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モロッコの牛飼養数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、モロッコの牛飼養数は1961年以降、特有の増減を繰り返してきましたが、長期的には漸増傾向を示しています。1961年に2,801,000頭であった飼養数は、2022年には3,100,909頭となり、約11%の増加が見られます。ただし、気候変動や干ばつ、政策の影響により特定の年に大きな減少が観察されるなど、全体として安定性を欠く推移が特徴的です。

年度 飼養数(頭)
2022年 3,100,909
2021年 3,178,876
2020年 3,166,900
2019年 3,328,000
2018年 3,441,000
2017年 3,364,000
2016年 3,300,000
2015年 3,291,050
2014年 3,238,688
2013年 3,172,984
2012年 3,029,180
2011年 3,037,930
2010年 2,895,800
2009年 2,788,100
2008年 2,814,000
2007年 2,781,100
2006年 2,755,100
2005年 2,721,700
2004年 2,728,800
2003年 2,688,600
2002年 2,669,600
2001年 2,647,100
2000年 2,674,600
1999年 2,565,500
1998年 2,568,600
1997年 2,547,200
1996年 2,408,400
1995年 2,370,800
1994年 2,343,200
1993年 2,348,258
1992年 3,004,830
1991年 3,182,920
1990年 3,346,258
1989年 3,324,240
1988年 3,136,926
1987年 3,177,540
1986年 2,851,339
1985年 2,501,000
1984年 2,362,880
1983年 2,430,900
1982年 2,536,530
1981年 3,247,870
1980年 3,376,200
1979年 3,460,900
1978年 3,600,000
1977年 3,400,000
1976年 3,620,000
1975年 3,620,000
1974年 3,400,000
1973年 3,600,000
1972年 3,500,000
1971年 3,670,000
1970年 3,600,000
1969年 3,580,000
1968年 3,315,000
1967年 3,377,000
1966年 3,277,000
1965年 3,044,000
1964年 2,871,000
1963年 2,686,000
1962年 2,564,000
1961年 2,801,000

モロッコの牛飼養数は、過去60年間にわたり、社会経済的状況や自然環境の変化を反映して上下動を伴う推移を見せてきました。1960年代から1970年代前半にかけては、年間成長率が安定しており、1961年の2,801,000頭から1970年の3,600,000頭へと増加しました。この時期は農業の拡大期であり、国内での乳製品や食肉需要の拡大がこの成長を支えました。しかし、1970年代後半から1980年代半ばにかけて、干ばつや不安定な経済情勢が影響を及ぼし、1982年にかけて飼養数が2,536,530頭まで大幅に減少しました。

さらに、1980年代後半から1990年代前半にかけては一時的に回復したものの、1993年には再び大きな減少が見られ、飼養数は2,348,258頭まで落ち込みました。この背景には、農業政策の不十分さや畜産業への気候変動の悪影響が考えられます。また、この時期、モロッコ国内の経済構造が工業化に傾いたことも、副業として行われていた牛の飼養が減少する要因の一つと考えられます。

2000年代以降は再び回復傾向が見られました。近年の3,000,000頭を超える高水準な飼養数は、政府による農業支援策や技術革新、品種改良などの努力が寄与しています。しかし、2019年以降は減少に転じ、2022年には3,100,909頭に達しました。特に新型コロナウイルス感染症の影響により、畜産業者の経済的文脈が悪化したことや、気候変動により干ばつが頻発し牧草地が減少したことなどが原因に挙げられます。

地域的に見ると、モロッコは乾燥した地中海性気候の影響を受けているため、水資源や飼料の確保が長年にわたり課題となってきました。これに対し、フランスやドイツなどヨーロッパ諸国では、畜産業において効率的な管理技術や大規模な農作物供給網を構築しており、安定的な牛飼養数を維持しています。また、中国やインドなどの牛飼養数が数億頭に達する規模と比較すると、モロッコの畜産業は国内需要の充足に留まっている点が大きな違いです。

現在の主な課題は、気候変動の影響を受けやすい畜産業の脆弱性にあります。急速な干ばつや降雨量の減少が牧草地への依存度を高めており、さらなる灌漑システムの普及や飼料輸入政策の強化が必要です。モロッコの牛飼養数の減少が長期的に国内食料安定供給へ影響を与える前に、持続可能な農畜産業の運用を目指すべきです。また、乳製品や食肉加工による付加価値創出を促進することで、収益増加を図るべきでしょう。

国際協力の枠組みの拡大も重要です。モロッコはEUやアフリカ諸国との農業技術交流を通じて、畜産業の効率性を向上させる可能性があります。また、家畜用の新しい耐干ばつ品種の導入や、政府による所得補償プログラムの実施も検討に値します。これにより、持続可能性を確保しながら、次世代へと向けた安定的な牛飼養基盤を構築することが可能となるでしょう。

結論として、モロッコの牛飼養数の推移は、環境や政策の影響を受けながらも全体の需要を反映した長期的な増加傾向を示しています。しかし、気候変動への適応や政策支援の強化なしには、畜産業のさらなる発展は難しいと考えられます。今後は持続可能な技術革新と地域間の協力体制を強化することで、畜産業と食料供給の安定化を実現することが求められます。