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モロッコの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、モロッコの羊肉生産量は1961年には約45,200トンでしたが、長期的には増加傾向を示し、2020年には過去最高の179,000トンを記録しました。その後、2023年には162,250トンにやや減少しています。データからは、天候、経済状況、国際市場の変動が羊肉生産量に影響を及ぼしていることが伺えます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 162,250
-1.06% ↓
2022年 163,981
-8.39% ↓
2021年 179,000 -
2020年 179,000
0.13% ↑
2019年 178,770
0.5% ↑
2018年 177,885
3.03% ↑
2017年 172,650
7.27% ↑
2016年 160,945
2.52% ↑
2015年 156,993
30.44% ↑
2014年 120,359
2% ↑
2013年 118,000
-20.05% ↓
2012年 147,592
2.9% ↑
2011年 143,430
3.19% ↑
2010年 139,000
3.73% ↑
2009年 134,000
10.74% ↑
2008年 121,000
0.83% ↑
2007年 120,000 -
2006年 120,000
4.35% ↑
2005年 115,000
9.52% ↑
2004年 105,000 -
2003年 105,000
-4.55% ↓
2002年 110,000
-12% ↓
2001年 125,000 -
2000年 125,000
-0.79% ↓
1999年 126,000
9.57% ↑
1998年 115,000
-4.17% ↓
1997年 120,000
33.33% ↑
1996年 90,000
-19.64% ↓
1995年 112,000
7.11% ↑
1994年 104,570
2.06% ↑
1993年 102,459
-5.83% ↓
1992年 108,805
9.67% ↑
1991年 99,214
-1.12% ↓
1990年 100,335
-2.7% ↓
1989年 103,120
13.32% ↑
1988年 90,995
41.74% ↑
1987年 64,200
25.81% ↑
1986年 51,030
-6.26% ↓
1985年 54,440
8.95% ↑
1984年 49,970
5.42% ↑
1983年 47,400
3.04% ↑
1982年 46,000
-29.23% ↓
1981年 65,000
25% ↑
1980年 52,000
4% ↑
1979年 50,000 -
1978年 50,000
6.38% ↑
1977年 47,000
15.76% ↑
1976年 40,600
-6.24% ↓
1975年 43,300
-13.4% ↓
1974年 50,000 -
1973年 50,000 -
1972年 50,000
2.04% ↑
1971年 49,000
5.83% ↑
1970年 46,300
2.89% ↑
1969年 45,000
-4.26% ↓
1968年 47,000
10.07% ↑
1967年 42,700
6.75% ↑
1966年 40,000
3.47% ↑
1965年 38,660
16.59% ↑
1964年 33,160
7.66% ↑
1963年 30,800
-16.53% ↓
1962年 36,900
-18.36% ↓
1961年 45,200 -

モロッコは、地中海性気候や乾燥地帯に囲まれた地理的特徴を活かし、羊の飼育と羊肉生産を農業の一部門として古くから行ってきました。1961年の45,200トンという羊肉生産量は当時の国内需要を反映したものでしたが、その後、技術の進展や政策の影響により増加基調へと進みました。特に1980年代後半以降は顕著な伸びを示し、1989年には初めて10万トンを超える生産量に到達しました。近年に至るまで継続的な成長が見られ、2020年には最高値の179,000トンになりました。一方で、2022年以降の減少は、新型コロナウイルスのパンデミック、干ばつ、飼料価格の高騰といった複合的な要因に起因している可能性があります。

羊肉生産量の推移は単なる農業統計を超え、モロッコの食文化や地政学的な背景を反映しています。羊肉はラマダンや宗教的な祭事で重要な食材であり、この需要が生産量の底堅さを支えています。しかし、気候変動による干ばつは牧草地の品質に悪影響を与え、羊肉生産に深刻な影響を及ぼしています。モロッコは国際機関とも協力し、持続可能な農業技術の導入や水資源管理の改善に力を入れ始めていますが、十分な成果を上げるには至っていません。

他国との比較をすると、羊肉生産量の世界トップである中国は年間約240万トンを超える生産を誇り、モロッコの生産量を大きく上回っています。一方で、日本のように羊肉消費が少ない国では生産量自体が非常に限定的であり、モロッコの羊肉生産体制は地域の食文化との結びつきが非常に強いことが分かります。このような特性は同地域のアルジェリアやチュニジアと共通しており、地域間協力の可能性を示唆しています。

課題としては、まず第一に気候変動への対応が挙げられます。特にモロッコは乾燥地帯が多い国のため、水ストレスが高く、これが農業全般に影響を与えています。また、羊肉の市場価格の変動も課題です。飼料コストが高騰している現在の状況において、継続的な生産が経済的に困難になる可能性があります。

これらの課題を克服するためには、まず効率的な灌漑技術の導入が急務とされます。そのほか、国際的な支援を受けながら持続可能な牧草地管理を進める必要があります。例えば、オーストラリアやニュージーランドといった羊肉生産の先進国からノウハウを学ぶことも有効です。また、輸出市場の開拓にも目を向けるべきです。羊肉が幅広い宗教圏で受け入れられやすい特性を活かして、中東やヨーロッパへの安定した輸出ルート開発が重要になります。

結論として、モロッコの羊肉生産量は歴史的に増加しているものの、近年の減少は深刻な課題を浮き彫りにしています。特に気候変動のリスク軽減と持続的な農業への取り組みが不可欠です。こうした問題に対応するため、政府や国際機関が連携して包括的なアプローチを進めることが求められます。モロッコが国内需要を確保しつつ、輸出市場への進出を成功させることで、地域全体の経済的安定にも寄与する可能性があります。