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シリア・アラブ共和国の小麦生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、シリア・アラブ共和国の小麦生産量は1950年代の小規模生産から1970年代以降に増加し、1995年から2005年にかけて最も高い生産量を示しました。しかし近年では紛争や気候変動の影響により再び減少傾向にあります。特に2022年は1,551,605トンと、全盛期に比べ大きく減少しています。このデータはシリアの持続可能な食糧供給および経済的安定への課題を示しています。

年度 生産量(トン)
2022年 1,551,605
2021年 1,951,806
2020年 2,848,472
2019年 3,085,097
2018年 1,222,988
2017年 1,850,740
2016年 1,626,588
2015年 2,677,156
2014年 2,024,332
2013年 3,182,111
2012年 3,609,096
2011年 3,858,331
2010年 3,083,100
2009年 3,701,784
2008年 2,139,300
2007年 4,041,100
2006年 4,932,000
2005年 4,668,750
2004年 4,537,459
2003年 4,912,993
2002年 4,775,440
2001年 4,744,623
2000年 3,105,489
1999年 2,691,504
1998年 4,111,625
1997年 3,031,090
1996年 4,080,357
1995年 4,184,144
1994年 3,702,985
1993年 3,626,491
1992年 3,046,000
1991年 2,140,000
1990年 2,070,000
1989年 1,020,000
1988年 2,067,138
1987年 1,656,350
1986年 1,969,000
1985年 1,713,866
1984年 1,067,600
1983年 1,611,988
1982年 1,556,441
1981年 2,086,953
1980年 2,225,800
1979年 1,319,959
1978年 1,650,696
1977年 1,217,214
1976年 1,790,109
1975年 1,550,061
1974年 1,629,896
1973年 593,462
1972年 1,808,000
1971年 846,276
1970年 624,562
1969年 1,003,517
1968年 600,000
1967年 1,049,000
1966年 559,000
1965年 1,044,000
1964年 1,100,000
1963年 1,189,585
1962年 1,374,175
1961年 757,000

シリアの小麦生産は、1961年に757,000トンと記録されて以降、1970年代以降に政府の灌漑整備や農業支援政策の導入とともに飛躍的に増加していきました。1990年代には大きな成長を遂げ、1995年には4,184,144トン、2003年には4,912,993トンと、国内消費を十分に賄える水準にまで達したほか、輸出の一部にも寄与しました。豊富な農地、特にユーフラテス川流域の灌漑インフラが安定した収穫量を支える重要な要因でした。

しかしながら、2011年以降のシリア内戦の影響で農業基盤が大きく損なわれ、生産量が急激に減少する傾向が顕著になりました。例えば、2018年に小麦生産量は1,222,988トンにまで落ち込み、これは内戦以前のピーク時の25%以下という非常に深刻な状況です。この減少の背景には、農村地域でのインフラ破壊、農地への地雷の設置、農業従事者の移住、さらには農機具や肥料といった農業資材の不足が挙げられます。加えて、近年の気候変動による降水量の減少も、ユーフラテス川の流量に影響を及ぼし、水源に依存した農法に深刻な打撃を与えています。

さらに、国際的制裁が課されているシリア経済は外貨獲得が難しい状況にあり、種子や改良品種の導入も困難になっています。このため、小麦の品質と収穫量の改善は停滞している状況です。他国と比較しても異常気象の影響が世界的に顕著となる中、アメリカ(3億トン規模)やインド(1億トン規模)といった主要輸出国は適応技術の強化や研究開発への積極的投資など、先進的な方策を導入しています。これに対し、シリアでは依然として基礎的な農業技術や資材供給問題が未解決であることが生産量復元の大きな障害となっています。

シリアの小麦生産量回復のためには、まず安全な農業基盤を取り戻す必要があります。具体的には、内戦による地雷の除去や灌漑設備の再構築、農地の整備が急務です。加えて、国際的な人道援助を拡大し、農業従事者の技術教育や肥料・種子などの資材支援を行うべきです。さらに、気候変動への適応を目的として、塩害耐性や乾燥耐性を持つ新しい作物の導入や研究を進めることも必要です。国連やNGOを含む国際機関との協力を深め、資源を有効に活用する地域間の枠組み構築も重要です。

地政学的観点では、紛争の継続が生産回復に与えるリスクを無視できません。ユーフラテス川の水資源をめぐるトルコとの摩擦や国連制裁が長期化する場合、地元農業だけでなく食糧輸入依存も深刻化する可能性があります。このような背景を踏まえ、シリア国内外の利害関係者がより包括的な平和と安定のために協力する姿勢が求められます。

シリアの農業再建は国民の基本的な食糧保障だけでなく、経済および社会的安定の回復にも直結しています。今後の対策としては、国連食糧農業機関(FAO)や開発援助機関が中心となり、技術支援や資金援助を通じて持続可能な農業システムの再構築を進めることが最適解の一部となるでしょう。また、シリア内での平和的解決を進めることが、農業復興を含めた持続可能な発展に向けた最も根本的かつ必要不可欠な条件であると言えます。