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シリア・アラブ共和国のオリーブ油生産量推移(1961年~2021年)

FAO(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、シリア・アラブ共和国におけるオリーブ油生産量は、1960年代以降、大きな変動を繰り返しながら増加傾向を見せました。特に2006年には252,353トンと過去最高記録を達成しましたが、それ以降の経済的、社会的、地政学的な要因の影響で生産量は減少に転じ、2021年には103,893トンとなりピーク時から大幅に低下しました。この推移は、シリアのオリーブ油生産が国内外の状況に大きく左右されていることを示しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2021年 103,893
-24.83% ↓
2020年 138,217
-10.15% ↓
2019年 153,829
30.05% ↑
2018年 118,281
-28.03% ↓
2017年 164,339
40.78% ↑
2016年 116,735
-29.05% ↓
2015年 164,529
151.52% ↑
2014年 65,414
-59.01% ↓
2013年 159,595
-17.66% ↓
2012年 193,829
-6.96% ↓
2011年 208,329
6.84% ↑
2010年 194,995
15.96% ↑
2009年 168,163
7.56% ↑
2008年 156,338
59.05% ↑
2007年 98,294
-61.05% ↓
2006年 252,353
104.93% ↑
2005年 123,143
-39.03% ↓
2004年 201,964
94.3% ↑
2003年 103,947
-46.58% ↓
2002年 194,599
104.02% ↑
2001年 95,384
-42.32% ↓
2000年 165,354
106.42% ↑
1999年 80,104
-44.69% ↓
1998年 144,820
88.26% ↑
1997年 76,924
-39.24% ↓
1996年 126,613
49.22% ↑
1995年 84,852
-15.06% ↓
1994年 99,895
66.11% ↑
1993年 60,139
-41.61% ↓
1992年 103,000
164.1% ↑
1991年 39,000
-54.65% ↓
1990年 86,000
309.52% ↑
1989年 21,000
-75.58% ↓
1988年 86,000
168.75% ↑
1987年 32,000
-55.56% ↓
1986年 72,000
105.71% ↑
1985年 35,000
-31.37% ↓
1984年 51,000
87.06% ↑
1983年 27,264
-71.25% ↓
1982年 94,838
113.02% ↑
1981年 44,520
-46.61% ↓
1980年 83,385
106.26% ↑
1979年 40,428
-41.89% ↓
1978年 69,573
82.82% ↑
1977年 38,056
-31.92% ↓
1976年 55,898
68.14% ↑
1975年 33,244
-25.15% ↓
1974年 44,412
223.82% ↑
1973年 13,715
-58.93% ↓
1972年 33,394
50.11% ↑
1971年 22,247
43.58% ↑
1970年 15,495
-39.59% ↓
1969年 25,648
14.28% ↑
1968年 22,444
-7.08% ↓
1967年 24,155
-1.89% ↓
1966年 24,620
81.06% ↑
1965年 13,598
-46.7% ↓
1964年 25,512
69.03% ↑
1963年 15,093
-26.18% ↓
1962年 20,447
13.59% ↑
1961年 18,000 -

シリア・アラブ共和国は地中海地域に位置し、オリーブの栽培に適した気候条件を持つ国として知られています。オリーブ油は国内の農業経済の重要な柱であり、輸出品目としてもシリア経済に欠かせない存在でした。特に2000年代初頭には、農業技術の向上や栽培面積の拡大の結果、生産量が大幅に増加し、2006年には252,353トンという圧倒的な生産量を記録しました。しかし、それ以降は紛争や経済制裁、そして気候変動の影響により、生産量は大幅に減少しています。

データは生産量における大きな変動を明確に示しています。たとえば、2004年から2006年にかけては急激な増加が見られますが、それ以降は安定性を欠き、2014年には65,414トンと大幅に落ち込んでいます。この影響の背景には、シリア内戦が挙げられます。内戦によって農地が荒廃し、農業従事者が減少したことに加え、インフラや輸送網の破壊が経済活動全体に深刻な影響を与えました。さらに、長期間続いた不安定な治安状況が、オリーブの栽培および収穫に必要な長期間の投資を困難にしています。

また、気候変動が近年の生産量低下の一因として挙げられます。地中海地域全体では異常気象や乾燥化が進んでおり、オリーブの成熟に必要な安定した降雨量が確保できていないことが懸念されています。特に、2014年の大きな下降においては天候条件の悪化も影響要因の一つとされています。

さらに、国際的な視点で見ると、シリアのオリーブ油生産量は、一時的に地中海地域の主要生産国であるスペインやイタリア、ギリシャなどに匹敵する伸びを見せたものの、近年ではその差が大きく開いています。たとえば、スペインは現在年間1,000,000トン以上の生産能力を持つとされ、シリアの近年の生産量はその10分の1以下にとどまっています。同じ中東地域に位置するトルコやチュニジアと比較しても、安定した大規模生産には至っていません。

将来的には、いくつかの課題に対処する必要があります。まず、紛争後の目に見える復興努力が不可欠です。具体的には、荒廃した農地の再生、農業インフラの再整備、従事者への教育支援が優先事項といえます。また、乾燥化が進む地域でも生育可能な耐乾性品種の採用や、地下水資源の効率的な利用を促進する技術の導入が求められます。さらに、国際市場への輸出強化のために品質管理やブランド戦略の構築も重要です。これにより、戦争による経済的な損失を回復し、安定した外貨収入が見込める可能性が高まります。

国際機関や周辺諸国との協力も重要な役割を果たします。特に、国連機関やNGOによる農業復興支援プログラムは重要であり、これらが成功することで、国内農産業の基盤が再構築されるでしょう。また、地域的な自由貿易協定におけるオリーブ油輸出のメリットを享受できるよう、法的および制度的な改正も検討する必要があります。

最後に、シリアのオリーブ油の生産・輸出状況が安定しない限り、国内の農村部の収入格差が拡大し続けるリスクが高いと言えます。この課題に正面から向き合い、長期的な見通しのもとで内政と経済体制を強化することで、再び地中海地域での競争力を取り戻すことができるはずです。この方向性に進めるか否かは、シリア政府と国際社会の取り組みにかかっていると言えるでしょう。