国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年版の最新データによると、シリア・アラブ共和国のトマト生産量は長期的には増加傾向にあり、特に2000年代初頭に大きな伸びを見せました。しかし、2011年以降は内戦などの影響を受け、生産量が大幅に減少する年もありました。2017年には一時的に1,174,134トンまで回復しましたが、その後は減少傾向が続き、2022年には650,056トンまで落ち込んでいます。
シリア・アラブ共和国のトマト生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 650,056 |
2021年 | 757,132 |
2020年 | 780,617 |
2019年 | 771,649 |
2018年 | 1,079,235 |
2017年 | 1,174,134 |
2016年 | 866,425 |
2015年 | 722,625 |
2014年 | 669,041 |
2013年 | 499,743 |
2012年 | 783,874 |
2011年 | 1,154,985 |
2010年 | 1,156,347 |
2009年 | 1,165,611 |
2008年 | 1,163,300 |
2007年 | 1,232,500 |
2006年 | 1,035,790 |
2005年 | 945,500 |
2004年 | 965,400 |
2003年 | 923,100 |
2002年 | 900,600 |
2001年 | 771,764 |
2000年 | 753,218 |
1999年 | 610,197 |
1998年 | 555,167 |
1997年 | 407,052 |
1996年 | 409,085 |
1995年 | 426,532 |
1994年 | 425,896 |
1993年 | 397,121 |
1992年 | 481,117 |
1991年 | 428,445 |
1990年 | 430,000 |
1989年 | 558,700 |
1988年 | 661,376 |
1987年 | 562,700 |
1986年 | 582,600 |
1985年 | 778,500 |
1984年 | 727,300 |
1983年 | 830,700 |
1982年 | 790,281 |
1981年 | 722,961 |
1980年 | 643,683 |
1979年 | 457,882 |
1978年 | 501,967 |
1977年 | 453,629 |
1976年 | 516,562 |
1975年 | 375,365 |
1974年 | 395,467 |
1973年 | 268,999 |
1972年 | 315,859 |
1971年 | 248,392 |
1970年 | 192,400 |
1969年 | 191,978 |
1968年 | 183,604 |
1967年 | 161,682 |
1966年 | 125,860 |
1965年 | 135,449 |
1964年 | 153,156 |
1963年 | 166,100 |
1962年 | 115,913 |
1961年 | 93,200 |
トマトはシリアにおいて重要な農作物の一つであり、国内消費のみならず近隣諸国への輸出にも利用されてきました。その長い生産の歴史を見てみると、初期の1960年代には10万トン以下の生産量だったトマトが、1970年代には40万~50万トン台に達し、1980年代には70万トンを超える年も増え始めました。2000年代になると更なる成長が見え、2007年には生産量が記録的な1,232,500トンに達しました。ただし、これらの成長には灌漑技術の向上や農業政策の進展といった要素が大いに貢献しています。
一方で、2011年以降、シリア内戦の影響がトマト栽培をはじめとした農業に深刻な影響を与えました。農業従事者の多くが戦争の影響で生産活動を続けられなくなり、また灌漑施設や農地が破壊されるケースも見られました。この影響は数字にも反映されており、例えば2012年には783,874トン、そして紛争が激化した2013年には499,743トンという歴史的な低水準まで落ち込みました。その後、2017年には1,174,134トンとある程度の回復を見せたものの、近年は再び減少傾向を見せています。2022年の生産量である650,056トンは、特に世界水準と比較してもかなり低めと言えます。
世界的に見ると、トマトの主要生産国は中国やインドといったアジア諸国で、中国の生産量は1億トンを超える規模に達しています。また、トマトの品種改良や効率的な栽培方法を進めているアメリカ、トマト加工食品で世界的地位を占めるイタリアなどとの比較において、シリアの生産規模は相対的に小規模であることが明らかです。
シリアのトマト生産量が減少している最大の原因は、やはり内戦やそれに伴う国内の不安定な政治状況にあります。さらに、気候変動の影響により、従来の栽培スケジュールや地域が適用できなくなっていることも無視できません。乾燥地域での効率的な水利用を模索する必要があり、特に灌漑施設の整備が優先課題となります。そして、農業技術の教育や支援プロジェクトを拡充することも重要です。
未来への指針としては、まず地域での和平が前提条件となりますが、それだけでは十分ではありません。国際機関の協力を得て気候適応型農業の導入を進める必要があります。また、近隣諸国や国際市場への輸出経路復活も、農業振興の上で重要となるでしょう。他国の成功例を参考にしながら、例えばドローンを利用した農業モニタリングや、新しい肥料の開発・使用を導入することで、収量の安定化を図ることができます。
結論として、シリアのトマト生産量の推移は、その国の経済、政策、地政学的状況を色濃く反映した興味深い例といえます。今後は生産量を維持・回復させることが重要であり、そのためには国際社会との連携が欠かせません。農業における技術革新やインフラ整備、さらに地域の紛争解決が進むことで、持続可能な成長も期待できるでしょう。