国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新の2024年データに基づくモロッコのトマト生産量推移を分析すると、生産は1961年の200,000トンから2022年の1,388,542トンへと大幅に増加しています。この成長は、農業技術の発展、灌漑設備の拡充、輸出向け需要の拡大によって支えられていますが、一方で、気候変動や水資源の制約といった課題も浮き彫りになっています。
モロッコのトマト生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 1,388,542 |
2021年 | 1,311,101 |
2020年 | 1,398,831 |
2019年 | 1,347,085 |
2018年 | 1,409,437 |
2017年 | 1,293,761 |
2016年 | 1,231,248 |
2015年 | 1,412,380 |
2014年 | 1,230,953 |
2013年 | 1,293,320 |
2012年 | 1,219,071 |
2011年 | 1,217,905 |
2010年 | 1,433,937 |
2009年 | 1,230,470 |
2008年 | 1,312,310 |
2007年 | 1,237,030 |
2006年 | 1,245,000 |
2005年 | 1,205,510 |
2004年 | 1,213,530 |
2003年 | 1,036,840 |
2002年 | 991,020 |
2001年 | 881,000 |
2000年 | 1,008,900 |
1999年 | 1,116,000 |
1998年 | 1,242,400 |
1997年 | 804,780 |
1996年 | 882,630 |
1995年 | 623,580 |
1994年 | 850,390 |
1993年 | 894,040 |
1992年 | 893,775 |
1991年 | 803,184 |
1990年 | 871,836 |
1989年 | 831,000 |
1988年 | 727,000 |
1987年 | 694,000 |
1986年 | 470,000 |
1985年 | 390,000 |
1984年 | 368,640 |
1983年 | 366,280 |
1982年 | 380,000 |
1981年 | 370,000 |
1980年 | 400,000 |
1979年 | 413,000 |
1978年 | 465,000 |
1977年 | 554,000 |
1976年 | 450,000 |
1975年 | 541,500 |
1974年 | 370,100 |
1973年 | 270,000 |
1972年 | 190,000 |
1971年 | 225,000 |
1970年 | 250,000 |
1969年 | 264,000 |
1968年 | 245,000 |
1967年 | 277,000 |
1966年 | 302,000 |
1965年 | 325,000 |
1964年 | 253,000 |
1963年 | 175,455 |
1962年 | 210,800 |
1961年 | 200,000 |
モロッコのトマト生産は、1961年から長期的な成長を遂げています。特に1970年代後半から1980年代にかけての生産量の急伸は顕著で、1975年の541,500トンから1989年には831,000トンに増えています。この時期には、灌漑設備の整備や育種技術の進展が生産効率を向上させたことが考えられます。また、1990年代から2000年代初頭にかけては1,200,000トン規模の安定的な生産が確認され、さらに2010年以降、約1,400,000トン前後を記録しています。
こうした成長を支える背景には、国内消費だけでなく輸出市場の需要拡大があります。特に、ヨーロッパ市場へのトマト輸出はモロッコの農業経済において重要な収入源となっています。しかし、国際的な競争激化や輸送コスト増加が利益率に影響を与える可能性も無視できません。
一方、課題として挙げられるのは、水資源管理の問題です。モロッコは乾燥した気候を持つため、トマト生産に必要な灌漑用水の確保が重要ですが、近年の干ばつや地下水の枯渇が生産に影響を与えており、持続可能な農業の実現が急務といえます。また、気候変動は降水パターンの変化や気温上昇を引き起こし、農作物の生産性に長期的な影響を与える可能性があります。
さらに、モロッコは地政学的なリスクにも直面しています。輸出を基盤とする経済において、地域的な政情不安や貿易政策の変化がトマト市場に与える影響を見過ごすことはできません。例えば、ヨーロッパ諸国との関係が悪化した場合、モロッコトマトの輸出は大きな打撃を受ける可能性があります。
これらの課題に対し、いくつかの具体的な対策が提案されます。例えば、水資源管理の効率化や、気候変動に対応できる耐性品種の導入が挙げられます。また、地元農民を支援するための政策として、教育や技術普及を目的とした農業プログラムの強化が必要です。さらに、輸出依存のリスクを軽減するために、国内市場の開拓や多国間協力による新市場の開発が効果的です。
以上の分析から、モロッコのトマト生産がこれまで着実に成長してきた一方で、気候変動や水資源問題、地政学的リスクなどの新たな課題も浮上しています。今後、政府や国際機関がこれらの課題に対処し、持続可能な農業を目指す取り組みを進めることが重要です。特に、農業の近代化と国際協力の促進が、モロッコのトマト生産の競争力を高める鍵となるでしょう。