国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、シリア・アラブ共和国のオート麦生産量は1961年の2,641トンから2023年の39トンまで激しく推移しており、特に1990年代以降、減少が顕著です。紛争や気候変動が影響を及ぼしたと考えられ、近年の生産量はほぼ低調な水準にとどまっています。
シリア・アラブ共和国のオート麦生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 39 |
1200% ↑
|
2022年 | 3 |
-91.43% ↓
|
2020年 | 35 |
105.88% ↑
|
2019年 | 17 |
-63.83% ↓
|
2016年 | 47 |
-41.25% ↓
|
2015年 | 80 |
700% ↑
|
2014年 | 10 |
-78.26% ↓
|
2013年 | 46 |
-94.58% ↓
|
2012年 | 848 |
-30.09% ↓
|
2011年 | 1,213 |
1190.43% ↑
|
2010年 | 94 |
487.5% ↑
|
2009年 | 16 |
33.33% ↑
|
2008年 | 12 |
50% ↑
|
2007年 | 8 |
700% ↑
|
2006年 | 1 | - |
2003年 | 1 |
-80% ↓
|
2002年 | 5 |
-93.98% ↓
|
2001年 | 83 |
-31.4% ↓
|
2000年 | 121 |
-8.33% ↓
|
1999年 | 132 |
-66.41% ↓
|
1998年 | 393 |
-68.74% ↓
|
1997年 | 1,257 |
889.76% ↑
|
1996年 | 127 |
154% ↑
|
1995年 | 50 |
-75% ↓
|
1994年 | 200 |
100% ↑
|
1993年 | 100 | - |
1992年 | 100 |
-73.4% ↓
|
1991年 | 376 |
-4.81% ↓
|
1990年 | 395 |
-43.57% ↓
|
1989年 | 700 |
-10.6% ↓
|
1988年 | 783 |
11.86% ↑
|
1987年 | 700 | - |
1986年 | 700 |
-30% ↓
|
1985年 | 1,000 |
-42.16% ↓
|
1984年 | 1,729 |
51.67% ↑
|
1983年 | 1,140 |
8.06% ↑
|
1982年 | 1,055 |
-25.23% ↓
|
1981年 | 1,411 |
-12.25% ↓
|
1980年 | 1,608 |
-15.72% ↓
|
1979年 | 1,908 |
29.01% ↑
|
1978年 | 1,479 |
-8.98% ↓
|
1977年 | 1,625 |
-8.09% ↓
|
1976年 | 1,768 |
-31.1% ↓
|
1975年 | 2,566 |
13.19% ↑
|
1974年 | 2,267 |
8.31% ↑
|
1973年 | 2,093 |
-13.76% ↓
|
1972年 | 2,427 |
32.33% ↑
|
1971年 | 1,834 |
-9.07% ↓
|
1970年 | 2,017 |
-11.03% ↓
|
1969年 | 2,267 |
-12.54% ↓
|
1968年 | 2,592 |
12.7% ↑
|
1967年 | 2,300 |
4.55% ↑
|
1966年 | 2,200 |
-24.86% ↓
|
1965年 | 2,928 |
31.01% ↑
|
1964年 | 2,235 |
32.56% ↑
|
1963年 | 1,686 |
-36.16% ↓
|
1962年 | 2,641 | - |
1961年 | 2,641 | - |
シリアのオート麦生産量の歴史的な推移を見ると、1960年代から1970年代にかけては2,000トン前後で安定していましたが、1980年代に生産量が徐々に減少し、1990年代に入ると著しい低迷を見せ始めました。この背景には、農業技術の停滞、インフラ整備の遅れ、乾燥した気候の影響などがあると考えられます。また、1990年代後半に入るとさらに減少し、1992年には100トン、1995年には50トンと極端に低い水準まで落ち込みました。2000年代初頭には、2002年に5トン、2003年には1トンと、ほとんど生産が確認できない年もありました。
この動きには、シリアの地政学的なリスクや気候条件の影響が大きく関与しています。特に2011年以降の内戦が農業に深刻な影響を及ぼし、農地の荒廃、生産資材の不足、物流の遮断などで生産条件が悪化しました。これにより、2013年や2014年には、それぞれ46トンと10トンと、ほぼ生産が途絶えたとも言える数値を記録しました。2023年の39トンという数値は、過去と比べると若干の改善を示しているものの、依然として極めて脆弱な状態であることに変わりありません。
また、シリアの農業が直面する課題として、水資源の不足が重要な要因の一つです。北東部のユーフラテス川流域は伝統的に農業の中心地域ですが、近年の乾燥化に加え、隣国トルコによる上流でのダム建設により水量が減少し、灌漑に必要な水が得られない状況が深刻化しています。このような外部要因に加え、国内のインフラ崩壊や農地の荒廃が状況をさらに悪化させています。
さらに、オート麦はシリアでは主に動物飼料として利用されるため、この低い生産量は家畜の飼育にも影響を与えている可能性があります。動物飼料の供給不足は、牧畜業への悪影響を通じて食料供給全体に波及し、農家経済にも打撃を与える要因となっています。
将来的な対策としては、まず水資源管理の強化、特に隣国との協調によるユーフラテス川水量確保が不可欠です。また、国際的な援助を活用して農業機械や灌漑設備を整備し、農家の労働環境を改善する必要があります。さらに、気候変動への適応能力を高めるために、耐乾燥性の高いオート麦品種の導入や研究開発を推進することも重要です。
シリアのオート麦生産量は低迷しているものの、その改善には国際社会の支援や地域の安定化が大前提となります。具体的な課題に適切に対処することで、持続可能な農業発展の道筋をつけることが求められています。この問題に関する現地および国際的な連携は、シリアの食料安全保障や経済の回復にも直結するため、引き続き注視すべき課題です。