国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、2023年、モロッコのカリフラワー・ブロッコリー生産量は64,385トンで、前年である2022年の64,404トンとほぼ同水準でした。1960年代から1980年代まで生産量は比較的安定していましたが、1980年代中頃以降には急激な増加が見られました。しかし、その後は一貫した増加とはならず、生産量は大幅な変動を繰り返してきました。この推移は、モロッコにおける農業の外的依存度や気候変動、政策の影響を反映しています。
モロッコのカリフラワー・ブロッコリー生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 64,385 |
-0.03% ↓
|
2022年 | 64,404 |
10.58% ↑
|
2021年 | 58,242 |
1.21% ↑
|
2020年 | 57,543 |
13.36% ↑
|
2019年 | 50,762 |
-14.04% ↓
|
2018年 | 59,056 |
12.99% ↑
|
2017年 | 52,265 |
-13.52% ↓
|
2016年 | 60,437 |
32.46% ↑
|
2015年 | 45,625 |
-12.45% ↓
|
2014年 | 52,113 |
8.2% ↑
|
2013年 | 48,162 |
-21.13% ↓
|
2012年 | 61,066 |
-41.6% ↓
|
2011年 | 104,569 |
48.59% ↑
|
2010年 | 70,373 |
37.13% ↑
|
2009年 | 51,320 |
-0.59% ↓
|
2008年 | 51,625 |
-9.43% ↓
|
2007年 | 57,000 |
-21.79% ↓
|
2006年 | 72,880 |
96.07% ↑
|
2005年 | 37,170 |
3.42% ↑
|
2004年 | 35,940 |
75.23% ↑
|
2003年 | 20,510 |
-57.2% ↓
|
2002年 | 47,920 |
94.64% ↑
|
2001年 | 24,620 |
2.16% ↑
|
2000年 | 24,100 |
-39.55% ↓
|
1999年 | 39,870 |
22.3% ↑
|
1998年 | 32,600 |
-31.37% ↓
|
1997年 | 47,500 |
46.15% ↑
|
1996年 | 32,500 |
29.64% ↑
|
1995年 | 25,070 |
60.71% ↑
|
1994年 | 15,600 |
30% ↑
|
1993年 | 12,000 |
-41.86% ↓
|
1992年 | 20,639 |
-59.34% ↓
|
1991年 | 50,765 |
37.17% ↑
|
1990年 | 37,008 |
190.92% ↑
|
1989年 | 12,721 |
27.21% ↑
|
1988年 | 10,000 |
25% ↑
|
1987年 | 8,000 |
60% ↑
|
1986年 | 5,000 |
66.67% ↑
|
1985年 | 3,000 |
200% ↑
|
1984年 | 1,000 |
66.67% ↑
|
1983年 | 600 | - |
1982年 | 600 | - |
1981年 | 600 |
20% ↑
|
1980年 | 500 | - |
1979年 | 500 |
25% ↑
|
1978年 | 400 | - |
1977年 | 400 | - |
1976年 | 400 | - |
1975年 | 400 |
-20% ↓
|
1974年 | 500 |
25% ↑
|
1973年 | 400 | - |
1972年 | 400 | - |
1971年 | 400 | - |
1970年 | 400 |
-20% ↓
|
1969年 | 500 | - |
1968年 | 500 | - |
1967年 | 500 | - |
1966年 | 500 | - |
1965年 | 500 | - |
1964年 | 500 | - |
1963年 | 500 | - |
1962年 | 500 | - |
1961年 | 500 | - |
モロッコのカリフラワー・ブロッコリー生産は、1960年代から1980年代初期にかけて年間500トン前後の極めて低い生産水準を維持していました。この時期、農業分野におけるモロッコの主な関心は輸出可能な果物やオリーブといった産業に置かれており、特にカリフラワーやブロッコリーのような特定の野菜が注目されることはほとんどありませんでした。しかし、1980年代後半から1990年代にかけて状況が一変し、生産量は急速に増加しました。特に1990年には37,008トンを記録し、それ以前の10年間と比較して驚異的な伸びを示しました。この急増は、国内での野菜への需要拡大、栽培技術の改良、および輸出を主眼に置いた政策転換が背景にあると考えられます。
2000年代に入ると、年ごとの生産量に大幅な変動が見られるようになりました。この変動は、モロッコが直面している気候変動の影響を強く示唆しています。気温の上昇や降水量の変動の激しさが作物の生産性に影響を与えている可能性があります。また、この変動は、不十分な灌漑インフラや近年の農業労働者不足とも関連しているかもしれません。例えば2002年には47,920トンという急増が見られる一方、翌2003年にはその半分以下の20,510トンに減少しています。
近年のデータを見ると、2020年代に入ってからは生産量が50,000~65,000トンの間で安定しており、大規模な急増あるいは急減も起こっていません。しかし、以前のような爆発的な生産拡大の傾向が見られなくなったことは、モロッコの農業における成長余地について新たな課題を示唆しています。特に、アフリカ諸国や東アジア諸国(例:中国やインドなど)と比較すると、モロッコのカリフラワー・ブロッコリー生産成長率は遅れを取っています。
さらに、地政学的背景や国際輸出市場についても注目が必要です。モロッコは地中海地域の一角として、ヨーロッパ諸国の市場と良好な貿易関係を築いていますが、近隣諸国との競争が激化しています。特にスペインやトルコなどの国が同じ市場をターゲットにしており、品質や価格の競争力を保つことが重要です。また、気候変動により水資源の利用が限られる状況も重なっています。モロッコ政府がその対策として進めている持続可能な灌漑システムの導入や気候変動に適応した栽培技術の促進が、将来的な生産の安定化にとって重要な役割を果たすと考えられます。
今後の改善策として、以下のような具体的な取り組みが提案されます。一つ目は、現行の農業支援政策を強化し、高付加価値農産物に対する補助金を増加させることです。二つ目として、農地の効率的な利用と同時に気候変動に対応した農法、例えば乾燥耐性品種の導入を加速化させることが挙げられます。また、輸出先の多様化を図るとともに、地域間協力の枠組みを利用し、国際市場で競争力を高めることも欠かせないでしょう。
結論として、モロッコのカリフラワー・ブロッコリー生産は長年の間で大きく成長を遂げましたが、近年の気候変動やインフラの課題による生産量の不安定さが問題となっています。国や国際機関が協力して持続可能な農業技術やインフラ整備に投資を行うことで、生産の安定化は可能であり、将来的にはより幅広い市場への進出が期待できます。