Skip to main content

モロッコのナシ生産量推移(1961年~2023年)

モロッコにおけるナシの生産量は1961年から2023年までの間で大きく変動を記録しており、1960年代の年平均約5,000トンから直近数年間では40,000トン前後の安定した生産量が確認されています。特に1980年代から1990年代にかけて顕著な増加が見られ、1993年には最高記録の56,200トンに達しましたが、それ以降は増減を繰り返す傾向が続いています。最近では2021年と2022年に比較的高い水準を記録しましたが、2023年には再び減少し34,952トンにとどまっています。この変動は、気候条件や農業政策、地域的課題と深く関連しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 34,952
-23.68% ↓
2022年 45,795
-1.78% ↓
2021年 46,626
40.94% ↑
2020年 33,082
-2.76% ↓
2019年 34,020
-3.36% ↓
2018年 35,202
3.46% ↑
2017年 34,025
22.59% ↑
2016年 27,754
-39.64% ↓
2015年 45,981
16.15% ↑
2014年 39,587
-9.73% ↓
2013年 43,852
46.65% ↑
2012年 29,902
-17.35% ↓
2011年 36,177
-11.9% ↓
2010年 41,062
11.45% ↑
2009年 36,843
-3.98% ↓
2008年 38,370
-12.58% ↓
2007年 43,894
24.7% ↑
2006年 35,200
-15.18% ↓
2005年 41,500
-7.76% ↓
2004年 44,990
16.86% ↑
2003年 38,500
-16.49% ↓
2002年 46,100
27.35% ↑
2001年 36,200
21.44% ↑
2000年 29,810
-40.68% ↓
1999年 50,254
61.59% ↑
1998年 31,100
-21.66% ↓
1997年 39,700
31.46% ↑
1996年 30,200
17.05% ↑
1995年 25,800
-11.03% ↓
1994年 29,000
-48.4% ↓
1993年 56,200
81.29% ↑
1992年 31,000
0.32% ↑
1991年 30,900
-15.11% ↓
1990年 36,400
-9% ↓
1989年 40,000
11.11% ↑
1988年 36,000
-5.26% ↓
1987年 38,000
15.15% ↑
1986年 33,000
22.22% ↑
1985年 27,000
8% ↑
1984年 25,000
8.7% ↑
1983年 23,000
15% ↑
1982年 20,000
25% ↑
1981年 16,000
23.08% ↑
1980年 13,000
3.17% ↑
1979年 12,600
1.61% ↑
1978年 12,400
3.33% ↑
1977年 12,000
9.09% ↑
1976年 11,000
22.22% ↑
1975年 9,000
-10% ↓
1974年 10,000
-9.09% ↓
1973年 11,000
22.22% ↑
1972年 9,000
28.57% ↑
1971年 7,000 -
1970年 7,000 -
1969年 7,000 -
1968年 7,000
16.67% ↑
1967年 6,000
71.43% ↑
1966年 3,500
-61.11% ↓
1965年 9,000
80% ↑
1964年 5,000
150% ↑
1963年 2,000 -
1962年 2,000 -
1961年 2,000 -

モロッコにおけるナシ生産は、当初1960年代には低い水準で推移していましたが、1970年代以降、農業手法の改善や地域的な需要増加に伴い、増加の兆しを見せました。特に1986年から1993年にかけては、ナシの栽培技術の向上や灌漑施設の整備が進んだことで急成長を見せ、1993年には過去最高の56,200トンを記録しています。しかし、この記録的な生産量は持続することなく、その後の数年間で大幅に低下しました。この変化は、干ばつや市場の競争激化、規模の大小による農家間での生産能力の格差が主な要因として挙げられます。

2000年代に入ると生産量は43,000トンから50,000トンの間で安定する傾向が見られますが、依然として自然災害や気候変動による試練は続いています。たとえば2016年には生産量が27,754トンと急減しましたが、これは干ばつや異常気象と関連しています。同様に2023年にも減少傾向が見られ、これは近年の世界的な気候変動リスクの影響が要因として考えられています。

地域背景を考えると、モロッコは地中海性気候で肥沃な農業地帯に位置していますが、降水量の不均衡や温暖化の影響を受けやすく、農業体制の脆弱性が課題となっています。また、地政学的な側面も無視できません。EU諸国やアフリカ大陸内の他の果物輸出競合国との市場競争で苦戦している状況にあり、特にヨーロッパの農業保護政策や他国が生産量を急速に伸ばしている点がモロッコのナシ農家の収益性に影響を与えています。

このような背景を考慮すると、モロッコのナシ産業が将来に向けて持続可能な発展を遂げるためにはいくつかの対策が必要です。まず、灌漑技術のさらなる拡充と効率化が求められます。持続可能な水管理を行い、干ばつリスクを軽減することにより、安定した生産基盤を確保することができます。また、気候変動に対する適応能力を高めるため、品種の多様化や耐性の高い品種の導入も有効な手段となるでしょう。さらに、農業政策において中小規模農家への支援を強化すること、例えば補助金や技術支援を通じて生産性を向上させる取り組みも重要です。

国際的な視点では、モロッコは貿易においてさらなる市場拡大を目指すことが鍵となります。EUなどの従来の主要輸出先に加え、新興市場であるアジア諸国や中東地域との貿易関係を深化させるとともに、付加価値の高い加工品の輸出にも注力すべきです。これには、品質管理の徹底やブランドイメージの向上が欠かせません。

また、防災・気候関連リスクの軽減という視点も不可欠です。国際的な気候政策に基づく資金援助や地域協力の枠組みを活用し、気候変動に柔軟に対応できる農業インフラを構築する必要があります。さらに、地域間の紛争や政治的な不安定要素が長期的な輸出戦略に影響を与える可能性もあるため、安定した農業運営のためには国内外の政治的安定も重要な課題といえます。

結論として、モロッコのナシ生産量は、2021年や2022年のようないくつかの好調な年もあるものの、長期的には気候変動や地政学的リスクに真摯に対応する必要があることが示されています。この課題に向き合い、具体的な施策を講じることができれば、モロッコのナシ産業はさらなる成長を遂げ、地域経済の発展に寄与する可能性が十分にあります。モロッコ国内だけでなく、国際的な協調のもとで持続可能な農業施策を進めることが今後の成否を分けるでしょう。