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シリア・アラブ共和国の牛乳生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、シリア・アラブ共和国の牛乳生産量は、1961年の161,000トンから1980年代後半以降急増し、2007年にはピークとなる1,705,860トンに達しました。しかし、2011年以降は国内情勢の不安定化に伴い、全体的な生産量が減少しており、2023年には1,189,428トンまで減少しています。この減少傾向は、紛争やインフラの破壊、気候変動などの要因と関連しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,189,428
-1.23% ↓
2022年 1,204,273
-2.56% ↓
2021年 1,235,973
-5.64% ↓
2020年 1,309,870
21.18% ↑
2019年 1,080,969
0.81% ↑
2018年 1,072,304
-8.97% ↓
2017年 1,177,972
-14.89% ↓
2016年 1,384,033
0.07% ↑
2015年 1,383,120
-6.52% ↓
2014年 1,479,537
-3.17% ↓
2013年 1,527,993
-4.76% ↓
2012年 1,604,349
-5.73% ↓
2011年 1,701,815
17.12% ↑
2010年 1,453,000
-9.2% ↓
2009年 1,600,269
-0.54% ↓
2008年 1,609,000
-5.68% ↓
2007年 1,705,860
5.58% ↑
2006年 1,615,680
7.32% ↑
2005年 1,505,510
10.37% ↑
2004年 1,364,000
13.01% ↑
2003年 1,207,000
2.85% ↑
2002年 1,173,527
13.68% ↑
2001年 1,032,320
-10.73% ↓
2000年 1,156,393
1.13% ↑
1999年 1,143,423
2.2% ↑
1998年 1,118,780
10.91% ↑
1997年 1,008,719
7.96% ↑
1996年 934,357
5.12% ↑
1995年 888,838
16.32% ↑
1994年 764,126
2.96% ↑
1993年 742,153
-4.34% ↓
1992年 775,785
-2.88% ↓
1991年 798,814
3.61% ↑
1990年 771,000
-0.77% ↓
1989年 777,000
4.72% ↑
1988年 742,000
27.27% ↑
1987年 583,000
-5.17% ↓
1986年 614,787
-1% ↓
1985年 621,000
7.25% ↑
1984年 579,000
3.02% ↑
1983年 562,000
-6.22% ↓
1982年 599,285
5.08% ↑
1981年 570,292
16.25% ↑
1980年 490,568
8.51% ↑
1979年 452,076
8.18% ↑
1978年 417,876
24.96% ↑
1977年 334,406
9% ↑
1976年 306,788
16.84% ↑
1975年 262,573
23.92% ↑
1974年 211,888
18.61% ↑
1973年 178,642
-4.28% ↓
1972年 186,626
-6.36% ↓
1971年 199,305
0.42% ↑
1970年 198,462
3.44% ↑
1969年 191,862
2.92% ↑
1968年 186,426
14.01% ↑
1967年 163,521
-3.81% ↓
1966年 170,000
14.09% ↑
1965年 149,000
4.93% ↑
1964年 142,000
-6.03% ↓
1963年 151,119
0.75% ↑
1962年 150,000
-6.83% ↓
1961年 161,000 -

シリアの牛乳生産量の推移は、その国情と密接に関連しています。データを見ると、1960年代から1970年代にかけては比較的一貫した増加傾向を示したものの、その増加ペースは遅く、1970年には198,462トンにとどまっていました。しかし、1975年以降には急激な生産量の増大が観測され、農業技術の進歩や家畜の品種改良、政府の農業支援政策がその要因として考えられます。このような努力により、1990年代には牛乳生産量が年間800,000トンから1,000,000トン以上に安定化し、農業セクターにおける重要な一分野として確立されました。

しかし、国内の政治的不安定と内戦が始まった2011年以降、シリアの牛乳生産量には大きな影響が見られます。例えば、2010年の1,453,000トンから翌2012年には1,604,349トンと一時的には回復傾向に見えましたが、その後のデータでは不安定な推移が続いています。これは、紛争による家畜の飼育環境の破壊、労働力の喪失、インフラの崩壊、さらには牧草地の荒廃や輸送の困難さが原因と考えられます。この間、特に2017年には1,177,972トンにまで生産量が低下しました。

さらに、気候変動による影響も無視できません。シリアは近年、長期的な干ばつや異常気象に直面しており、これが農業生産全体に悪影響を及ぼしています。例えば、降水量の減少は牛の飼料供給に深刻な影響を及ぼし、間接的に牛乳の生産性を低下させていると考えられます。また、伝染病の発生も家畜管理における大きな課題として挙げられるでしょう。

2020年以降、牛乳生産量は一部で回復の兆しを見せていますが、紛争後の復興の遅れが依然として主要な制約となっています。2023年の生産量は1,189,428トンで、かつてのピーク時と比較して明らかに低いため、さらなる対策と支援が必要です。国際社会や国際機関の支援なしには、家畜飼育の再建やインフラ整備を進めることは難しい状況にあります。

ここで他国の状況と比較することで、対策の参考とできます。世界の主要な牛乳生産国であるインドやアメリカ、さらにドイツといった国々では、農業労働者への資金援助、気候変動対策技術の導入、疫病対策などの積極的な取り組みが進められています。特にインドでは、協同組合的なモデルで小規模農家への支援を強化することで、牛乳生産量を安定的に増やしてきた歴史があります。このような成功事例は、シリアの復興における政策作成の参考になるでしょう。

また、シリア国内の地政学的背景を考えると、安定した農業環境の構築は、食糧安全保障の確保にとどまらず、社会的安定にも資するものです。特に、国内の食糧自給率を高めることは、輸入依存を減らし、通貨の安定性強化にもつながります。したがって、牛乳生産量の増加を目的とした包括的な支援プログラムが、国内外のインフラ再建や労働市場の活性化のための重要な柱となり得ます。

今後の具体的な提言としては、次のような対策が挙げられます。第一に、家畜品種改良プログラムの再開や拡大を通じて、牛の耐候性や搾乳量を向上させることが重要です。第二に、農業労働者や牧場経営者への金融的支援を拡充することが求められます。さらに、灌漑設備や草地の復興を進めるため、国際機関や非政府組織との協力を強化することも不可欠です。第三に、気候変動への対策として、持続可能な灌漑技術やデジタル農業ツールの導入が必要であり、これにより、天候や環境の変動に対する適応力を高めることが期待されます。

結論として、シリアの牛乳生産量の推移は、国内外の影響に敏感に反応し、特に紛争や気候変動といった要因に左右されてきたことが明らかです。今後の持続可能な発展には、これらの課題に包括的に対応するための長期的なビジョンが不可欠です。国際社会の支援を含めた多面的なアプローチを通じて、国内の農業復興を後押しし、人々の生活の安定化と経済成長の基盤を築くことが期待されています。