Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が2024年7月に更新したデータによると、モロッコのイチゴ生産量は、1969年から2022年にかけて大きな変動を見せています。初期の1969年は50トンと極めて少量でしたが、その後の数十年間で大幅に増加し、1999年以降に年間生産量で10万トンを超えるレベルに到達しました。しかし近年はピーク時の355,020トン(2009年)から減少傾向にあり、2022年の生産量は132,297トンと縮小しています。このデータはモロッコの農業政策や環境条件、国際市場との連動の影響をよく反映しており、将来への課題と対策を考える上で重要な指標となります。
モロッコのイチゴ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 137,275 |
3.76% ↑
|
2022年 | 132,297 |
-6.22% ↓
|
2021年 | 141,075 |
-15.5% ↓
|
2020年 | 166,955 |
-0.52% ↓
|
2019年 | 167,827 |
17% ↑
|
2018年 | 143,440 |
-11.34% ↓
|
2017年 | 161,793 |
18.22% ↑
|
2016年 | 136,856 |
-3.01% ↓
|
2015年 | 141,100 |
2.7% ↑
|
2014年 | 137,388 |
-5.4% ↓
|
2013年 | 145,233 |
3.97% ↑
|
2012年 | 139,683 |
26.16% ↑
|
2011年 | 110,716 |
-21.25% ↓
|
2010年 | 140,600 |
-60.4% ↓
|
2009年 | 355,020 |
173.09% ↑
|
2008年 | 130,000 |
8.33% ↑
|
2007年 | 120,000 |
7.14% ↑
|
2006年 | 112,000 |
-5.56% ↓
|
2005年 | 118,600 |
11.78% ↑
|
2004年 | 106,100 |
17.24% ↑
|
2003年 | 90,500 |
29.29% ↑
|
2002年 | 70,000 |
-22.22% ↓
|
2001年 | 90,000 |
-14.29% ↓
|
2000年 | 105,000 |
80.41% ↑
|
1999年 | 58,200 |
45.5% ↑
|
1998年 | 40,000 |
33.33% ↑
|
1997年 | 30,000 |
50% ↑
|
1996年 | 20,000 |
100% ↑
|
1995年 | 10,000 |
25% ↑
|
1994年 | 8,000 |
33.33% ↑
|
1993年 | 6,000 |
100% ↑
|
1992年 | 3,000 |
57.89% ↑
|
1991年 | 1,900 |
90% ↑
|
1990年 | 1,000 |
-28.57% ↓
|
1989年 | 1,400 |
40% ↑
|
1988年 | 1,000 |
25% ↑
|
1987年 | 800 |
33.33% ↑
|
1986年 | 600 |
200% ↑
|
1985年 | 200 |
100% ↑
|
1984年 | 100 |
100% ↑
|
1983年 | 50 |
-28.57% ↓
|
1982年 | 70 |
40% ↑
|
1981年 | 50 | - |
1980年 | 50 | - |
1979年 | 50 | - |
1978年 | 50 | - |
1977年 | 50 |
-66.67% ↓
|
1976年 | 150 |
-40% ↓
|
1975年 | 250 |
-50% ↓
|
1974年 | 500 |
42.86% ↑
|
1973年 | 350 |
150% ↑
|
1972年 | 140 |
133.33% ↑
|
1971年 | 60 |
20% ↑
|
1970年 | 50 | - |
1969年 | 50 | - |
モロッコのイチゴ生産量推移のデータを詳しく見ると、1969年から1979年にかけての初期段階では年間50トン程度の非常に小規模な生産でした。しかし、1993年以降、急速な技術革新や農業政策の転換により、持続的に生産量が増加しました。1999年の58,200トンから、2000年には105,000トンと急拡大し、2009年には最高潮となる355,020トンを記録しました。この時期は、特に国内外市場での需要が高まり、輸出志向型の農業戦略が奏功した結果と考えられます。
ところが、2009年以降のデータを観察すると、イチゴの生産量は一時的に減少に転じています。特に2011年の110,716トンへの低下は、気候変動や水資源不足が要因となっている可能性があります。モロッコでは、耕地の灌漑に必要な水源が近年減少傾向にあり、雨量の変動が農産物の生産に大きな影響を及ぼしていることが指摘されています。また、輸出市場における競争の激化も、生産量や利益に負の影響を与えたと考えられます。
2017年から2019年にかけては小幅な回復が見られましたが、2020年以降は再び減少し、2022年には132,297トンと、ピーク時の35%以下にまで落ち込んでいます。この背景には、新型コロナウイルスの影響で農業従事者の減少や物流の遅延があったほか、地元・海外市場での需要変化やコストの上昇が関与しているとみられます。
モロッコはイチゴをはじめとする農産品を重要な輸出品目として位置づけていますが、この生産量の変動は、気候条件や農地の管理、輸出市場への競争力など多岐にわたる課題を抱えています。特に2022年のデータは、気候変動や持続可能な農業の必要性を示唆しています。例えば、日本や韓国では、技術革新と農業のデジタル化を通じて収量を効率化し、天候や市場の変動に柔軟に対応する取り組みが進んでいます。これに対し、モロッコでもスマート農業技術や水リソースの最適利用を導入することが喫緊の課題でしょう。
また、地政学的にもモロッコは、EU(特にスペイン、フランスなど)と緊密な農業貿易関係を結んでいますが、この関係は今後市場規制や地政学的リスクに影響される可能性があります。加えて、他国に比べて地元農家の支援体制が弱く、災害対応や経済的安定化策が不十分である点も問題です。これに対して、小規模農家や輸出業者への金融支援拡充や、多様な収益源を確保する施策が必要です。
今後は、国家レベルでの農業政策の再構築が不可欠です。具体的には、再生可能なエネルギーによる水源管理技術の強化や、品種改良による耐性作物の開発を推進すべきです。また、EUやアフリカを含む農業協力体制の拡大を模索し、安定した輸出市場の確保と持続可能な成長を両立する必要があります。このような具体的なステップを踏むことで、モロッコはイチゴを含む農産業の持続可能な発展を実現することができます。