Skip to main content

モロッコのさくらんぼ生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が公開した最新データによると、モロッコのさくらんぼ生産量は、1961年から2023年の間で大きな増減を繰り返しながらも長期的には成長を遂げています。特に、1960年代から1990年代にかけて急増する傾向が見られ、その後は安定しつつも気候条件や農業政策の影響で年ごとの変動が顕著です。2023年の生産量は14,145トンで、2019年に記録した20,349トンに比べると減少しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 14,145
-11.12% ↓
2022年 15,915
15.29% ↑
2021年 13,804
28.2% ↑
2020年 10,767
-47.09% ↓
2019年 20,349
48.92% ↑
2018年 13,665
1.93% ↑
2017年 13,406
65.65% ↑
2016年 8,093
-56.79% ↓
2015年 18,729
20.65% ↑
2014年 15,524
2.13% ↑
2013年 15,199
111.22% ↑
2012年 7,196
-12.35% ↓
2011年 8,210
1.97% ↑
2010年 8,051
7.33% ↑
2009年 7,501
12.56% ↑
2008年 6,664
9.43% ↑
2007年 6,090
10.13% ↑
2006年 5,530
-43.57% ↓
2005年 9,800
80.15% ↑
2004年 5,440
47.03% ↑
2003年 3,700
48% ↑
2002年 2,500
-44.44% ↓
2001年 4,500
-29.69% ↓
2000年 6,400
-10.69% ↓
1999年 7,166
-0.47% ↓
1998年 7,200
125% ↑
1997年 3,200
-20% ↓
1996年 4,000
185.71% ↑
1995年 1,400
-30% ↓
1994年 2,000
-81.82% ↓
1993年 11,000
57.14% ↑
1992年 7,000
159.26% ↑
1991年 2,700
17.39% ↑
1990年 2,300
-11.54% ↓
1989年 2,600
85.71% ↑
1988年 1,400
27.27% ↑
1987年 1,100
10% ↑
1986年 1,000
11.11% ↑
1985年 900
28.57% ↑
1984年 700
-12.5% ↓
1983年 800
33.33% ↑
1982年 600
50% ↑
1981年 400
5.26% ↑
1980年 380
5.56% ↑
1979年 360
5.88% ↑
1978年 340
9.68% ↑
1977年 310
3.33% ↑
1976年 300
20% ↑
1975年 250
8.7% ↑
1974年 230
15% ↑
1973年 200
11.11% ↑
1972年 180
12.5% ↑
1971年 160
14.29% ↑
1970年 140
16.67% ↑
1969年 120
20% ↑
1968年 100
25% ↑
1967年 80
33.33% ↑
1966年 60
50% ↑
1965年 40 -
1964年 40
33.33% ↑
1963年 30 -
1962年 30
50% ↑
1961年 20 -

モロッコのさくらんぼ生産量の推移は、以下のような特徴的な変化を見せています。1961年の20トンから1989年の2,600トンに至るまで、徐々に増加基調が続きました。この成長の背景には、農地の拡大や農業技術の向上、地域的な経済発展などが挙げられます。その後、1992年には急激に7,000トンへと増加し、翌1993年には11,000トンに達する飛躍が見られましたが、1994年からは再び大幅な減少が記録され、その年の生産量は2,000トンにとどまりました。この現象は、天候不順やインフラ整備不足、輸出市場の停滞など、さまざまな要因が絡み合った結果と考えられます。

1995年以降、断続的な変動が見られながらも、21世紀に入ると生産基盤が次第に整い、2000年代後半から2010年代にかけて安定的な成長が観測されています。特に2013年以降、15,000トンを超える年が増加し、2015年にはさらに18,729トンを記録しました。しかし、2020年には新型コロナの影響に伴う物流の制限や労働力不足が懸念され、生産量が10,767トンまで減少しました。これに続く2022年には若干回復し、15,915トンとなっていますが、2023年時点では14,145トンに落ち着きました。

モロッコのさくらんぼ生産がこのように変動を繰り返す要因の一つは、地中海性気候に起因する自然条件の影響が大きいといえます。極端な気候変動や干ばつは、果樹の生育に直接的な影響を及ぼすため、生産量の不安定化を引き起こします。また、生産基盤の整備や農業経営の近代化が進む一方で、一部においては依然として伝統的な方法に頼ることが多く、効率性や競争力の面で課題を残しています。

日本やアメリカ、フランスといった他国のさくらんぼ生産と比較すると、モロッコはやや不安定な供給能力を有します。それらの国々は先進的な農業技術を活用し、生産の計画性や市場供給の一貫性を保てる点で優位に立っています。たとえば、アメリカは生産量の増大とともに輸出に特化した戦略を行い、モロッコのような地域とは異なる安定基盤を構築しています。

未来への課題としては、気候変動への対策が急務となります。具体的には、灌漑技術の導入や干ばつ耐性のある品種改良を試みることが効果的です。また、農業従事者への教育プログラムを充実させ、効率的な栽培技術を共有することも重要です。さらに、地元市場の活性化と輸出市場の多様化を進めることにより、収入源の安定性を向上させる必要があります。

地政学的な背景として、モロッコはヨーロッパ諸国と近い地理的利点を持っています。しかしその反面、地中海地域の不安定な気候パターンや国際市場の競争激化などが将来的なリスク要因となります。これに加え、気候変動が進む中では、生産インフラの脆弱な地域でさらに厳しい状況に直面する可能性があります。

結論として、モロッコのさくらんぼ産業は、多くの可能性を秘めながらも、不安定な自然条件や地域的な課題への対応が必要です。国際社会や地域間連携の枠組みを活用し、持続可能な農業プラクティスを導入することが、安定的な生産と競争力ある産業形成の鍵となるでしょう。