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シリア・アラブ共和国の大麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年最新データによると、シリア・アラブ共和国の大麦生産量は長期にわたり大きな変動を繰り返してきました。その推移は、地政学的リスクや天候変動、社会経済状況と密接に関係しています。近年では特に2022年の178,542トンという極度の減少から2023年には約1,226,399トンまで回復しましたが、全体の安定性には課題が残っています。本データは、農業政策の評価や地域的な糧食安全保障の視点で重要な指標といえます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,226,399
586.9% ↑
2022年 178,542
-29.24% ↓
2021年 252,326
-88.76% ↓
2020年 2,245,791
-26.44% ↓
2019年 3,053,124
648.11% ↑
2018年 408,110
-58.78% ↓
2017年 990,054
3.73% ↑
2016年 954,480
-40.89% ↓
2015年 1,614,883
169.1% ↑
2014年 600,104
-34.12% ↓
2013年 910,920
25.12% ↑
2012年 728,051
9.19% ↑
2011年 666,764
-1.92% ↓
2010年 679,800
-19.61% ↓
2009年 845,669
223.89% ↑
2008年 261,100
-66.72% ↓
2007年 784,479
-34.76% ↓
2006年 1,202,400
56.68% ↑
2005年 767,416
45.57% ↑
2004年 527,193
-51.14% ↓
2003年 1,079,060
17.35% ↑
2002年 919,514
370.2% ↑
2001年 195,556
-7.72% ↓
2000年 211,905
-50.2% ↓
1999年 425,536
-51.02% ↓
1998年 868,848
-11.58% ↓
1997年 982,654
-40.55% ↓
1996年 1,653,018
-3.06% ↓
1995年 1,705,142
15.08% ↑
1994年 1,481,740
-4.61% ↓
1993年 1,553,352
42.33% ↑
1992年 1,091,400
19.02% ↑
1991年 917,000
8.39% ↑
1990年 846,000
212.18% ↑
1989年 271,000
-90.44% ↓
1988年 2,835,859
392.08% ↑
1987年 576,300
-48.35% ↓
1986年 1,115,700
50.73% ↑
1985年 740,200
143.89% ↑
1984年 303,500
-70.91% ↓
1983年 1,043,300
57.83% ↑
1982年 661,040
-52.98% ↓
1981年 1,405,785
-11.43% ↓
1980年 1,587,279
302.15% ↑
1979年 394,700
-45.83% ↓
1978年 728,696
116.3% ↑
1977年 336,893
-68.18% ↓
1976年 1,058,711
77.47% ↑
1975年 596,544
-8.99% ↓
1974年 655,480
542.92% ↑
1973年 101,954
-85.64% ↓
1972年 710,000
171.14% ↑
1971年 261,853
11.46% ↑
1970年 234,920
-62.53% ↓
1969年 626,959
22.45% ↑
1968年 512,000
-13.22% ↓
1967年 590,000
190.64% ↑
1966年 203,000
-70.58% ↓
1965年 690,100
8.35% ↑
1964年 636,906
-18.74% ↓
1963年 783,806
-1.75% ↓
1962年 797,758
138.14% ↑
1961年 335,000 -

シリアにおける大麦生産量の推移を見てみると、天候、政治的背景、及び社会経済的要素が深く関与していることが明らかです。例えば1961年から1980年代にかけてのデータを見ると、特に雨量に依存する農業形態の特徴が強く、降水量の多い年には生産量が増え、干ばつ年には大幅に減少するというパターンが繰り返されています。1988年の大麦生産量は2,835,859トンと歴史的なピークを記録しましたが、この結果はまたもや気候条件の好転に加え、農業技術の導入も影響していると考えられます。

2000年代以降、シリアの大麦生産にはさらなる不安定さが見られます。この時期は世界的な気候変動が顕在化するとともに、シリア内戦や地域紛争、人道的危機が生じたためです。例えば2011年以降の内戦は、農業インフラの破壊、農地の荒廃、労働力の減少といった深刻な影響を生じさせ、大麦生産量を大幅に揺るがしました。その結果、2011年から2018年の間、生産量は概ね年間500,000トン前後で推移しました。また、2018年には408,110トンまで低下しましたが、これは内戦による影響に加え、気候変動による降水パターンの変化も大きく関与していると考えられます。

一方、2019年と2020年にはそれぞれ3,053,124トン及び2,245,791トンと比較的高い数字が記録され、これには一時的な降水量の増加、農業分野への支援施策の実行、または国際的な人道援助の影響が影響したと見られます。しかしながら、2022年は178,542トンと過去最低水準に落ち込みました。これは干ばつによる穀物不作が直接的な理由とされています。このように、気候変動のリスクと紛争の継続がシリアの大麦生産に与える脅威は依然として大きいです。

2023年には1,226,399トンの生産量まで回復していますが、この背景には降水パターンの変化と一定の安定化した地域における農業再建の進展があったと考えられます。ただし、長期的に持続可能な生産の回復には至っておらず、気候変動の進行や政治的安定化が依然として重要な課題として存在します。

シリアが直面する現状を考えると、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、灌漑設備や農業インフラの再建が急務です。例えば、国際援助に基づく水資源管理のプロジェクトや、地域協力型の灌漑システムの構築が考えられます。また、農業技術の普及と教育も効果的な手段となります。気候変動に対応した耐干ばつ性の高い大麦の品種を導入することや、効率的な栽培方法の訓練が求められます。

さらに、国際的な枠組みを活用することで安定的な農業復興を目指すことも重要です。例えば、国際連合や欧州連合の支援を通じて、持続可能な農業を支えるプログラムを企画・実行することが考えられます。また、地域内の水・食料安全保障問題を共有しものにするために、イラクやトルコといった近隣諸国との協力体制を強化することも必要です。

以上の分析から、シリアの大麦生産を安定させる鍵は、気候変動への適応、内政の安定化、国際協力の強化にあります。これらの組み合わせが、長期的な食糧安全保障の目標達成につながるでしょう。