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シリア・アラブ共和国の牛飼養数推移(1961-2022)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が公表した最新のデータによると、シリア・アラブ共和国の牛飼養数は、1961年から2022年にかけて長期的な増加傾向を見せる一方で、特定の時期に急減や横ばいがみられます。ピークとなる2007年には1,168,330頭に達しましたが、2017年以降は再び減少傾向にあり、2022年には852,719頭となっています。この推移は、国内外の政治・経済的状況や紛争、気候変動などの複合的な要因による影響が反映されています。

年度 飼養数(頭)
2022年 852,719
2021年 872,307
2020年 884,572
2019年 788,321
2018年 766,642
2017年 833,130
2016年 1,090,000
2015年 1,090,000
2014年 1,090,458
2013年 1,113,225
2012年 1,108,473
2011年 1,111,710
2010年 1,010,000
2009年 1,084,542
2008年 1,109,000
2007年 1,168,330
2006年 1,121,440
2005年 1,082,623
2004年 1,024,000
2003年 937,000
2002年 866,675
2001年 836,868
2000年 984,393
1999年 977,944
1998年 931,982
1997年 856,747
1996年 810,150
1995年 775,000
1994年 720,646
1993年 707,168
1992年 765,000
1991年 771,118
1990年 787,000
1989年 800,000
1988年 763,000
1987年 710,000
1986年 706,000
1985年 742,000
1984年 736,000
1983年 767,000
1982年 791,000
1981年 807,000
1980年 767,931
1979年 759,929
1978年 694,539
1977年 639,451
1976年 574,039
1975年 556,688
1974年 524,364
1973年 495,679
1972年 487,821
1971年 506,222
1970年 528,402
1969年 514,125
1968年 497,210
1967年 465,900
1966年 523,900
1965年 505,608
1964年 462,897
1963年 448,800
1962年 433,482
1961年 421,000

シリア・アラブ共和国の牛飼養数の推移を見ると、長期的には順調な増加傾向がみられます。特に1960年代後半から1970年代後半にかけて急速な増加が見られ、この期間は国内の経済成長と農業基盤の整備が進んだ時期に対応しています。しかし、1970年代後半以降では断続的な減少が観察され、一部の年で急激に数値が減少しています。例えば、1986年や1993年には顕著な落ち込みが認められます。

2000年代に入ると再び飼養数は増加をみせ、2007年には過去最高の1,168,330頭に到達しました。この背景には、当時の恒常的な農業振興政策や市場の成長、また内戦前の安定した生活環境があったと考えられます。しかし、その後の政治的・地政学的な変化や2011年の内戦勃発により、飼養数は再び減少傾向に転じました。

特に2017年以降、飼養数は著しく減少しました。2017年には833,130頭と、わずか10年前のピーク時の70%程度にまで下落しています。この時期の減少は、紛争による農村地域の荒廃、牛の飼料不足、家畜市場の流通網の破壊、そして国民の経済的困窮が主な原因と考えられます。一方、2020年以降は少しずつ回復傾向にあり、2020年には884,572頭にまで増加しましたが、2022年には再びわずかな減少がみられました。

このような変動要因は、シリア国内の気候変動や地域衝突、さらに新型コロナウイルスの影響などが複合的に絡んでいます。特に、気候変動による干ばつや降水量の減少は牧草地や農業資源に直接的な圧力をかけ、飼料確保の難しさを助長しました。また、紛争によって生産システムが分断されたことで、牛の飼育や流通の連続性が損なわれました。

未来に向けて考えると、シリアの牛飼養数の安定と成長にはいくつかの課題があります。一つは、国内の農業基盤の再構築です。紛争や紛争後の土地荒廃を克服し、牧草地や水資源の確保を支援する政策が求められます。二つ目は、高品質な飼料の供給を確保することです。輸送網の整備や国際協力による飼料支援が重要です。また、気候変動への適応策として、耐乾性牧草の導入や水資源の持続可能な利用を進めることも推奨されます。

さらに、国際機関との協力枠組みを強化し、技術支援や資金援助を受けながら、家畜管理や衛生状態の改善を図るべきです。これにより、市場流通の安定化と輸出の可能性も拡大するでしょう。特に地域衝突の影響からの回復のためには、周辺国や国際的な団体との協力が不可欠です。

結論として、シリア・アラブ共和国の牛飼養数推移は、国内外の地政学的、経済的、環境的要因を強く受けていることがデータから明らかです。将来的な安定と成長には、農業基盤整備や農村開発政策、気候変動に対応した資源アプローチが必要です。国際社会も含めた多角的な支援を通じて、安定した畜産業の未来を築くことが求められます。