Skip to main content

シリア・アラブ共和国の大豆生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月更新のデータによれば、シリア・アラブ共和国の大豆生産量は、1988年には4,529トンで、その後1990年代半ばにかけて増加傾向を示しましたが、1990年代後半から減少し、2000年代前半以降は低水準で推移しています。2011年以降の内戦などの影響で2013年にはわずか545トンまで急減。その後、2016年から一時的に増加傾向を見せたものの、2022年には2,350トンまで再び低下しました。

年度 生産量(トン)
2022年 2,350
2021年 4,458
2020年 6,227
2019年 2,086
2018年 1,727
2017年 3,901
2016年 3,550
2015年 475
2014年 303
2013年 545
2012年 820
2011年 2,225
2010年 3,147
2009年 1,623
2008年 1,369
2007年 2,058
2006年 3,140
2005年 3,814
2004年 3,698
2003年 3,465
2002年 4,712
2001年 3,693
2000年 3,804
1999年 2,513
1998年 7,233
1997年 6,185
1996年 9,364
1995年 11,247
1994年 13,471
1993年 10,702
1992年 11,194
1991年 5,804
1990年 10,775
1989年 10,229
1988年 4,529

シリア・アラブ共和国の大豆生産は、長年にわたり環境的、経済的、そして地政学的な要因に大きな影響を受けてきました。1988年から1990年代初頭にかけては、生産量が10,000トンを超える水準に達し、この時期には農業政策の強化や需給の安定が背景にあったと考えられます。しかし、1990年代後半から急激に減少を開始し、1999年には2,513トンに落ち込みました。この低下はおそらく干ばつやインフラ不足、収穫効率の低迷などが原因と見られます。

2000年代に入ると、シリア政府による農業振興策にもかかわらず、生産量は4,000トン前後で停滞しました。シリアは地域情勢や気候変動などの課題に直面する中、農業資源の効率的な利用が課題となっていました。内戦が始まった2011年以降は農地の荒廃、農業労働力の減少、輸送網の停止などにより、生産量は急激に落ち、特に2014年には生産量が303トンという最低記録を示しています。

2016年以降、大規模な国際支援や内戦の収束に向けた取り組みが進展したことで、一時的に生産量が回復する兆しが見えました。2020年には6,227トンと一時的な増加が確認されていますが、その後も安定的な成長には至らず、2022年にはわずか2,350トンにとどまりました。この地域では気候変動による降水量の減少、農業インフラの破壊、労働力不足などが依然として深刻な課題として続いています。

大豆はシリアにおける重要作物の一つであり、その生産量の変動は国内の食糧自給率や地域経済に直接影響を及ぼします。また、大豆は植物性タンパク質として食料や飼料として利用されるため、その生産不足は輸入依存度を高め、外貨流出の一因ともなっています。周辺諸国との比較では、近隣のトルコやイランが農業改革を進める中、生産量で著しく後れを取っている現状が浮き彫りになっています。

今後、シリアが大豆生産を回復・拡大していくためには、国際社会との協力が重要です。具体的には、干ばつ対策としての農業用水管理技術の導入や、農業機械化の推進、さらに国内の安定を図るための和平プロセスの継続が必要です。また、気候変動の影響を軽減するため、既存の灌漑施設の整備や耐乾燥性作物の導入も有効な策として考えられます。

結論として、シリアの大豆生産は過去数十年にわたり多くの課題に直面してきましたが、これを改善するには、単なる農業技術の導入にとどまらず、平和構築やインフラの再建、また長期的な計画に基づく気候変動対策を包括的に進めていく必要があります。これらの施策の実施により、大豆生産の安定化と、それに伴う国内の食料保障拡充が期待されます。