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シリア・アラブ共和国の鶏卵生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月の最新データをもとに、シリア・アラブ共和国の鶏卵生産量の推移を分析しました。このデータは1961年から2023年までの長期間の生産量の変化を示しています。シリアの鶏卵生産量は長期的には増加傾向を示していましたが、内戦や地域的な混乱が続いた近年のデータでは著しい減少が見られます。特に2021年以降は毎年減少を続け、2022年にはピーク時(2004年)の半分未満にまで落ち込んでいることが明らかです。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 97,435
8.92% ↑
2022年 89,453
-14.69% ↓
2021年 104,854
-13.69% ↓
2020年 121,483
-1.14% ↓
2019年 122,880
9.71% ↑
2018年 112,000 -
2017年 112,000 -
2016年 112,000 -
2015年 112,000
-0.11% ↓
2014年 112,123
-9.06% ↓
2013年 123,298
-16.39% ↓
2012年 147,467
-14.2% ↓
2011年 171,871
5.25% ↑
2010年 163,295
0.53% ↑
2009年 162,431
7.29% ↑
2008年 151,400
-11.66% ↓
2007年 171,380
-9.34% ↓
2006年 189,040
21.8% ↑
2005年 155,205
-22.44% ↓
2004年 200,102
16.03% ↑
2003年 172,450
3.86% ↑
2002年 166,039
24.32% ↑
2001年 133,563
4.92% ↑
2000年 127,295
2.7% ↑
1999年 123,950
6.47% ↑
1998年 116,421
2.43% ↑
1997年 113,655
1.97% ↑
1996年 111,461
8.2% ↑
1995年 103,016
0.5% ↑
1994年 102,500
1.18% ↑
1993年 101,300
2.17% ↑
1992年 99,150
23.17% ↑
1991年 80,500
5.92% ↑
1990年 76,000
10.3% ↑
1989年 68,900
-16.48% ↓
1988年 82,500
19.05% ↑
1987年 69,300
-18.09% ↓
1986年 84,600
10.66% ↑
1985年 76,450
-15.24% ↓
1984年 90,200
4.46% ↑
1983年 86,350
2.25% ↑
1982年 84,450
9.28% ↑
1981年 77,282
15.98% ↑
1980年 66,636
6.86% ↑
1979年 62,359
25.09% ↑
1978年 49,850
41.02% ↑
1977年 35,350
1% ↑
1976年 35,000
7.69% ↑
1975年 32,500
60.49% ↑
1974年 20,250
12.5% ↑
1973年 18,000
12.5% ↑
1972年 16,000
5.96% ↑
1971年 15,100
10.22% ↑
1970年 13,700
-22.6% ↓
1969年 17,700
13.1% ↑
1968年 15,650
47.64% ↑
1967年 10,600
-4.5% ↓
1966年 11,100
-27.45% ↓
1965年 15,300
4.08% ↑
1964年 14,700
2.8% ↑
1963年 14,300
22.22% ↑
1962年 11,700
39.29% ↑
1961年 8,400 -

シリア・アラブ共和国の鶏卵生産量のデータは、同国の食料事情や農業生産の動向を示す重要な指標です。このデータに基づいて、生産量の長期的推移を分析すると、1961年には8,400トンと低い生産量を記録していました。しかし、1975年頃から顕著な増加が始まり、2004年には200,102トンという最大生産量に到達しました。これは、農業政策の近代化や養鶏技術の向上、そして国内需要の高まりが要因と考えられます。

一方で、2005年以降の生産量は安定を欠き、特に2011年にシリア内戦が勃発して以降は大きな減少傾向が見られます。例えば、内戦前の2010年には163,295トンを記録していましたが、この数字は2014年には112,123トンにまで減少しています。この減少は、戦争によるインフラの破壊や物流網の寸断、農業従事者の減少、また鶏舎や農場が直接的な影響を受けたことが主な原因とされています。

さらに、近年の気候変動や経済制裁、新型コロナウイルスの影響が重なり、農業セクター全体が大きな苦境にあります。2022年には生産量が89,453トンと、2004年のピーク時と比較して半分以下に落ち込んでおり、これは国内の食料安全保障に深刻な影響を与える懸念が高まっていることを示しています。

こうした状況を踏まえ、鶏卵生産量を回復させるためにはいくつかの課題が挙げられます。まず第一に、農業インフラの再建が急務です。壊れた輸送手段や電力供給網、水利施設を再整備することで、持続可能な農業生産を支える基盤を取り戻す必要があります。第二に、飼料や種鶏の安定供給も重要な課題です。シリアはこれらを輸入に依存しているため、経済制裁を回避しつつ、近隣諸国との地域協力を深めることが解決策の一つとなるでしょう。また、国際機関やNGOと連携し、技術的支援を得ることも大切です。

加えて、持続可能な農業促進のため、地域固有の技術や知識を活用しつつ、低環境負荷を目指した飼育方法を導入することも考えられます。例えば、再生可能エネルギーを活用した施設運営や、持続可能な飼料資源の活用を推進することで、災害や社会的混乱が発生しても生産が続けられる体制を構築することが可能です。

地政学的背景として、紛争による影響は単に国内に留まらず、周辺諸国やグローバルな食料市場にも波及しています。中東地域全体における鶏卵供給の安定にとっても、シリア国内の生産復活は重要な課題と言えるでしょう。国際社会もこれに対応するため、人道援助や政策支援を強化するべきです。

結論として、シリアの鶏卵生産量推移から読み取れるのは、農業が経済的・政治的安定に深く依存している現実です。今後、内政の安定化や国際協力が進展すれば、生産量の持続的な回復も見込まれるでしょう。国や地域、そして国際社会が一体となり、農業インフラ復旧と食料安全保障向上を目指す具体的な対策を早期に進める必要があります。