国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、シリア・アラブ共和国のエンドウ豆(生)の生産量は長期的に波動がありますが、1970年代以降、全体として上昇傾向がみられます。近年の動きを見ると、2023年の生産量は16,949トンとなり、2021年の16,939トンとほぼ同水準を保っています。しかし、内戦や干ばつなどの要因による激しい変動が見られ、特に2011年以降は政治的・経済的な不安定さが生産量に影響を与えていることが示唆されます。
シリア・アラブ共和国のエンドウ豆(生)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 16,949 |
23.18% ↑
|
2022年 | 13,760 |
-18.77% ↓
|
2021年 | 16,939 |
9.42% ↑
|
2020年 | 15,481 |
19.73% ↑
|
2019年 | 12,930 |
-13.63% ↓
|
2018年 | 14,971 |
-1.34% ↓
|
2017年 | 15,175 |
71.29% ↑
|
2016年 | 8,859 |
6.41% ↑
|
2015年 | 8,325 |
6.34% ↑
|
2014年 | 7,829 |
-18.75% ↓
|
2013年 | 9,636 |
-17.2% ↓
|
2012年 | 11,638 |
-14.33% ↓
|
2011年 | 13,585 |
-5.71% ↓
|
2010年 | 14,408 |
2.81% ↑
|
2009年 | 14,014 |
-30.62% ↓
|
2008年 | 20,200 |
-14.71% ↓
|
2007年 | 23,685 |
35.97% ↑
|
2006年 | 17,419 |
-24.59% ↓
|
2005年 | 23,100 |
-5.07% ↓
|
2004年 | 24,335 |
32.88% ↑
|
2003年 | 18,314 |
-22.33% ↓
|
2002年 | 23,578 |
35.28% ↑
|
2001年 | 17,429 |
18.13% ↑
|
2000年 | 14,754 |
-2.57% ↓
|
1999年 | 15,143 |
26.46% ↑
|
1998年 | 11,975 |
242.14% ↑
|
1997年 | 3,500 |
-74.58% ↓
|
1996年 | 13,768 |
18.69% ↑
|
1995年 | 11,600 |
-27.13% ↓
|
1994年 | 15,919 |
18.8% ↑
|
1993年 | 13,400 |
52.27% ↑
|
1992年 | 8,800 |
39.68% ↑
|
1991年 | 6,300 |
3.28% ↑
|
1990年 | 6,100 |
22% ↑
|
1989年 | 5,000 |
-39.16% ↓
|
1988年 | 8,218 |
-29.76% ↓
|
1987年 | 11,700 |
82.81% ↑
|
1986年 | 6,400 |
10.1% ↑
|
1985年 | 5,813 |
-53.12% ↓
|
1984年 | 12,400 |
109.14% ↑
|
1983年 | 5,929 |
-24.58% ↓
|
1982年 | 7,861 |
30.34% ↑
|
1981年 | 6,031 |
-22.38% ↓
|
1980年 | 7,770 |
-9.7% ↓
|
1979年 | 8,605 |
29.63% ↑
|
1978年 | 6,638 |
27.19% ↑
|
1977年 | 5,219 |
1.05% ↑
|
1976年 | 5,165 |
42.84% ↑
|
1975年 | 3,616 |
-11.55% ↓
|
1974年 | 4,088 |
131.48% ↑
|
1973年 | 1,766 |
-28.88% ↓
|
1972年 | 2,483 |
58.66% ↑
|
1971年 | 1,565 |
-38.43% ↓
|
1970年 | 2,542 |
39.75% ↑
|
1969年 | 1,819 |
24.5% ↑
|
1968年 | 1,461 |
-7.71% ↓
|
1967年 | 1,583 |
7.61% ↑
|
1966年 | 1,471 |
-20.83% ↓
|
1965年 | 1,858 |
47.46% ↑
|
1964年 | 1,260 |
1.12% ↑
|
1963年 | 1,246 | - |
1962年 | 1,246 |
14.94% ↑
|
1961年 | 1,084 | - |
シリア・アラブ共和国でのエンドウ豆の生産量推移を振り返ると、いくつかの特徴的なパターンが見られます。データによれば、1970年代から急速な成長が記録され、1978年には6,000トンを超える生産量を達成しました。その後も順調に増加を続け、1984年には過去最多で12,400トンとなりました。この成長の背景には、農業技術への投資や灌漑設備の向上、また政府の農業政策支援が寄与したと考えられます。
しかしながら、同時期には不規則な変動が生じていることも示されています。この要因として、天候の変動や農業政策の変化に加え、地域的な資源争奪や地政学的問題が影響している可能性があります。特に近年では、2011年以降の内戦による混乱が大きな打撃を与え、計画的な農業生産が困難となった影響が顕著です。例えば、2014年には生産量が7,829トンまで急減しており、これは内戦による灌漑システムの破壊や生産労働力の減少が主因と見られています。
2020年以降のデータを見ると、エンドウ豆の生産量はおおむね安定した水準に戻りつつあるものの、依然として数年前のピーク時(2004年の24,335トン)に比べると回復の余地が残されています。気候変動による干ばつ頻度の増加や農業インフラの老朽化も、シリアの農業生産を制約する要因となっています。
シリアのエンドウ豆生産量を他国と比較する際には、この国の農業全体が直面している課題を考慮する必要があります。例えば、中国やインドといった同じ気候帯に属する国では、より近代的な農法の導入により安定して高い生産量を維持しています。一方、シリアでは地政学的リスクや資金不足のため、これら近代技術を取り入れるにはまだ課題が多いと考えられます。
今後の課題としては、まず農業インフラの復旧と平和的な環境の確立が挙げられます。具体的には、灌漑設備の修復および改良、新しい農業技術の支援、さらには農家の研修プログラムを導入することが必要です。また、気候変動への対応策として干ばつ耐性作物の普及や雨水収集技術の利用も推奨されます。さらに国際機関や近隣諸国との協力を強化し、共有資源や研究開発への共同投資を進めることが求められるでしょう。
結論として、データはシリアにおけるエンドウ豆生産の可能性を示すと同時に、数多くの課題が存在していることを明らかにしています。しかし、適切な政策と支援があれば、この国の農業部門は回復し、持続可能な発展へと進む可能性を秘めています。食料自給率向上のためにも、国内外での持続的な協力が不可欠です。