モロッコのアボカド生産量推移（1961年～2023年）

国際連合食糧農業機関（FAO）が発表した最新データによると、モロッコのアボカド生産量は、1961年の1,000トンから2023年には118,666トンまで大幅に増加しました。この増加傾向は特に2000年以降顕著となっており、近年では世界的な需要の拡大を背景に引き続き大きく伸びています。一方で、この動向は気候変動や水資源問題などの新たな課題も浮き彫りにしています。

モロッコのアボカド生産量推移を振り返ると、1961年から1970年代半ばまでは安定的に年間1,000トンの生産が維持されていました。この時期、アボカドは国内需要を満たすのみの小規模農業として扱われており、輸出産業としての発展は見られませんでした。しかし、1980年代以降、生産量が徐々に増加し始め、1990年代には産業としての基盤が整い始めました。この頃、アボカドの栽培はモロッコの農業政策において重要視され、生産技術の改善と輸出市場の拡大が進みました。

特に2000年以降、世界的な「スーパーフード」人気によりアボカドの需要が急速に増加する中、モロッコもその波に乗って生産を拡大しています。2020年には69,940トン、2023年には118,666トンとわずか3年でほぼ倍増しており、この成長率は特筆すべきものです。しかし、一貫して増加していったわけではなく、2013年や2016年から2018年のように一時的な減少も確認されています。この原因の一つには、気候変動による天候不良や水資源不足が挙げられます。

モロッコのアボカド生産の成功には、地中海性気候を活かした適切な栽培条件と輸送網が重要な役割を果たしています。同国は現在、ヨーロッパ市場を中心に輸出を進めており、特にドイツ、フランス、スペインなどに対して安定的な供給を行っています。これにより、モロッコは従来の農業輸出品であるオリーブや果物に加えて、アボカドが外国為替収入の新たな柱として成長しています。一方、他国との比較では、例えばメキシコが2023年に200万トン以上を生産していることを考慮すると、依然としてモロッコのシェアは小規模であることも分かります。

地域課題としては、モロッコ国内における水資源不足が最大の懸念事項です。近隣のサヘル地域と同様、気候変動の影響で降水量が減少しており、大規模灌漑への依存が深まっています。アボカドの栽培には特に大量の水が必要とされるため、無計画な拡大は地域社会や他の農作物生産への負の影響を及ぼす可能性があります。これに対処するため、モロッコ政府と農業関係者は、水の再利用技術や乾燥地農業技術の導入、既存水源の保全を含む持続可能な灌漑計画策定に取り組む必要があります。

また、地政学的には、中東や北アフリカ地域の不安定な安全保障状況が農産物の貿易にも影響するリスクがあります。特に、2024年現在、モロッコとアルジェリアの関係悪化が物流網や市場動向に与える影響も懸念されています。このような情勢を背景に、ヨーロッパとの貿易経路を維持・強化しつつ、サハラ以南のアフリカ市場への新たな進出を図ることも戦略として重要となっています。

今後の具体的な課題解決策としては、持続可能な農業技術の開発と普及を支援する国際協力の強化、適切な土地利用の推進、水ストレスに対する革新的な対策の実施が挙げられます。また、国内水資源管理の効率化を進める政策的アプローチも求められます。さらに、ヨーロッパ依存からの脱却を目指し、多角的な輸出先を確保するためアジア市場へのアプローチも重要となるでしょう。

結論として、モロッコのアボカド生産は過去数十年で飛躍的な成長を遂げ、地域経済にポジティブな影響を与えています。ただし、この成長は気候変動や地域の地政学的リスク、天然資源への圧力といった課題とも表裏一体の関係にあります。これらを踏まえ、持続可能な発展を実現するためには、環境保全を重視した農業政策や国際的な協力の枠組みの構築が極めて重要であると考えられます。