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モロッコのブドウ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表した最新データによると、モロッコのブドウ生産量は1960年代以降、大きな変動を経てきました。特にピークとなった2019年には459,500トンを記録しましたが、その後は減少傾向が見られ、2023年には309,602トンと近年の水準から大幅に低下しています。1960年代の高い生産量を一度大きく下回った1970年代以降、長期的な回復傾向を辿ったものの、周期的な不安定性が続いています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 309,602
-3.25% ↓
2022年 319,998
-23.83% ↓
2021年 420,113
5.85% ↑
2020年 396,903
-13.62% ↓
2019年 459,500
1.85% ↑
2018年 451,158
19.31% ↑
2017年 378,128
3.63% ↑
2016年 364,866
-12.79% ↓
2015年 418,367
16.55% ↑
2014年 358,961
3.99% ↑
2013年 345,195
0.96% ↑
2012年 341,902
-10.46% ↓
2011年 381,861
10.9% ↑
2010年 344,334
1.83% ↑
2009年 338,130
16.28% ↑
2008年 290,794
-10.19% ↓
2007年 323,800
-10.81% ↓
2006年 363,040
8.69% ↑
2005年 334,000
6.03% ↑
2004年 315,000
-7.22% ↓
2003年 339,500
23.16% ↑
2002年 275,660
13.39% ↑
2001年 243,100
-3.76% ↓
2000年 252,600
-24.55% ↓
1999年 334,800
28% ↑
1998年 261,560
-0.17% ↓
1997年 262,000
35.75% ↑
1996年 193,000
50.78% ↑
1995年 128,000
-54.61% ↓
1994年 282,000
22.4% ↑
1993年 230,400
-21.63% ↓
1992年 294,000
13.51% ↑
1991年 259,000
11.64% ↑
1990年 232,000
-9.82% ↓
1989年 257,253
30.59% ↑
1988年 197,000
-13.97% ↓
1987年 229,000
-25.65% ↓
1986年 308,000
17.65% ↑
1985年 261,800
13.88% ↑
1984年 229,900
15.41% ↑
1983年 199,200
17.18% ↑
1982年 170,000
-34.36% ↓
1981年 259,000
29.5% ↑
1980年 200,000
-16.28% ↓
1979年 238,900
3.87% ↑
1978年 230,000
-5.19% ↓
1977年 242,600
-2.77% ↓
1976年 249,500
-2.92% ↓
1975年 257,000
-11.38% ↓
1974年 290,000
2.69% ↑
1973年 282,400
6.97% ↑
1972年 264,000
-4.21% ↓
1971年 275,600
36.03% ↑
1970年 202,600
26.63% ↑
1969年 160,000
-48.39% ↓
1968年 310,000
30.25% ↑
1967年 238,000
-34.25% ↓
1966年 362,000
-28.6% ↓
1965年 507,000
26.43% ↑
1964年 401,000
2.3% ↑
1963年 392,000
28.95% ↑
1962年 304,000
-14.85% ↓
1961年 357,000 -

モロッコのブドウ生産量推移を分析すると、いくつかの重要なポイントが浮き彫りになります。1961年には357,000トンと堅調なスタートを切っていましたが、1967年から1969年の間に生産量が急激に減少し、1969年には160,000トンと最低水準を記録しました。この時期の大幅な落ち込みは、当時の地政学的リスクや干ばつなどの自然条件の影響を大きく受けた結果と考えられます。

その後の1970年代から1980年代にかけては、年間20万トン台から30万トン台で推移しており、長期的に見ると回復傾向に転じました。しかしながら、この期間も年ごとに生産量が大きく変動しており、水資源の不足などの課題が影響していた可能性があります。同じ地中海性気候を持つスペインやイタリアと比較してみても、この大きな変動はモロッコ特有の現象とも言えます。

1990年代後半から2000年代にかけては、モロッコの農業政策の強化によりブドウ生産量が再び安定化しつつあります。1999年に334,800トンを記録し、以降も2000年代を通じて年間30万から35万トン規模を維持する年が多く見られます。この傾向は、農作物生産に関する技術的な改良や市場開放の結果と関連していると考えられます。

さらに、2010年代後半から2019年にかけては、生産量の急増が目立ちます。2018年には451,158トン、2019年には過去最高の459,500トンに到達しました。この背景には、輸出市場への進出や国際市場の需要増加、気候条件の改善が影響している可能性があります。しかし、2020年以降は再び減少に転じ、2023年には309,602トンへと減少しています。この減少傾向は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる物流や労働力の問題、さらに2022年からの欧州複数国間でのエネルギー危機が影響していると推察されます。

モロッコのブドウ生産の未来に向けた課題としては、まず気候変動が挙げられます。特に降水量の不足や高温化は、農作物に悪影響を及ぼしやすく、ブドウ栽培も例外ではありません。それに加えて、農業用水の管理やインフラの整備も喫緊の課題といえます。例えば、欧州では灌漑技術の効率化や水資源の強化が進んでいる一方で、モロッコはこれらの分野でまだ遅れがあります。さらに、生産の安定性を確保するための農業気象情報の提供や、気象リスクに備えた農作物保険の導入も有効です。

また、国際市場との連携強化も重要です。ブドウやその加工品(例:ワインやレーズン)は輸出産品として大きな可能性を秘めており、モロッコもアフリカ市場だけでなく欧州やアジア市場を視野に入れた政策を取るべきです。特に品質管理や付加価値製品の開発が進めば、国際競争力の向上につながるでしょう。

結論として、モロッコのブドウ生産量は多くの可能性を秘める一方で、地政学的リスクや気候変動、資源管理といった多様な課題を抱えています。国や国際機関には、農業技術の普及や水資源管理の強化、輸出市場の開拓といった具体的な支援が求められます。これらの取り組みを通じて、持続可能で安定したブドウ産業の基盤を築くことができるでしょう。