FAO(国際連合食糧農業機関)による最新のデータによると、シリア・アラブ共和国におけるヤギ肉の生産量は、1961年の2,560トンから2023年の11,802トンまで増加しており、特に2010年代には大幅な増加が見られました。ただし、2017年以降、一時的な減少傾向を経て、現在はやや持ち直している状況です。これらの変動の背景には、地政学的要因、農業政策、気候変動、国内情勢など、多岐にわたる要因が影響していると考えられます。
シリア・アラブ共和国のヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 11,802 |
7.17% ↑
|
2022年 | 11,012 |
4.85% ↑
|
2021年 | 10,503 |
-12.77% ↓
|
2020年 | 12,041 |
9.86% ↑
|
2019年 | 10,960 |
-1.62% ↓
|
2018年 | 11,140 |
0.25% ↑
|
2017年 | 11,112 |
-19.48% ↓
|
2016年 | 13,800 | - |
2015年 | 13,800 |
0.2% ↑
|
2014年 | 13,772 |
0.21% ↑
|
2013年 | 13,744 |
0.07% ↑
|
2012年 | 13,735 |
-1.76% ↓
|
2011年 | 13,981 |
8.15% ↑
|
2010年 | 12,928 |
57.27% ↑
|
2009年 | 8,220 |
-2.65% ↓
|
2008年 | 8,444 |
0.19% ↑
|
2007年 | 8,428 |
13.33% ↑
|
2006年 | 7,437 |
5.38% ↑
|
2005年 | 7,057 |
6.89% ↑
|
2004年 | 6,602 |
-2.68% ↓
|
2003年 | 6,784 |
36.31% ↑
|
2002年 | 4,977 |
1.12% ↑
|
2001年 | 4,922 |
6.24% ↑
|
2000年 | 4,633 |
-12.65% ↓
|
1999年 | 5,304 |
-9.92% ↓
|
1998年 | 5,888 |
9.56% ↑
|
1997年 | 5,374 |
-27.13% ↓
|
1996年 | 7,375 |
26.33% ↑
|
1995年 | 5,838 |
9.02% ↑
|
1994年 | 5,355 |
-9.24% ↓
|
1993年 | 5,900 |
26.91% ↑
|
1992年 | 4,649 |
-3.55% ↓
|
1991年 | 4,820 |
-19.34% ↓
|
1990年 | 5,976 |
-3.27% ↓
|
1989年 | 6,178 |
17.5% ↑
|
1988年 | 5,258 |
0.81% ↑
|
1987年 | 5,216 |
-4.78% ↓
|
1986年 | 5,478 |
-20.61% ↓
|
1985年 | 6,900 |
-8% ↓
|
1984年 | 7,500 |
7.14% ↑
|
1983年 | 7,000 |
7.69% ↑
|
1982年 | 6,500 |
1.96% ↑
|
1981年 | 6,375 |
-2.58% ↓
|
1980年 | 6,544 |
24.55% ↑
|
1979年 | 5,254 |
-6.43% ↓
|
1978年 | 5,615 |
13.94% ↑
|
1977年 | 4,928 |
6.57% ↑
|
1976年 | 4,624 |
-22.93% ↓
|
1975年 | 6,000 |
21.21% ↑
|
1974年 | 4,950 |
8.79% ↑
|
1973年 | 4,550 |
-11.05% ↓
|
1972年 | 5,115 | - |
1971年 | 5,115 | - |
1970年 | 5,115 |
1.69% ↑
|
1969年 | 5,030 |
-1.66% ↓
|
1968年 | 5,115 |
18.95% ↑
|
1967年 | 4,300 |
-27.73% ↓
|
1966年 | 5,950 |
13.33% ↑
|
1965年 | 5,250 |
7.14% ↑
|
1964年 | 4,900 |
24.05% ↑
|
1963年 | 3,950 |
26% ↑
|
1962年 | 3,135 |
22.46% ↑
|
1961年 | 2,560 | - |
シリアにおけるヤギ肉生産量の推移を見ると、長期的には着実な増加傾向が確認されます。特に1960年代から1970年代にかけては、初期の数値である2,560トンから5,000トン台へと飛躍的に増加しています。この時期の生産量増加の背景には、農業技術の改善や人口増加に伴う家畜飼育の拡大が挙げられます。しかし、1970年代後半には一部減少傾向が見られ、1986年には5,478トンまで落ち込みました。この減少には、干ばつやその他の自然災害が影響した可能性があります。
2000年代後半から2010年にかけて、ヤギ肉生産量が急激に増加しました。この期間における最大の特徴は、2007年と2008年に8,400トン台に達し、さらに2010年には12,928トンへと跳ね上がった点です。この成長は、国内の農村地域での家畜管理の効率化や政府による農業支援政策が寄与した可能性があります。しかし、2011年以降始まったシリア内戦による深刻な影響にもかかわらず、データ上は2010年代半ばまで13,700トン以上と高い生産量を維持しました。
2017年以降、生産量は再び減少し始め、2019年には10,960トンまで落ち込みました。内戦による経済活動の停滞、農業インフラの破壊、さらには気候変動の影響がこの減少に繋がったと考えられます。ただし、2020年に12,041トンに回復し、その後も再び上昇の兆しを見せつつあります。2023年時点では11,802トンと、依然として安定的な供給を維持している状況です。
シリアのヤギ肉生産量を他国と比較すると、例えば中国やインドといった大規模生産国には大きく劣るものの、ヤギ肉が一般的な中東地域の周辺国では一定のシェアを誇っています。ヤギ肉はシリアの食文化の中で非常に重要な役割を果たしており、家畜飼育は多くの農村地域で生計を支える基盤となっています。一方、戦争による長期的な社会不安やインフラの損傷、地域的な干ばつや自然災害などが将来的な生産拡大のボトルネックとなる可能性があります。
気候変動や地政学的リスクを考慮すると、シリアにおけるヤギ肉生産にはいくつかの課題が見られます。まず、干ばつや異常気象に対応した農業技術の導入が重要です。たとえば、家畜の飼育に適した餌の改良や水源の効率的活用が求められます。また、国内の安全保障状況が不安定な中で、地方の家畜農家の保護や農業設備の復旧が必要です。さらに、近隣諸国との農業協力枠組みの構築や、国際機関からの支援を受け入れることも重要でしょう。
FAOやその他の国際支援団体は、持続可能な農業を促進するための技術的および財政的サポートを強化すべきです。シリア自身も、内戦からの復興だけでなく、長期的な食料自給率向上を目指して戦略的なプランを構築する必要があります。ヤギ肉生産量の変動はシリア国内の農業の現状と将来を示す重要な指標であり、社会の安定や経済復興との密接な関連があります。これらを踏まえ、同国の農業基盤を再建するための多角的なアプローチが求められます。