Skip to main content

シリア・アラブ共和国のバナナ生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が提供する最新データによると、シリア・アラブ共和国のバナナ生産量は、過去50年以上にわたって大きな変動を示しています。1970年代のわずかな生産量から、1990年代後半に急激な成長を遂げましたが、2000年代以降は再び減少傾向にありました。近年では2022年に197トンとなり、改善の兆しが見られるものの依然として低水準に留まっています。

年度 生産量(トン)
2022年 197
2021年 142
2020年 145
2019年 121
2018年 214
2017年 205
2016年 186
2015年 170
2014年 152
2013年 147
2012年 249
2011年 183
2010年 189
2009年 300
2008年 460
2007年 570
2006年 630
2005年 710
2004年 759
2003年 740
2002年 732
2001年 930
2000年 1,525
1999年 1,525
1998年 1,100
1997年 850
1996年 130
1995年 30
1994年 29
1993年 20
1992年 18
1991年 15
1990年 12
1989年 10
1988年 10
1987年 10
1986年 10
1985年 10
1984年 10
1983年 10
1982年 11
1981年 10
1980年 10
1979年 22
1978年 28
1977年 100
1976年 70
1975年 40
1974年 100
1973年 100
1972年 100
1971年 100
1970年 100

シリアのバナナ生産量は、1970年代には年間100トン程度と非常に小規模でしたが、これが1990年代後半に大きく増加し、そのピークは1999年と2000年の1,525トンに達しました。この期間の急成長は、おそらく農業技術の向上や新たな栽培地域の開拓、さらには政府の農業支援政策などが寄与した結果と考えられます。しかしながら、その後は減少傾向となり、2010年代に入り生産量は著しく低下しました。

特に2011年以降、シリア国内で発生した深刻な内戦の影響がバナナ生産に大きな影を落としています。戦争によるインフラの破壊や、農地の荒廃に加え、経済の混乱や物流網の機能不全などが重なり、バナナを含む多くの農産物生産が減少しました。このことが2010年代前半における生産量減少の主因とされています。加えて、シリアは温暖な気候ではあるもののバナナ栽培には水供給が重要なため、地域的な水不足や灌漑設備の不備も一因と考えられます。

しかしながら、2022年には197トンと、わずかではありますが近年の底値から回復の兆しが見られます。これは内戦の沈静化や地域社会の安定化が進む中で、農業再生に向けた取り組みが徐々に進展していることを示しているといえます。ただし、この生産量は依然としてピーク時と比較して大きく劣り、持続的な増産を達成するためにはさらなる政策的支援が必要です。

隣国レバノンやエジプトといった同地域の国々と比較しても、シリアのバナナ生産は依然として生産規模で大きく劣っています。特にエジプトは大規模な灌漑システムを用い、年間数万トン規模のバナナ生産を実現しているため、シリアがこの領域で競争力を持つためには、農業政策の見直しと投資の拡充が喫緊の課題と言えます。

未来への対策として、まずは農業用インフラの再建が重要です。バナナは特に水を多く必要とする作物であるため、灌漑設備の整備と水管理の効率化は避けて通れない課題です。また、バナナの生産性を高めるため、耐乾燥性に優れた品種の導入や、農業技術の共有に向けた国際協力も進めるべきです。例えば、国際的な農業機関の支援を活用し、気候変動にも適応できる農法の導入を図ることで、持続可能な生産を実現することができます。

さらに、地政学的な側面を考慮すると、シリア周辺地域では食料自給率の向上が極めて重要です。特に安定した食料供給は、地域紛争を未然に防ぐ一助となる可能性があります。この観点から、シリア国内での農業再生と地域間協力の枠組み強化が不可欠です。また、世界的な気候変動や新型コロナウイルスの流行による物流網への影響も、シリアの輸出入に混乱をもたらし、農業生産を制限している要素の一つです。これらのリスクに対応するためには、内需拡大と同時に輸出競争力の強化を目指した政策が必要となります。

結論として、シリアのバナナ生産は過去に大きく振動した歴史を持ちますが、現在は依然として課題が山積しています。一方で、2022年の増加は回復傾向を示唆しており、さらに持続的な成長を達成するチャンスは十分にあります。国際社会や近隣国との協力を強化することで、荒廃した農業基盤を再建し、再び成長軌道に乗る可能性を秘めています。