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シリア・アラブ共和国のブドウ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによると、シリア・アラブ共和国におけるブドウ生産量は1961年には約24万トンからスタートし、1980年代後半から1990年代にかけて一時的に顕著な成長を遂げ、1988年には過去最大の57万トンに到達しました。しかし、2000年代以降は、紆余曲折を経て減少傾向となり、2011年以降の内戦を背景として急激な低下が確認され、2015年には約18万トンと最低値を記録しています。その後、生産量は若干の回復を見せるものの、2023年時点で約23万トンと長期的な減少トレンドは抑えられていません。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 233,749
2.26% ↑
2022年 228,590
7.57% ↑
2021年 212,507
-12.67% ↓
2020年 243,347
-3.44% ↓
2019年 252,006
12.81% ↑
2018年 223,383
-6.67% ↓
2017年 239,337
12.45% ↑
2016年 212,834
17.15% ↑
2015年 181,682
-7.27% ↓
2014年 195,930
-36.12% ↓
2013年 306,736
-15.38% ↓
2012年 362,501
7.26% ↑
2011年 337,961
3.77% ↑
2010年 325,697
-9.02% ↓
2009年 358,000
27.45% ↑
2008年 280,900
2.88% ↑
2007年 273,028
-18.92% ↓
2006年 336,750
9.91% ↑
2005年 306,377
26.24% ↑
2004年 242,700
-21.03% ↓
2003年 307,343
-10.1% ↓
2002年 341,886
-12.11% ↓
2001年 388,989
-5% ↓
2000年 409,450
5.8% ↑
1999年 386,986
-34.41% ↓
1998年 590,000
30.61% ↑
1997年 451,720
-16.36% ↓
1996年 540,059
40.65% ↑
1995年 383,980
5.95% ↑
1994年 362,411
2.39% ↑
1993年 353,953
-23.46% ↓
1992年 462,413
-5.07% ↓
1991年 487,100
15.13% ↑
1990年 423,100
4.01% ↑
1989年 406,800
-28.72% ↓
1988年 570,681
31.9% ↑
1987年 432,664
-13.55% ↓
1986年 500,500
2.9% ↑
1985年 486,417
21.56% ↑
1984年 400,155
2.91% ↑
1983年 388,837
-8.08% ↓
1982年 422,999
3.32% ↑
1981年 409,413
15.1% ↑
1980年 355,704
23.97% ↑
1979年 286,922
-17.02% ↓
1978年 345,776
-2.04% ↓
1977年 352,981
10.51% ↑
1976年 319,417
13.65% ↑
1975年 281,044
12.6% ↑
1974年 249,598
69.74% ↑
1973年 147,049
-29.14% ↓
1972年 207,515
-0.65% ↓
1971年 208,864
1.11% ↑
1970年 206,574
-16.78% ↓
1969年 248,234
16.78% ↑
1968年 212,571
-0.45% ↓
1967年 213,526
5.71% ↑
1966年 202,000
-1.79% ↓
1965年 205,674
-10.68% ↓
1964年 230,278
44.64% ↑
1963年 159,210
-37.54% ↓
1962年 254,903
4.97% ↑
1961年 242,826 -

シリア・アラブ共和国は、中東地域特有の乾燥気候を活かし、長きにわたりブドウの生産地として知られてきました。FAOが発表した最新のデータに基づき、1961年から2023年にわたるブドウ生産量の推移を分析すると、歴史的な流れとして成長期、停滞期、低迷期が存在することが明確に読み取れます。

1961年から1988年の間では、大部分の期間において緩やかな増加が観察されました。これは、農業技術の進展や内陸部を中心とした農業従事者への支援政策がその背景にある可能性があります。特に1988年に記録された57万トンは、当時の国内農業生産力のピークを示しており、食料輸出品目としても重要な役割を担っていたと推定されます。

しかしながら、2000年代以降には急激な減少の兆しが見られ、特に2011年以降の内戦の影響が生産量に与えた打撃は甚大でした。内戦に伴い農村地域の経済活動が停滞し、灌漑インフラの破壊、土地利用の変化、農業労働力の流出など、多面的な影響がブドウ生産の縮小につながっていると考えられます。2015年の18万トンという数値は、これを如実に物語っています。

2020年以降のデータをみると、内戦が一定程度収束に向かいつつあるものの、持続的な回復傾向には至っていません。2023年時点では約23万トンと1960年代の水準に逆戻りしており、国内における産業復興の遅れが課題として浮き彫りになっています。さらに、干ばつや気候変動に伴う水資源不足も、農業全般の競争力低下に拍車をかけているため、これらの問題を包括的に解決する政策が求められます。

参考として、同地域の近隣諸国との比較を行うと、トルコやイランなどは同様の気候的制約の中でもブドウの生産量を安定的に維持しています。これらの国々では、現代農法の導入や政府による農業補助金の拡大、灌漑技術の近代化が進められており、シリアにおいてもこれと同様の施策が実行可能性を高めるための鍵となるでしょう。

未来を見据えると、シリアがブドウ生産を持続可能に再興するためには、いくつかの課題を克服する必要があります。第一に、灌漑インフラや農業機械の復旧が急務です。特に、地下水資源の効率的な利用や、雨水集水システムの開発が重要です。第二に、農業への若年層の参画を促進するため、教育プログラムや資格訓練を提供することも魅力的な職場環境づくりの一環として検討すべきです。第三に、内外の市場との連携を強化し、輸出戦略を積極的に展開することで、需要を掘り起こすことも長期的な収益性に資するでしょう。

地政学的リスクは依然として高水準にあるため、安定的な政策運営が大前提となります。この課題を踏まえ、国際機関や地域的な協力の枠組みを活用しながら、持続可能な農業を構築するための支援策を図ることが必要です。向こう10年間を見越した取り組みが、かつての繁栄を取り戻す鍵になると考えられます。

最後に、シリアのブドウ生産量の持続可能性は、単なる産業の回復のみにとどまらず、地域全体の食料安全保障と経済安定にも寄与すると期待されます。したがって、国家独自の取り組みだけではなく、国際的な協調を基盤とした支援が必要不可欠であると言えるでしょう。