国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データをもとに、モロッコにおけるサツマイモの生産量推移についてまとめると、1960年代から1970年代前半までは生産量が安定的に500~1,000トン程度で推移していました。その後、1980年代から生産量が急激に増加し、1990年には21,759トンに到達しました。ただし、その後は大幅な増減を繰り返し、特に2019年以降、生産量は1万トンを下回る年が増加しています。このデータから、モロッコのサツマイモ生産は長期的な増加傾向が見られるものの、近年は安定性に課題があることが示唆されます。
モロッコのサツマイモ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 11,710 |
2021年 | 9,260 |
2020年 | 7,430 |
2019年 | 9,366 |
2018年 | 18,120 |
2017年 | 15,965 |
2016年 | 16,061 |
2015年 | 17,861 |
2014年 | 16,420 |
2013年 | 26,450 |
2012年 | 25,941 |
2011年 | 17,582 |
2010年 | 10,779 |
2009年 | 11,882 |
2008年 | 10,895 |
2007年 | 8,650 |
2006年 | 10,120 |
2005年 | 7,510 |
2004年 | 11,800 |
2003年 | 9,700 |
2002年 | 6,220 |
2001年 | 6,030 |
2000年 | 12,720 |
1999年 | 7,290 |
1998年 | 15,700 |
1997年 | 15,460 |
1996年 | 9,000 |
1995年 | 8,630 |
1994年 | 12,373 |
1993年 | 15,000 |
1992年 | 12,400 |
1991年 | 20,280 |
1990年 | 21,759 |
1989年 | 11,007 |
1988年 | 16,200 |
1987年 | 10,000 |
1986年 | 5,000 |
1985年 | 3,000 |
1984年 | 3,000 |
1983年 | 3,000 |
1982年 | 3,000 |
1981年 | 3,000 |
1980年 | 1,000 |
1979年 | 1,000 |
1978年 | 1,000 |
1977年 | 1,000 |
1976年 | 1,000 |
1975年 | 1,000 |
1974年 | 1,000 |
1973年 | 1,000 |
1972年 | 1,000 |
1971年 | 1,000 |
1970年 | 500 |
1969年 | 500 |
1968年 | 500 |
1967年 | 500 |
1966年 | 500 |
1965年 | 500 |
1964年 | 500 |
1963年 | 500 |
1962年 | 500 |
1961年 | 500 |
モロッコのサツマイモ生産は、1960年代から徐々に成長を遂げた農産業の一例といえます。1961年から1970年代初期までは、年500トンという極めて安定した水準で推移しました。しかし、1971年に生産量が一気に倍増して1,000トンに上昇したこと、このタイミングがモロッコの農業政策転換や技術革新の影響を示唆すると考えられます。その後、1980年代初頭にはさらに3,000トン、1986年には5,000トンに達し、1987年以降では急増局面がありました。1990年には生産量がピークの21,759トンに達し、国の農業生産における重要な位置を占めました。
しかしながら、1990年以降は急増期から減少局面に移行しました。その理由には、気象条件、農地の利用効率低下、または国際市場の価格変動といった複合的な要因が推測されます。1995年には8,630トン、さらに2001年には6,030トンまで減少するという低迷期を経験しました。特に2000年代に入ってからは、年間産出量の増減幅が大きくなり、2012年の25,941トンの生産量を頂点として、2019年以降は1万トンを下回る傾向が顕著になっています。
このような不安定性は、国内の気象リスクに加え、地中海地域特有の水資源不足や農業インフラの整備が求められる現状を反映しているといえます。加えて、近年の新型コロナウイルス感染症の影響も無視できません。パンデミックは世界的な生産輸送網を混乱させ、モロッコにおいても輸入資材の不足や労働力の減少による生産低迷をもたらした可能性があります。
一方で、他国と比較すると、例えば同じ北アフリカ地域でもサツマイモの生産においてやや安定しているエジプトと比較して、モロッコは市場競争力が限定的です。その背景には、気候変動による影響や政府支援の差異がある可能性があります。また、アジアに目を向けると、中国や日本といった国々では、モロッコの規模をはるかに超える効率的な生産システムが構築されています。
このような課題を克服するためには、具体的な対策として持続可能な農業への転換が求められます。例えば、サツマイモは干ばつに強い作物であり、水資源に限界のある環境でも適応可能です。その特性を最大限活用するために、適正な灌漑技術の導入や耐乾燥性に優れた品種の導入、または科学的施肥技術の推進が推奨されます。さらに、地域住民や生産者の教育を通じて農業スキルを向上させることも重要です。
また、政策支援として、国内市場の需要拡大に向けたマーケティングキャンペーンや加工産業の育成にも注力すべきです。例えば、サツマイモを原料とするスナックや菓子類の生産を推進し、国内消費を拡大すると同時に輸出の可能性も広げるべきでしょう。それに加え、地域間協力の枠組みを構築し、北アフリカ諸国間での技術協力を進めることで、生産の効率化や新市場の開拓が期待されます。
結論として、モロッコのサツマイモ生産が見せる長期的な成長の可能性を最大限活用するには、近年の不安定性を克服し、持続可能で効率的な生産体制を構築する必要があります。地政学的リスクや気候条件に対応しつつ、国際市場と国内需要を合わせた戦略的な対応が鍵となるでしょう。国際機関やモロッコ自身の政策的な取組みが、この課題解決に向けた重要な要素となることは間違いありません。