Skip to main content

シリア・アラブ共和国のバナナ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が提供する最新データによると、シリア・アラブ共和国のバナナ生産量は、過去50年以上にわたって大きな変動を示しています。1970年代のわずかな生産量から、1990年代後半に急激な成長を遂げましたが、2000年代以降は再び減少傾向にありました。近年では2022年に197トンとなり、改善の兆しが見られるものの依然として低水準に留まっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,332
576.14% ↑
2022年 197
38.73% ↑
2021年 142
-2.07% ↓
2020年 145
19.83% ↑
2019年 121
-43.46% ↓
2018年 214
4.39% ↑
2017年 205
10.32% ↑
2016年 186
9.23% ↑
2015年 170
11.93% ↑
2014年 152
3.4% ↑
2013年 147
-40.96% ↓
2012年 249
36.07% ↑
2011年 183
-3.17% ↓
2010年 189
-37% ↓
2009年 300
-34.78% ↓
2008年 460
-19.3% ↓
2007年 570
-9.52% ↓
2006年 630
-11.27% ↓
2005年 710
-6.44% ↓
2004年 759
2.6% ↑
2003年 740
1.04% ↑
2002年 732
-21.29% ↓
2001年 930
-39.02% ↓
2000年 1,525 -
1999年 1,525
38.64% ↑
1998年 1,100
29.41% ↑
1997年 850
553.85% ↑
1996年 130
333.33% ↑
1995年 30
3.45% ↑
1994年 29
45% ↑
1993年 20
11.11% ↑
1992年 18
20% ↑
1991年 15
25% ↑
1990年 12
20% ↑
1989年 10 -
1988年 10 -
1987年 10 -
1986年 10 -
1985年 10 -
1984年 10 -
1983年 10
-9.09% ↓
1982年 11
10% ↑
1981年 10 -
1980年 10
-54.55% ↓
1979年 22
-21.43% ↓
1978年 28
-72% ↓
1977年 100
42.86% ↑
1976年 70
75% ↑
1975年 40
-60% ↓
1974年 100 -
1973年 100 -
1972年 100 -
1971年 100 -
1970年 100 -

シリアのバナナ生産量は、1970年代には年間100トン程度と非常に小規模でしたが、これが1990年代後半に大きく増加し、そのピークは1999年と2000年の1,525トンに達しました。この期間の急成長は、おそらく農業技術の向上や新たな栽培地域の開拓、さらには政府の農業支援政策などが寄与した結果と考えられます。しかしながら、その後は減少傾向となり、2010年代に入り生産量は著しく低下しました。

特に2011年以降、シリア国内で発生した深刻な内戦の影響がバナナ生産に大きな影を落としています。戦争によるインフラの破壊や、農地の荒廃に加え、経済の混乱や物流網の機能不全などが重なり、バナナを含む多くの農産物生産が減少しました。このことが2010年代前半における生産量減少の主因とされています。加えて、シリアは温暖な気候ではあるもののバナナ栽培には水供給が重要なため、地域的な水不足や灌漑設備の不備も一因と考えられます。

しかしながら、2022年には197トンと、わずかではありますが近年の底値から回復の兆しが見られます。これは内戦の沈静化や地域社会の安定化が進む中で、農業再生に向けた取り組みが徐々に進展していることを示しているといえます。ただし、この生産量は依然としてピーク時と比較して大きく劣り、持続的な増産を達成するためにはさらなる政策的支援が必要です。

隣国レバノンやエジプトといった同地域の国々と比較しても、シリアのバナナ生産は依然として生産規模で大きく劣っています。特にエジプトは大規模な灌漑システムを用い、年間数万トン規模のバナナ生産を実現しているため、シリアがこの領域で競争力を持つためには、農業政策の見直しと投資の拡充が喫緊の課題と言えます。

未来への対策として、まずは農業用インフラの再建が重要です。バナナは特に水を多く必要とする作物であるため、灌漑設備の整備と水管理の効率化は避けて通れない課題です。また、バナナの生産性を高めるため、耐乾燥性に優れた品種の導入や、農業技術の共有に向けた国際協力も進めるべきです。例えば、国際的な農業機関の支援を活用し、気候変動にも適応できる農法の導入を図ることで、持続可能な生産を実現することができます。

さらに、地政学的な側面を考慮すると、シリア周辺地域では食料自給率の向上が極めて重要です。特に安定した食料供給は、地域紛争を未然に防ぐ一助となる可能性があります。この観点から、シリア国内での農業再生と地域間協力の枠組み強化が不可欠です。また、世界的な気候変動や新型コロナウイルスの流行による物流網への影響も、シリアの輸出入に混乱をもたらし、農業生産を制限している要素の一つです。これらのリスクに対応するためには、内需拡大と同時に輸出競争力の強化を目指した政策が必要となります。

結論として、シリアのバナナ生産は過去に大きく振動した歴史を持ちますが、現在は依然として課題が山積しています。一方で、2022年の増加は回復傾向を示唆しており、さらに持続的な成長を達成するチャンスは十分にあります。国際社会や近隣国との協力を強化することで、荒廃した農業基盤を再建し、再び成長軌道に乗る可能性を秘めています。