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シリア・アラブ共和国の馬飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、シリア・アラブ共和国の馬飼養数は、1960年代から近年に至るまで長期的な減少傾向を示しています。1961年には65,520頭だった飼養数が、2022年には10,044頭まで減少しました。この減少には、地政学的な要因や紛争、経済状況の悪化が大きく影響していると考えられます。一方で、近年のデータではわずかな回復の兆しも見られます。

年度 飼養数(頭) 増減率
2023年 8,315
-17.21% ↓
2022年 10,044
6.17% ↑
2021年 9,460
-8.4% ↓
2020年 10,327
-19.05% ↓
2019年 12,757
-13.19% ↓
2018年 14,696
1.24% ↑
2017年 14,516
-3.18% ↓
2016年 14,993
-5.07% ↓
2015年 15,794
-4.1% ↓
2014年 16,469
9.1% ↑
2013年 15,095
-3.72% ↓
2012年 15,678
3.27% ↑
2011年 15,181
7.17% ↑
2010年 14,165
-3.63% ↓
2009年 14,699
-3.95% ↓
2008年 15,303
9.31% ↑
2007年 14,000
0.72% ↑
2006年 13,900
-7.33% ↓
2005年 15,000 -
2004年 15,000 -
2003年 15,000
-10.71% ↓
2002年 16,800
-8.7% ↓
2001年 18,400
-32.15% ↓
2000年 27,120
2.05% ↑
1999年 26,576
3.66% ↑
1998年 25,638
-6.73% ↓
1997年 27,488
-2.54% ↓
1996年 28,203
4.46% ↑
1995年 27,000
0.19% ↑
1994年 26,948
-0.19% ↓
1993年 27,000
-26.52% ↓
1992年 36,747
-5.78% ↓
1991年 39,000
-4.88% ↓
1990年 41,000
-4.65% ↓
1989年 43,000
7.5% ↑
1988年 40,000
-2.44% ↓
1987年 41,000
-1.71% ↓
1986年 41,714
-6.64% ↓
1985年 44,680
-2.87% ↓
1984年 46,000
-8% ↓
1983年 50,000
-8.29% ↓
1982年 54,519
0.96% ↑
1981年 54,000
2.24% ↑
1980年 52,818
4.59% ↑
1979年 50,500
-0.41% ↓
1978年 50,707
-7.81% ↓
1977年 55,004
2.8% ↑
1976年 53,506
-2.78% ↓
1975年 55,036
-8.58% ↓
1974年 60,198
-4.27% ↓
1973年 62,883
1.99% ↑
1972年 61,658
-6.78% ↓
1971年 66,143
-15.62% ↓
1970年 78,384
21.9% ↑
1969年 64,303
2.92% ↑
1968年 62,477
0.77% ↑
1967年 62,000
-6.77% ↓
1966年 66,500
-5% ↓
1965年 70,000
5.05% ↑
1964年 66,633
-0.49% ↓
1963年 66,960
0.64% ↑
1962年 66,532
1.54% ↑
1961年 65,520 -

シリア・アラブ共和国の馬飼養数推移データは、同国の経済や社会、農業生産、さらには地政学的状況の影響を読み解く手がかりを与えてくれます。1961年の65,520頭をピークに、1970年には一時的に78,384頭まで増加しましたが、その後、減少基調が続き、2022年には10,044頭にまで落ち込みました。この変動の背景には、幾つかの重要な要素が存在します。

まず、馬の飼養数が減少した主な要因の1つは、シリアにおける紛争や政治的不安定です。特に2011年以降の内戦は、農業や畜産業に壊滅的な影響を与えました。多くの地方地域では牧草地や農地が荒廃し、飼料の供給が不足する事態に直面したことが推測されます。また、紛争に伴う人口移動や経済的困窮により、馬の飼育を維持することが困難になりました。さらに、馬が戦闘や移動手段として使われた結果、飼養環境が大きく損なわれた可能性も考えられます。

また、馬の飼養が減少しているもう一つの背景として、農業や輸送方法の機械化が進展していることが挙げられます。これは世界的な傾向であり、特に農業分野で従来の動物労働が機械労働に置き換わる中で、馬の需要は減少の一途をたどっています。たとえば、日本や韓国のような先進国でも同様の現象が見られますが、シリアではこの変化が経済的な課題と紛争の影響によって極端に進んだ結果といえます。

一方で最近のデータからは、2021年の9,460頭から2022年の10,044頭へと若干の回復が見られます。この数字は、地域的な安定によりいくらかの改善がもたらされた可能性を示唆しています。また伝統的な馬文化や馬術の復興を目指した地域活動も影響を与えたかもしれません。

今後の課題として、紛争後の復興過程において、馬飼養環境の整備がどのように進むかが鍵となります。天然資源の管理を通じて牧草地を回復させることや、農村地域での畜産支援プロジェクトを強化することが重要です。また、シリアの馬は中東・北アフリカ地域全体の文化的資産であり、その保存活動は単なる飼養者への支援に留まらず、観光産業や地域の文化活動の振興につながる可能性も秘めています。これには、国際的な支援や地域協力の枠組みの構築が必要となるでしょう。

さらに、気候変動や環境資源の持続可能な利用が馬の飼養数に与える影響についても注目すべきです。特に水資源や食料供給がシリア全土で深刻化している中で、馬の生存や飼育を長期的に確保するためには、自然災害や気候変動への適応策が不可欠です。

結論として、シリアの馬飼養数にみられる減少傾向は、紛争や地政学的リスク、機械化、経済悪化など複数の要因が複雑に絡み合った結果と言えます。今後、畜産業や農業の復興とともに、文化的資源としての馬の保護活動を強化することが必要です。国際機関や地域の協力を通じて、持続可能な飼養方法と市場の創出を支援することで、この重要な資源を未来に向けて保全する施策が求められます。