「D.C.」の意味とは?
「D.C.」は District of Columbia(コロンビア特別区) の略です。これは単なる地名ではなく、アメリカ合衆国における特別な行政区域を指します。日本語では「コロンビア特別区」と訳され、アメリカ50州のどこにも属さない「連邦直轄地(Federal District)」なのです。
なぜ「特別区」なのか?
アメリカ建国当初、首都をどこに置くかで北部と南部の州が激しく対立しました。妥協案として選ばれたのが、南北のちょうど中間にある ポトマック川 沿いのエリア。ここに連邦が直轄する新しい首都を作ることになったのです。
これにより、どの州にも属さず、中立性を保つ目的で「特別区(District)」として制定されました。これは、連邦政府の権力が特定の州に偏ることを避けるための設計でした。
「コロンビア」の意味と由来
「Columbia(コロンビア)」という名は、アメリカの詩的な呼称「Columbia」から取られています。これは新大陸を“発見”したとされる クリストファー・コロンブス(Christopher Columbus) にちなみ、18世紀末にはアメリカ合衆国を象徴する女性像(コロンビア女神)としても使われていました。
つまり「District of Columbia」は、「アメリカの象徴としての土地」という意味合いが含まれているのです。
ワシントンという名前の由来
1791年、この地が首都として選ばれ、初代大統領 ジョージ・ワシントン 自らが場所を指定しました。数年後の1796年、この都市には「ワシントン」という名前が正式に付けられました。つまり、「ワシントンD.C.」は 大統領ジョージ・ワシントン と アメリカそのものを象徴するコロンビア を組み合わせた名前なのです。
ワシントンD.C.の政治的立場と論争
選挙権の制限
ワシントンD.C.の住民には、長らく「連邦議会に代表を持たない」という問題がありました。現在も 上院には議席がなく、下院には投票権のない代表(Delegate) がいるのみ。これは「No taxation without representation(代表なくして課税なし)」という独立戦争時のスローガンに矛盾するとして、問題視されています。
州昇格運動
このため、ワシントンD.C.を51番目の州としようという運動が近年活発化。州名は「Washington, Douglass Commonwealth」(ドゥグラス・コモンウェルス、奴隷解放運動家フレデリック・ダグラスにちなむ)とされる案もあります。しかし、政治的対立により実現には至っていません。
「Washington」と「Washington State」の違い
混乱しがちですが、「Washington D.C.」と「ワシントン州(Washington State)」は全くの別物です。
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Washington D.C.:アメリカ合衆国の首都。東海岸に位置する。
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Washington州:アメリカ西海岸、カナダ国境近くの州で、州都はオリンピア、最大都市はシアトル。
どちらもジョージ・ワシントンにちなむ名称ですが、地理的にも機能的にも全く異なる存在です。
小ネタ:ワシントンD.C.の都市設計は誰が?
D.C.の都市設計は、フランス出身の建築家 ピエール・ランファン(Pierre Charles L’Enfant) が手がけました。広場や放射状の大通りが交差する構造は、パリの都市計画の影響を色濃く受けています。これが、ワシントンD.C.を“美しい首都”として際立たせる所以でもあります。
まとめ:ワシントンD.C.は「アメリカそのもの」を象徴する地
「D.C.=District of Columbia」は単なる略語ではなく、アメリカ合衆国の理念、歴史、妥協、象徴を凝縮した存在です。名前の由来を知れば知るほど、この首都が持つ特別な意味と役割が見えてきます。誰かに「D.C.って何?」と聞かれたら、ぜひこの記事を思い出してください。
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