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シリア・アラブ共和国のクルミ(胡桃)生産量推移(1961年~2023年)

シリア・アラブ共和国のクルミ生産量は1991年以来、大きな変動を見せながら推移しています。1995年や1997年のように大幅に生産量が落ち込む年がある一方で、1996年や1998年には急激な増加が見られました。2000年代以降は概ね安定しているものの、2011年以降のシリア内戦が関連していると推測される一時的な減少がありました。それでも、2022年には13,310トンと再び増加が見られる一方で、2023年にはやや低めの12,515トンに落ち込んでいます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 12,515
-5.97% ↓
2022年 13,310
11% ↑
2021年 11,991
8.3% ↑
2020年 11,072
4.76% ↑
2019年 10,569
-12.87% ↓
2018年 12,130
-1.57% ↓
2017年 12,323
9.26% ↑
2016年 11,279
-4.59% ↓
2015年 11,822
0.04% ↑
2014年 11,817
-9.63% ↓
2013年 13,077
-6.39% ↓
2012年 13,969
1.88% ↑
2011年 13,711
13.19% ↑
2010年 12,113
-5.68% ↓
2009年 12,843
5.69% ↑
2008年 12,152
15.91% ↑
2007年 10,484
-11.58% ↓
2006年 11,857
0.08% ↑
2005年 11,848
9.84% ↑
2004年 10,786
-5.71% ↓
2003年 11,439
-7.52% ↓
2002年 12,369
-0.57% ↓
2001年 12,440
-16.44% ↓
2000年 14,887
-6.93% ↓
1999年 15,995
-2.08% ↓
1998年 16,335
193.85% ↑
1997年 5,559
-68.31% ↓
1996年 17,543
185.53% ↑
1995年 6,144
-46.88% ↓
1994年 11,566
-4.28% ↓
1993年 12,084
2.11% ↑
1992年 11,834
7.81% ↑
1991年 10,977 -

シリア・アラブ共和国は、中東地域で伝統的に農業が根幹を支えてきた国であり、特にクルミのようなナッツ類の生産は果樹園農業の一部として重要な位置を占めています。国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データを基にしたクルミの生産動向は、地域の農業政策、気候条件、地政学的緊張の影響を反映しています。

データを振り返ると、1990年代には波乱に満ちた変動が見られます。とりわけ1995年と1997年にはそれぞれ6,144トン及び5,559トンと急落しています。一方、翌年の1996年や1998年には17,543トンや16,335トンと劇的な回復を遂げています。このような大きな変化は、気候条件の変化や農業インフラの整備不十分さ、または政治的不安定さに起因している可能性があります。その後、2000年代に入ると、クルミ生産量は10,000トンから14,000トンの範囲内で概ね安定して推移しています。

特に注目すべきは、2011年以降のシリア内戦の影響です。この時期、クルミの生産量は11,700トン前後で推移していますが、内戦に伴う農地へアクセス困難な状況や、農業に必要なインフラの損壊、さらには農業資材の調達困難といった課題が挙げられます。一方で、2022年に見られる13,310トンへの回復は、幾分かの安定が戻りつつあることを意味すると同時に、農業技術や生産拡大への政策的注力が行われた可能性があります。その後の2023年に若干の減少が見られる(12,515トン)ものの、大きな崩壊を回避し、安定性を保つ動きが見られます。

シリア以外の国々でのクルミ生産と比較すると、例えば中国やアメリカはその生産量が非常に大きく、中国は年間100万トン以上のクルミを生産しています。この規模に比べれば、シリアの貢献は地理的・経済的な条件の違いを考慮しても限定的です。それでも、地域内での需要と供給のバランスを考慮すれば、自給的農業の基盤づくりとしてクルミ生産は欠かせない要素と言えるでしょう。

将来的な課題として、まず気候変動がもたらすリスクが挙げられます。この地域は気候変動の影響を強く受けやすいとされており、特に乾燥化や不規則な降雨パターンが農業全般に影響を及ぼす可能性があります。また、地政学的要因による経済的混乱や農村部への投資不足も解決の必要がある課題です。再生可能エネルギーを利用した灌漑システムの導入や、農業インフラの復興は政策の中心的な柱となるべきでしょう。

政策の視点から具体的な提言として、例えば地方における小規模農業者がクルミ生産技術を向上させるための支援企画の実施が挙げられます。また、国際機関や隣国との協力を通じた持続可能な農業枠組みの構築も効果的です。さらに、地域の貿易ルートを活用し、高付加価値のナッツ製品として輸出競争力を高めることが必要です。このように、教育・インフラ・技術の複合的な戦略による農業分野の再建が求められる時代となっています。

結論として、シリアのクルミ生産は長期的に見れば安定化傾向にはあるものの、地政学的背景や気候的制約が依然として課題です。こうした環境下で継続的な成長と安定を目指すためには、内外の協力や具体的な農業振興策を通じて、持続可能性を確保する努力が不可欠です。この取り組みが成功すれば、クルミ生産はシリア国内だけにとどまらず、地域経済全体の成長を牽引する要素となる可能性があります。