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シリア・アラブ共和国のテンサイ(甜菜)生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、1961年から始まるシリア・アラブ共和国のテンサイ(甜菜)生産量は、1970年代から1980年代において急激な増加を示し、1990年代には一度安定期を迎えました。しかし、2011年以降のシリア内戦を背景に、生産量は著しく低下し、2018年には5,058トンまで減少しました。その後、2022年には60,461トンまで一時的に回復しましたが、2023年には再び33,898トンに落ち込み、生産の安定化にはまだ課題が残る状況が続いています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 33,898
-43.93% ↓
2022年 60,461
227.67% ↑
2019年 18,452
264.81% ↑
2018年 5,058
-71.64% ↓
2017年 17,838
67.41% ↑
2016年 10,655
-63.58% ↓
2015年 29,258
-55.2% ↓
2014年 65,310
-79.39% ↓
2013年 316,855
-69.18% ↓
2012年 1,027,942
-43.06% ↓
2011年 1,805,184
20.91% ↑
2010年 1,493,031
103.77% ↑
2009年 732,706
-33.69% ↓
2008年 1,104,900
-19.14% ↓
2007年 1,366,450
-4.97% ↓
2006年 1,437,900
31.15% ↑
2005年 1,096,400
-9.96% ↓
2004年 1,217,658
1.03% ↑
2003年 1,205,200
-20.85% ↓
2002年 1,522,702
25.28% ↑
2001年 1,215,480
3.42% ↑
2000年 1,175,326
-11.66% ↓
1999年 1,330,387
10.66% ↑
1998年 1,202,200
6.73% ↑
1997年 1,126,391
15.63% ↑
1996年 974,153
-30.72% ↓
1995年 1,406,086
-3.16% ↓
1994年 1,451,900
17.4% ↑
1993年 1,236,758
-9.39% ↓
1992年 1,364,915
109.17% ↑
1991年 652,554
54.71% ↑
1990年 421,800
2.48% ↑
1989年 411,600
85.32% ↑
1988年 222,100
-51.44% ↓
1987年 457,400
3.95% ↑
1986年 440,000
6.74% ↑
1985年 412,200
-67.5% ↓
1984年 1,268,200
9.54% ↑
1983年 1,157,700
34.56% ↑
1982年 860,331
52.54% ↑
1981年 564,000
11.93% ↑
1980年 503,900
74.46% ↑
1979年 288,833
24.53% ↑
1978年 231,938
-15.14% ↓
1977年 273,309
12.79% ↑
1976年 242,314
29.32% ↑
1975年 187,376
34.9% ↑
1974年 138,900
-8.89% ↓
1973年 152,448
-38.76% ↓
1972年 248,947
7.2% ↑
1971年 232,222
2.06% ↑
1970年 227,541
20.56% ↑
1969年 188,738
13.67% ↑
1968年 166,040
7.54% ↑
1967年 154,400
-18.35% ↓
1966年 189,100
10.33% ↑
1965年 171,400
0.05% ↑
1964年 171,314
97.14% ↑
1963年 86,899
7.23% ↑
1962年 81,042
-5.51% ↓
1961年 85,772 -

シリア・アラブ共和国におけるテンサイ(甜菜)生産量の推移は、同国の農業政策、灌漑設備の整備、水資源の利用状況、さらには政治的・物理的な安定状況などと深く関連しています。歴史的に見ると、1960年代の時点では年間10万トン未満の生産量にとどまっていましたが、1970年代以降に生産量が急速に増加しました。特筆すべきは1982年から1984年の間に約860,000トンから1,268,200トンにまで急激に伸びた点で、これは農業技術の導入や設備投資が進んだことが背景と考えられます。

1990年代にはさらなる上昇を見せ、特に1992年には1,364,915トンというピークを迎えました。この時期の安定した生産は、灌漑システムの近代化や市場需要の高まりによるものといえます。しかし、こうしたプラスの傾向は、2000年代以降は減速し始めました。干ばつや水資源の不足といった自然要因に加えて、政治的な混乱と経済制裁による農業関連資材の入手困難が影響を及ぼしました。

さらに厳しい状況を引き起こしたのが2011年に勃発した内戦です。この紛争は農業基盤だけでなく国全体のインフラストラクチャーを破壊し、生産量は急激な縮小を余儀なくされました。2014年にはわずか65,310トンへと落ち込み、その後2018年には5,058トンという歴史的低水準を記録しました。この数字は、2010年の1,493,031トンと比較すると、99%以上の減少に相当します。

近年では一部地域の安定化や国際支援を受けた再建プログラムの影響で2022年には60,461トンまで回復を見せました。しかしながら、2023年には33,898トンへと再び減少し、持続的回復の達成には至っていません。これには不十分な灌漑設備、テンサイ栽培への投資不足、さらには依然として影響を及ぼしている内戦の余波が挙げられます。

他国と比較すると、同時期に安定したテンサイ生産を維持している日本、フランス、アメリカなどの状況と明らかに異なります。例えば、フランスでは年間約3,000万トンの生産量を維持しており、その主な要因は強力な農業支援政策と効率的な水資源管理です。また、他国ではディーゼル燃料や肥料の安定確保が確実に行われている一方で、シリアはこれら資材の供給で著しいハンデを負っています。

今後の課題として、まず挙げられるのは灌漑システムの全面的な再構築です。シリアは水不足が深刻な地域に位置しており、効率的な水資源管理が必要不可欠です。また、内戦で失われた農業人材の育成や、農機具や種子といった基本的な資材を確保する仕組みを構築することも不可欠です。さらに、国際的な支援を受けながらテンサイ生産の再活性化を目指した長期的な農業政策が重要です。例えば、地域間協力を通じた種苗技術の共有や、水管理技術の導入がその一助となる可能性があります。

最後に、地政学的なリスクを踏まえた政策設計も欠かせません。シリアは依然として国土の一部で紛争が続いており、この不安定な状況は生産基盤を再構築する上で大きな障害となります。国連や近隣諸国の協力による地域の安定化が進めば、農業インフラ再建の取り組みもより実効性のあるものとなるでしょう。テンサイ生産の安定は、地域の食料自給率を確保し、輸出を通じた外貨獲得にもつながるため、シリア農業の再生に向けた重要なステップとなります。