3.5% ↑
2004年 3,190,010
-6.96% ↓
2003年 3,428,500
14.79% ↑
2002年 2,986,850
5.32% ↑
2001年 2,835,930
-1.65% ↓
2000年 2,883,400
-10.91% ↓
1999年 3,236,380
14.66% ↑
1998年 2,822,670
8.03% ↑
1997年 2,612,840
-4.97% ↓
1996年 2,749,590
1.18% ↑
1995年 2,717,400
-13.57% ↓
1994年 3,143,890
2.69% ↑
1993年 3,061,518
11.16% ↑
1992年 2,754,070
-9.29% ↓
1991年 3,036,170
1.76% ↑
1990年 2,983,590
3.7% ↑
1989年 2,877,025
-3.78% ↓
1988年 2,990,180
8.72% ↑
1987年 2,750,300
4.78% ↑
1986年 2,624,800
16.92% ↑
1985年 2,245,000
-11.1% ↓
1984年 2,525,400
-2.44% ↓
1983年 2,588,560
11.87% ↑
1982年 2,314,000
9.81% ↑
1981年 2,107,200
-5.99% ↓
1980年 2,241,490
3.08% ↑
1979年 2,174,549
-9.22% ↓
1978年 2,395,400
62.54% ↑
1977年 1,473,690
-37.6% ↓
1976年 2,361,610
31.79% ↑
1975年 1,791,920
-7.81% ↓
1974年 1,943,620
50.36% ↑
1973年 1,292,680
-22.92% ↓
1972年 1,677,000
5.88% ↑
1971年 1,583,900
42.18% ↑
1970年 1,114,000
23.96% ↑
1969年 898,700
20.16% ↑
1968年 747,940
105.48% ↑
1967年 364,000
-4.71% ↓
1966年 382,000
118.35% ↑
1965年 174,950
-3.27% ↓
1964年 180,870
146.85% ↑
1963年 73,270
4.67% ↑
1962年 70,000 -
1961年 70,000 -

モロッコのテンサイ生産量の長期的なデータを分析すると、ここには非常に興味深い傾向が見られます。1960年代の初めから1970年代の中盤までは、生産量が急速に伸び、特に1976年には2,361,610トンと大幅な増加を記録しました。これは、当時の灌漑技術の向上や農業支援政策の導入が背景にあると考えられます。その後も増減を繰り返しながらも、安定的に年間3,000,000トン前後の生産量を維持してきたことから、モロッコのテンサイ生産が国内で非常に重要な役割を果たしてきたことがわかります。

一方で、2015年以降に記録された急激な生産増加(4,218,923トン)と、その後の生産低下(2023年の1,469,789トン)は注目に値します。この変動には、複数の要因が重なっている可能性があります。まず、2015年から2018年にかけての増加は、土壌改良技術の進歩や有利な気象条件が影響したと考えられます。しかし、2019年以降の生産減少は、気候変動による干ばつや水不足に加え、農業資源の不足、肥料価格の高騰、パンデミック後の経済的困難が大きく影響している可能性が高いです。

さらに、地政学的な要因も考慮する必要があります。モロッコはアフリカ北西部に位置し、地中海性気候を享受する一方で、近隣諸国との資源分配や政治的動向から影響を受ける地域でもあります。水資源の競合が激化する中、持続可能な農業モデルを構築することが急務です。最近の生産量低下では、こうした地政学的背景が農業生産全体に影響を及ぼしている可能性も否定できません。

将来的にモロッコのテンサイ生産量を回復、ないし安定させるためには、複数のアプローチが必要です。まずは、気候変動への適応策を強化することが重要です。これには、抗乾燥性作物種の導入や、土壌保全技術の促進が含まれます。特に、モロッコでは灌漑システムの効率化が長期的課題ですので、これを国家政策として優先させるべきです。次に、地域の農業を支える持続可能な水資源管理が欠かせません。中長期的には、地域間協力や国際援助も積極的に利用し、インフラ投資や技術移転を通じて農業基盤を強化することが望まれます。

結論として、モロッコのテンサイ生産量はこれまで技術革新や政策によって進展を遂げてきましたが、近年の大幅な生産低下を背景に、新たな課題に直面しています。これを克服するには、気候変動の影響を最小化するための対策を講じるだけでなく、地域間協力の枠組みを強化し、農業効率を高めるための新たなモデルを取り入れる必要があります。国際的な支援と地元コミュニティの自主的な取り組みを結びつけることで、持続可能な農業モデルの構築が期待されます。