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シリア・アラブ共和国の牛乳生産量推移(1961年~2022年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年の最新データによると、シリア・アラブ共和国の牛乳生産量は、1961年の342,000トンから2007年のピークの2,679,598トンへと一貫して増加傾向を見せ、その後、内戦の影響もあり減少期に入りました。2022年には2,029,839トンと、ピーク時に比べて約25%の減少が見られます。近年は、2020年以降に若干の回復基調が見受けられますが、依然として安定した成長には至っていません。この推移は、地域の政治的不安や経済的危機と密接に関連していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2022年 2,029,839
-1.01% ↓
2021年 2,050,599
-4.79% ↓
2020年 2,153,745
20.65% ↑
2019年 1,785,102
0.72% ↑
2018年 1,772,270
-5.42% ↓
2017年 1,873,800
-11.23% ↓
2016年 2,110,855
-1.53% ↓
2015年 2,143,660
-7.25% ↓
2014年 2,311,133
-2.22% ↓
2013年 2,363,525
-3.62% ↓
2012年 2,452,249
-4.15% ↓
2011年 2,558,369
14.1% ↑
2010年 2,242,308
-6.93% ↓
2009年 2,409,287
-0.63% ↓
2008年 2,424,678
-9.51% ↓
2007年 2,679,598
5.71% ↑
2006年 2,534,885
7.52% ↑
2005年 2,357,530
10.77% ↑
2004年 2,128,394
13.47% ↑
2003年 1,875,754
6.16% ↑
2002年 1,766,909
11.99% ↑
2001年 1,577,780
-5.7% ↓
2000年 1,673,204
1.03% ↑
1999年 1,656,085
-6.97% ↓
1998年 1,780,166
10.57% ↑
1997年 1,610,060
6.74% ↑
1996年 1,508,417
6.68% ↑
1995年 1,414,020
15.27% ↑
1994年 1,226,697
-1.38% ↓
1993年 1,243,831
-7.92% ↓
1992年 1,350,817
-1.42% ↓
1991年 1,370,255
2.92% ↑
1990年 1,331,373
4.28% ↑
1989年 1,276,718
-3.06% ↓
1988年 1,316,981
18.85% ↑
1987年 1,108,150
0.02% ↑
1986年 1,107,897
-0.68% ↓
1985年 1,115,507
10.87% ↑
1984年 1,006,122
-13.35% ↓
1983年 1,161,071
2.55% ↑
1982年 1,132,210
3.17% ↑
1981年 1,097,410
20.9% ↑
1980年 907,732
8.21% ↑
1979年 838,850
5.89% ↑
1978年 792,204
22.55% ↑
1977年 646,415
-2.75% ↓
1976年 664,703
17.28% ↑
1975年 566,756
13.39% ↑
1974年 499,820
27.03% ↑
1973年 393,467
-14.16% ↓
1972年 458,377
3.84% ↑
1971年 441,413
-1.92% ↓
1970年 450,055
-13.97% ↓
1969年 523,157
-4.5% ↓
1968年 547,817
5.59% ↑
1967年 518,824
-14.26% ↓
1966年 605,135
1.19% ↑
1965年 598,000
10.87% ↑
1964年 539,352
0.11% ↑
1963年 538,782
41.78% ↑
1962年 380,000
11.11% ↑
1961年 342,000 -

シリア・アラブ共和国の牛乳生産量の推移データは、国の農業産業と経済状況を示す重要な指標のひとつです。このデータによれば、シリアの牛乳生産量は1960年代から1980年代にかけて着実に増加しており、1980年以降は急速な成長を遂げました。この背景には、農業技術の向上や家畜管理の改革、農場の集約化といった国内政策の進展が挙げられます。1990年代以降も増加傾向は維持されましたが、これには政府の農業支援策や地方の農業振興プログラムの影響が大きいと考えられます。

しかし、2007年をピークに減少に転じる傾向が見られました。この減少の主因は、農地の乾燥化や増加する水不足、そして2011年以降の内戦による社会的・経済的混乱にあります。特に、内戦によって家畜を維持するために必要な資源(飼料、水、医療サービス)が不足したことが、生産量の顕著な減少につながりました。2018年に1,772,270トンまで落ち込んだことからも、この影響が深刻であったことがうかがえます。

一方で、2020年以降には生産量の回復が見られます。具体的には、2020年には2,153,745トンまで増加しましたが、この回復は主に一部地域の安定化や国際援助による再建プロジェクトが寄与したものと考えられます。ただし、この回復ペースは遅く、2022年の生産量は2,029,839トンと依然としてピーク時の水準には程遠い状況です。

シリア国内でのこれらの変動の背景には、地政学的な課題が影響を及ぼしている点も見逃せません。内戦による政治的不安定の影響で農業供給チェーンが麻痺し、さらに干ばつや気候変動がこの国の農業基盤に大打撃を与えています。加えて、国際制裁や輸出入の停滞が、関連産業全体に負の影響をもたらしている点も指摘できます。

このような課題を克服するためには、いくつかの具体的な対策が求められます。まず、短期的には国際援助を活用し、農村地帯のインフラ(例えば灌漑システム)を強化することが重要です。さらに、効果的な家畜管理プログラムの再導入や、地域での農業協同組合の発展を支援して、生産者がリソースを共有できる環境を整える必要があります。中長期的には、持続可能な農業技術を普及させることで、気候変動への適応力を高めることが重要です。

また、国際的な視点から見ると、シリアの牛乳生産量は依然として近隣諸国であるトルコやイランに比べて増加余地が大きいと考えられます。たとえば、トルコでは同時期において牛乳の年間生産量が全国で約2,000万トン以上に達しています。この差は農業技術やインフラの違いを反映しており、シリアが国際的な支援を基にそれらを改善することで競争力を向上させる可能性が示唆されています。

結論として、シリアの牛乳生産量の推移は、国内外のさまざまな要因が複雑に絡み合った結果だと言えます。政府はこれを国家再建のひとつの柱として捉えるべきであり、国際社会もこれに対し協調的な支援を提供する必要があります。その結果、この国特有の問題が改善に向かえば、農業を基盤とした持続可能な発展に寄与することが期待されます。