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シリア・アラブ共和国の小麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、シリア・アラブ共和国の小麦生産量は1950年代の小規模生産から1970年代以降に増加し、1995年から2005年にかけて最も高い生産量を示しました。しかし近年では紛争や気候変動の影響により再び減少傾向にあります。特に2022年は1,551,605トンと、全盛期に比べ大きく減少しています。このデータはシリアの持続可能な食糧供給および経済的安定への課題を示しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 3,080,351
98.53% ↑
2022年 1,551,605
-20.5% ↓
2021年 1,951,806
-31.48% ↓
2020年 2,848,472
-7.67% ↓
2019年 3,085,097
152.26% ↑
2018年 1,222,988
-33.92% ↓
2017年 1,850,740
13.78% ↑
2016年 1,626,588
-39.24% ↓
2015年 2,677,156
32.25% ↑
2014年 2,024,332
-36.38% ↓
2013年 3,182,111
-11.83% ↓
2012年 3,609,096
-6.46% ↓
2011年 3,858,331
25.14% ↑
2010年 3,083,100
-16.71% ↓
2009年 3,701,784
73.04% ↑
2008年 2,139,300
-47.06% ↓
2007年 4,041,100
-18.06% ↓
2006年 4,932,000
5.64% ↑
2005年 4,668,750
2.89% ↑
2004年 4,537,459
-7.64% ↓
2003年 4,912,993
2.88% ↑
2002年 4,775,440
0.65% ↑
2001年 4,744,623
52.78% ↑
2000年 3,105,489
15.38% ↑
1999年 2,691,504
-34.54% ↓
1998年 4,111,625
35.65% ↑
1997年 3,031,090
-25.72% ↓
1996年 4,080,357
-2.48% ↓
1995年 4,184,144
12.99% ↑
1994年 3,702,985
2.11% ↑
1993年 3,626,491
19.06% ↑
1992年 3,046,000
42.34% ↑
1991年 2,140,000
3.38% ↑
1990年 2,070,000
102.94% ↑
1989年 1,020,000
-50.66% ↓
1988年 2,067,138
24.8% ↑
1987年 1,656,350
-15.88% ↓
1986年 1,969,000
14.89% ↑
1985年 1,713,866
60.53% ↑
1984年 1,067,600
-33.77% ↓
1983年 1,611,988
3.57% ↑
1982年 1,556,441
-25.42% ↓
1981年 2,086,953
-6.24% ↓
1980年 2,225,800
68.63% ↑
1979年 1,319,959
-20.04% ↓
1978年 1,650,696
35.61% ↑
1977年 1,217,214
-32% ↓
1976年 1,790,109
15.49% ↑
1975年 1,550,061
-4.9% ↓
1974年 1,629,896
174.64% ↑
1973年 593,462
-67.18% ↓
1972年 1,808,000
113.64% ↑
1971年 846,276
35.5% ↑
1970年 624,562
-37.76% ↓
1969年 1,003,517
67.25% ↑
1968年 600,000
-42.8% ↓
1967年 1,049,000
87.66% ↑
1966年 559,000
-46.46% ↓
1965年 1,044,000
-5.09% ↓
1964年 1,100,000
-7.53% ↓
1963年 1,189,585
-13.43% ↓
1962年 1,374,175
81.53% ↑
1961年 757,000 -

シリアの小麦生産は、1961年に757,000トンと記録されて以降、1970年代以降に政府の灌漑整備や農業支援政策の導入とともに飛躍的に増加していきました。1990年代には大きな成長を遂げ、1995年には4,184,144トン、2003年には4,912,993トンと、国内消費を十分に賄える水準にまで達したほか、輸出の一部にも寄与しました。豊富な農地、特にユーフラテス川流域の灌漑インフラが安定した収穫量を支える重要な要因でした。

しかしながら、2011年以降のシリア内戦の影響で農業基盤が大きく損なわれ、生産量が急激に減少する傾向が顕著になりました。例えば、2018年に小麦生産量は1,222,988トンにまで落ち込み、これは内戦以前のピーク時の25%以下という非常に深刻な状況です。この減少の背景には、農村地域でのインフラ破壊、農地への地雷の設置、農業従事者の移住、さらには農機具や肥料といった農業資材の不足が挙げられます。加えて、近年の気候変動による降水量の減少も、ユーフラテス川の流量に影響を及ぼし、水源に依存した農法に深刻な打撃を与えています。

さらに、国際的制裁が課されているシリア経済は外貨獲得が難しい状況にあり、種子や改良品種の導入も困難になっています。このため、小麦の品質と収穫量の改善は停滞している状況です。他国と比較しても異常気象の影響が世界的に顕著となる中、アメリカ(3億トン規模)やインド(1億トン規模)といった主要輸出国は適応技術の強化や研究開発への積極的投資など、先進的な方策を導入しています。これに対し、シリアでは依然として基礎的な農業技術や資材供給問題が未解決であることが生産量復元の大きな障害となっています。

シリアの小麦生産量回復のためには、まず安全な農業基盤を取り戻す必要があります。具体的には、内戦による地雷の除去や灌漑設備の再構築、農地の整備が急務です。加えて、国際的な人道援助を拡大し、農業従事者の技術教育や肥料・種子などの資材支援を行うべきです。さらに、気候変動への適応を目的として、塩害耐性や乾燥耐性を持つ新しい作物の導入や研究を進めることも必要です。国連やNGOを含む国際機関との協力を深め、資源を有効に活用する地域間の枠組み構築も重要です。

地政学的観点では、紛争の継続が生産回復に与えるリスクを無視できません。ユーフラテス川の水資源をめぐるトルコとの摩擦や国連制裁が長期化する場合、地元農業だけでなく食糧輸入依存も深刻化する可能性があります。このような背景を踏まえ、シリア国内外の利害関係者がより包括的な平和と安定のために協力する姿勢が求められます。

シリアの農業再建は国民の基本的な食糧保障だけでなく、経済および社会的安定の回復にも直結しています。今後の対策としては、国連食糧農業機関(FAO)や開発援助機関が中心となり、技術支援や資金援助を通じて持続可能な農業システムの再構築を進めることが最適解の一部となるでしょう。また、シリア内での平和的解決を進めることが、農業復興を含めた持続可能な発展に向けた最も根本的かつ必要不可欠な条件であると言えます。