Skip to main content

シリア・アラブ共和国のアーモンド生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによると、シリア・アラブ共和国のアーモンド生産量は、過去数十年にわたって大きく変動してきました。1960年代には年間生産量が1,000~5,000トン程度にとどまっていましたが、1980年代以降、生産量は急激に増加し、一部の年では20万トンを超える記録を残しました。しかし近年は再び変動が激しくなり、特に2011年以降はシリア内戦の影響も見られ、年によって大幅な減少が確認されています。2023年には135,433トンと回復の兆しを見せていますが、2022年の急激な減少(31,617トン)が示すように、生産量の安定性は依然として課題となっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 135,433
328.35% ↑
2022年 31,617
-63.98% ↓
2021年 87,768
-28.65% ↓
2020年 123,017
53.28% ↑
2019年 80,258
-18.48% ↓
2018年 98,446
93.51% ↑
2017年 50,875
-8.27% ↓
2016年 55,459
7.3% ↑
2015年 51,686
48.83% ↑
2014年 34,729
-58.27% ↓
2013年 83,229
-3.53% ↓
2012年 86,271
-33.79% ↓
2011年 130,296
78.23% ↑
2010年 73,104
-24.64% ↓
2009年 97,002
17.41% ↑
2008年 82,616
8.57% ↑
2007年 76,093
-28.96% ↓
2006年 107,117
-53.23% ↓
2005年 229,035
86.21% ↑
2004年 123,000
-12.33% ↓
2003年 140,300
0.93% ↑
2002年 139,010
180.9% ↑
2001年 49,487
-20.55% ↓
2000年 62,288
7.96% ↑
1999年 57,697
-14.08% ↓
1998年 67,150
154.93% ↑
1997年 26,341
-52.11% ↓
1996年 55,000
63.39% ↑
1995年 33,662
20.72% ↑
1994年 27,885
1.03% ↑
1993年 27,600
-10.39% ↓
1992年 30,800
-2.22% ↓
1991年 31,500
152% ↑
1990年 12,500
-66.49% ↓
1989年 37,300
63.6% ↑
1988年 22,800
50.98% ↑
1987年 15,101
-71.61% ↓
1986年 53,200
57.26% ↑
1985年 33,829
16.25% ↑
1984年 29,100
6.99% ↑
1983年 27,200
210.11% ↑
1982年 8,771
6.66% ↑
1981年 8,223
-23.08% ↓
1980年 10,691
-3.06% ↓
1979年 11,029
-6.16% ↓
1978年 11,753
-24.33% ↓
1977年 15,532
112.01% ↑
1976年 7,326
1.89% ↑
1975年 7,190
11.77% ↑
1974年 6,433
-20.66% ↓
1973年 8,108
4.04% ↑
1972年 7,793
79.73% ↑
1971年 4,336
-8.27% ↓
1970年 4,727
95.25% ↑
1969年 2,421
-19.08% ↓
1968年 2,992
19.68% ↑
1967年 2,500
-34.21% ↓
1966年 3,800
216.67% ↑
1965年 1,200
-42.86% ↓
1964年 2,100
5% ↑
1963年 2,000
-16.67% ↓
1962年 2,400
41.18% ↑
1961年 1,700 -

シリアのアーモンド生産量推移を分析すると、いくつかの特徴や地域特有の背景が浮かび上がります。まず、1960年代には生産が1,000~5,000トンの範囲で小規模に推移していました。当時シリアは農業開発が限定的だった背景があり、特に灌漑施設の整備不足や技術的な制約が主要因と考えられます。しかし、1980年代にかけて農業生産の向上を目指した国内政策や国際的な技術支援を受け、アーモンドの生産量は大幅に成長しました。特に1986年には53,200トン、1996年には55,000トン、2005年には229,035トンというピークを迎えています。この成長の一因には、アーモンドがシリア北西部の地中海性気候に適していたことが挙げられます。

一方で、シリアのアーモンド生産量は一定の成長を続けた一方で、周期的な変動を繰り返している点も目立ちます。この変動は、気候条件の影響だけでなく、政治的・社会的な要因や地域的な灌漑インフラの脆弱性が背景にあると見られます。例えば、2011年以降、シリア内戦が始まり、農地の荒廃や労働力不足、物流網の破壊など、戦争に伴う深刻な影響がアーモンド生産にも及びました。この時期には2014年の34,729トンや2022年の31,617トンといったように、近年の中で最低水準の生産量が記録されています。

それにもかかわらず、2023年には135,433トンという数値まで回復しており、これは地域の一部で復興努力が進行していることを示唆している可能性があります。ただし、この回復傾向は全土的なものではなく、依然として生産量が不安定であることから、シリア全体の農業セクターの再建が必要です。

シリアが抱える課題は主に以下の三つに集約されます。一つ目としては、十分に整備されていない灌漑システムの問題です。降雨量に依存するアーモンド生産は、干ばつや集中豪雨に大きく左右され、生産量の安定性を損なっています。第二に、内戦の影響で一部の農業地域が未だに被害を受けていることです。特に土地の管理能力が低下し、更なる技術的支援が必要です。三つ目に、輸送や流通のインフラも破壊されているため、国内外への流通が停滞し、農家の収入源が不安定になるという懸念があります。

今後の具体的な対策としては、まず農業インフラの重点的な再建が挙げられます。特に、灌漑システムを現代化し、雨水を貯めて効率よく配分する仕組みを導入することが急務です。また、国際社会からの支援や農業技術研修プログラムを活用し、農家がより効率的・持続可能な生産方式を学べる環境作りが必要です。更に、国内市場の安定化と輸出の強化を目指して、農産物の流通網を回復させるための政策も重要です。これには道路や物流拠点の修復、アーモンド生産における協同組合の立ち上げなどが含まれます。

加えて、地政学的な観点では、シリアが資源の争奪や地域紛争に巻き込まれないよう国土安全保障を確保しつつ、周辺諸国との協調的な農業開発プロジェクトを模索することが推奨されます。特に、トルコやイラクなどの近隣諸国と協力関係を強化し、水資源や農業技術を共同で活用することは、持続可能な生産を実現する鍵となるでしょう。

シリアのアーモンド産業は、多くの課題を抱えつつも、依然として潜在力を秘めています。この産業を安定化させるための取り組みは、国の全体的な経済復興にも貢献する可能性があります。そのためには、国内外の資本や技術、そして政策的支援が組み合わさった包括的なアプローチが必要不可欠です。

キーワード検索
楽天おすすめ