国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、シリア・アラブ共和国のトウモロコシ生産量は、1961年の9,886トンから2022年の535,715トンに大幅に増加しています。この間、内戦や干ばつといった重大な影響を受けた時期の減少も見られますが、近年では劇的な回復傾向にあります。特に2021年から2022年にかけての生産量の急増が注目されます。
シリア・アラブ共和国のトウモロコシ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 535,715 |
2021年 | 309,841 |
2020年 | 226,987 |
2019年 | 215,309 |
2018年 | 101,349 |
2017年 | 91,853 |
2016年 | 79,348 |
2015年 | 89,128 |
2014年 | 67,080 |
2013年 | 109,145 |
2012年 | 257,684 |
2011年 | 298,368 |
2010年 | 133,100 |
2009年 | 183,255 |
2008年 | 281,300 |
2007年 | 177,036 |
2006年 | 158,930 |
2005年 | 187,200 |
2004年 | 210,166 |
2003年 | 226,680 |
2002年 | 231,888 |
2001年 | 215,663 |
2000年 | 190,504 |
1999年 | 181,000 |
1998年 | 285,009 |
1997年 | 303,260 |
1996年 | 250,000 |
1995年 | 199,000 |
1994年 | 203,200 |
1993年 | 200,005 |
1992年 | 215,000 |
1991年 | 225,000 |
1990年 | 180,000 |
1989年 | 108,700 |
1988年 | 90,278 |
1987年 | 56,900 |
1986年 | 74,200 |
1985年 | 78,800 |
1984年 | 59,900 |
1983年 | 26,779 |
1982年 | 49,529 |
1981年 | 46,150 |
1980年 | 48,146 |
1979年 | 33,734 |
1978年 | 56,191 |
1977年 | 58,651 |
1976年 | 50,943 |
1975年 | 26,752 |
1974年 | 19,220 |
1973年 | 15,430 |
1972年 | 14,985 |
1971年 | 8,465 |
1970年 | 7,785 |
1969年 | 8,639 |
1968年 | 7,737 |
1967年 | 8,900 |
1966年 | 7,518 |
1965年 | 5,672 |
1964年 | 6,300 |
1963年 | 7,600 |
1962年 | 6,600 |
1961年 | 9,886 |
シリア・アラブ共和国のトウモロコシ生産量は、1960年代から現在に至るまで、経済状況や気候変動、さらには地政学的リスクと密接に関連しています。1960年代において生産量は5,000~10,000トン程度の低水準に留まっていました。当時はインフラ整備や農業技術が限られており、トウモロコシはシリアの主要農産物ではありませんでした。しかし1970年代に入ると、灌漑システムの導入や農業政策の改善により、1976年には生産量が50,000トンを超え、さらに1980年代後半から1990年代にかけて生産が加速しました。特に1997年には30万トンを超え、シリアのトウモロコシ生産が顕著に拡大しました。
一方、2000年代中頃から減少傾向がみられるようになります。この背景には、干ばつや水資源不足、農業用地の劣化が挙げられます。この傾向は2006年以降深刻化し、一部の地域では農業生産が著しく低迷しました。さらに2011年以降は内戦の影響を受け、2013年には生産量が109,145トンと大きく落ち込んでいます。この期間は、戦闘による農地や施設の破壊、農村地域の人口減少、肥料や種子の供給難といった複合的要因が大きく影響しています。
しかしながら、2019年以降になると顕著な回復が見られ、2022年には535,715トンと過去最大の生産量を記録しました。この回復の理由として、新たな灌漑技術の導入や国際援助の増加、農業従事者の復帰、そして気象条件の改善が挙げられます。特にこの成果では、地元コミュニティと国際機関が協力し合い、農業基盤を再建した取り組みが重要な役割を果たしました。
現在、シリアのトウモロコシ生産が拡大している一方で、将来にはいくつかの課題が残っています。一つは気候変動の影響です。水資源のさらなる不足や干ばつの頻発が予測される中、農業への影響を最小限に抑えるためには、より効率的な灌漑システムと水管理技術が必要です。また、内戦によって損なわれた農業インフラや物流ネットワークのさらなる修復と強化も不可欠です。
さらに、地政学的なリスクにも注意が必要です。近隣諸国との国境地帯における緊張が農業活動に影響を与える可能性があるため、政治的安定の確保が優先されるべきです。他国との比較では、新しい農業技術の導入が進んでいるアメリカやインド、中国に比べて、シリアの生産性はまだ遅れを取っています。これに対抗するためには、国際的な協力を通じて技術移転を促進し、効率化を図るべきです。
国や国際機関が取るべき具体的な対策としては、持続可能な農業技術の導入、地元農家への実践的な教育プログラムの提供、さらには環境保護と農業育成を同時に進める政策があります。また、国際市場と連携した農産物輸出の強化も、長期的な経済的安定に寄与するでしょう。
全体として、トウモロコシ生産量の推移は、シリアの歴史的、社会的、環境的な変動を映し出しています。今後も様々な課題に対応しながら、持続的な増産と地域の安定につなげる努力が必要です。