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モロッコの牛乳生産量推移(1961年~2022年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したモロッコの牛乳生産量のデータによると、モロッコの牛乳生産量は1961年から2022年にかけて大きな増加を見せています。1961年の約39万トンから2020年には271万トン以上に達しました。しかしながら、2021年以降は減少傾向が見られ、2022年には約215万トンとなり、著しい減少が観察されています。この推移には、気候変動や経済的要因、新型コロナウイルスの影響など複合的な要因が関連している可能性が示唆されます。

年度 生産量(トン) 増減率
2022年 2,151,866
-19.36% ↓
2021年 2,668,320
-1.83% ↓
2020年 2,717,938
0.02% ↑
2019年 2,717,478
0.11% ↑
2018年 2,714,446
0.09% ↑
2017年 2,712,001
1.87% ↑
2016年 2,662,282
1.91% ↑
2015年 2,612,269
2% ↑
2014年 2,560,998
3.88% ↑
2013年 2,465,399
-8.23% ↓
2012年 2,686,582
13.17% ↑
2011年 2,373,919
15.94% ↑
2010年 2,047,563
8.88% ↑
2009年 1,880,562
5.62% ↑
2008年 1,780,559
5.91% ↑
2007年 1,681,160
6.31% ↑
2006年 1,581,359
6.83% ↑
2005年 1,480,322
2.01% ↑
2004年 1,451,084
9.83% ↑
2003年 1,321,175
0.84% ↑
2002年 1,310,181
8.09% ↑
2001年 1,212,080
-3.71% ↓
2000年 1,258,723
2.16% ↑
1999年 1,232,054
10.12% ↑
1998年 1,118,778
-14.08% ↓
1997年 1,302,177
37.26% ↑
1996年 948,689
2.68% ↑
1995年 923,921
1.32% ↑
1994年 911,898
0.35% ↑
1993年 908,718
-10.7% ↓
1992年 1,017,565
2.13% ↑
1991年 996,376
3.6% ↑
1990年 961,780
-6.44% ↓
1989年 1,028,020
8.09% ↑
1988年 951,080
11.85% ↑
1987年 850,300
7.48% ↑
1986年 791,140
1.45% ↑
1985年 779,860
4.6% ↑
1984年 745,540
-12.78% ↓
1983年 854,780
1.31% ↑
1982年 843,760
1.33% ↑
1981年 832,720
6.87% ↑
1980年 779,220
-2.62% ↓
1979年 800,200
19.03% ↑
1978年 672,280
10.46% ↑
1977年 608,640
11.14% ↑
1976年 547,620
6.68% ↑
1975年 513,320
-2.15% ↓
1974年 524,600
-3.99% ↓
1973年 546,400
3.64% ↑
1972年 527,200
3.78% ↑
1971年 508,000
2.36% ↑
1970年 496,300
1.89% ↑
1969年 487,100
6.24% ↑
1968年 458,500
0.31% ↑
1967年 457,100
1.74% ↑
1966年 449,300
7.37% ↑
1965年 418,450
5.86% ↑
1964年 395,275
6.34% ↑
1963年 371,700
4.06% ↑
1962年 357,200
-8.43% ↓
1961年 390,100 -

モロッコの牛乳生産量は、この半世紀以上にわたり着実に増加してきました。1961年の生産量は約39万トンに過ぎませんでしたが、1980年代半ばには80万トンに達し、2000年には125万トンを超えました。その後も成長が続き、2010年代にかけては特に顕著な伸びを示し、2018年から2020年には年間生産量が270万トンを上回りました。この成長は、モロッコ政府による農業政策、特に乳製品の生産を強化するための技術普及や経済的支援が背景にあると考えられます。

しかし、2021年以降、下降傾向が見られます。2021年の生産量は約267万トンで、2020年比で約2%の減少、さらに2022年には約215万トンと急激な減少を記録しました。この約20%の減少は、複数の要因が関係している可能性があります。近年の気候変動に伴う干ばつや降水量の減少は、牧草の生産や乳牛の飼育環境に非常に深刻な影響を与えています。また、新型コロナウイルスによる経済的困難が農家の運営にも影響を及ぼし、飼料の価格高騰や供給不足が一層問題を深刻化させたと考えられます。

モロッコは地中海気候とサハラ砂漠の影響を受ける特異な地理的条件にあります。そのため、気候変動の影響を受けやすく、これが農業生産の不安定化に寄与しています。例えば、2022年の生産量減少においても干ばつが大きな要因の一つとされています。地域的には、乳牛用の飼料確保や水資源管理が他国に比べて厳しい状況にあります。

このような課題を解決するためには、まず、農業生産システムの気候適応性を強化することが重要です。具体的には、牧草地の灌漑効率を高める技術の導入や、干ばつ耐性のある作物の普及を進める必要があります。また、飼料作物の国内生産量を増やすためのインフラ投資を進め、輸入に依存する現状を改善することも欠かせません。

さらに、国際的な協力体制を活用し、他国の成功事例を参考に、より効率的で持続可能な乳製品生産システムを構築することが求められます。例えば、イスラエルやオランダなどの乾燥地でも高い乳生産量を維持している国々から技術導入を図ることが考えられます。また、農家への資金援助プログラムや保険プログラムを展開し、生産のリスクを分散させる取り組みも必要です。

さらに、地政学的リスクも無視できません。モロッコは、欧州やアフリカ市場への輸出が重要な収入源であり、国際競争力を保つためにも持続可能な生産の確保が求められます。新型コロナウイルスやウクライナ情勢に伴う物価上昇への対応など複合的な課題を克服するためには、政府と民間企業、国際機関が連携し、乳製品の供給チェーン全体を強化することが重要です。

結論として、モロッコの牛乳生産は歴史的には大きな成長を遂げてきましたが、近年の減少傾向は気候変動、経済的要因、地政学情勢の影響が複雑に絡み合った結果と考えられます。今後、これらの課題に対処し持続可能な生産体制を維持するためには、多面的かつ長期的な視点が必要です。農業政策の面では技術普及と支援策を強化し、加えて国際協力の枠組みを拡大することで、経済的にも持続可能な乳製品の生産を実現することが可能になるでしょう。