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シリア・アラブ共和国のナシ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、シリア・アラブ共和国のナシ生産量は1961年に2,000トンで始まり、中長期的には増加傾向を示しました。しかし、2011年以降は内戦などの影響を受けて減少傾向に転じました。特に近年、2020年以降は2万トン以下で推移しており、2023年の生産量は17,206トンとなっています。過去のピークは1996年の30,812トンであり、これ以降、断続的な減少と回復を繰り返しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 17,206
-0.1% ↓
2022年 17,223
7.67% ↑
2021年 15,996
-11.97% ↓
2020年 18,170
-12.92% ↓
2019年 20,865
3.27% ↑
2018年 20,205
-5.3% ↓
2017年 21,335
-17.28% ↓
2016年 25,793
15.76% ↑
2015年 22,281
7.15% ↑
2014年 20,795
-2.77% ↓
2013年 21,387
-5.84% ↓
2012年 22,713
15.21% ↑
2011年 19,715
-10.52% ↓
2010年 22,034
-13.66% ↓
2009年 25,521
3.74% ↑
2008年 24,600
-0.29% ↓
2007年 24,671
11.38% ↑
2006年 22,150
12.06% ↑
2005年 19,767
-3.58% ↓
2004年 20,500
0.49% ↑
2003年 20,400
1.49% ↑
2002年 20,100
-27.15% ↓
2001年 27,591
-9.89% ↓
2000年 30,618
15.09% ↑
1999年 26,603
-0.21% ↓
1998年 26,660
40.99% ↑
1997年 18,909
-38.63% ↓
1996年 30,812
62.17% ↑
1995年 19,000
11.49% ↑
1994年 17,042
-20.73% ↓
1993年 21,500
-9.42% ↓
1992年 23,737
8.39% ↑
1991年 21,900
7.88% ↑
1990年 20,300
26.88% ↑
1989年 16,000
-24.88% ↓
1988年 21,300
55.03% ↑
1987年 13,739
-15.71% ↓
1986年 16,300
0.93% ↑
1985年 16,150
11.38% ↑
1984年 14,500
-2.03% ↓
1983年 14,800
-7.11% ↓
1982年 15,932
33.88% ↑
1981年 11,900
11.21% ↑
1980年 10,700
21.27% ↑
1979年 8,823
-4.66% ↓
1978年 9,254
16.53% ↑
1977年 7,941
-5.4% ↓
1976年 8,394
28.98% ↑
1975年 6,508
5.53% ↑
1974年 6,167
77.98% ↑
1973年 3,465
-40.42% ↓
1972年 5,816
-0.43% ↓
1971年 5,841
-2.08% ↓
1970年 5,965
7.91% ↑
1969年 5,528
-3.76% ↓
1968年 5,744
-4.27% ↓
1967年 6,000 -
1966年 6,000
20% ↑
1965年 5,000
-16.67% ↓
1964年 6,000
-14.29% ↓
1963年 7,000 -
1962年 7,000
250% ↑
1961年 2,000 -

シリアのナシ生産量は、国の農業生産の一端を担う重要な分野であり、その推移は同国の地政学的状況や気候変動、経済状況に深く影響されています。1960年代には生産量が低迷していましたが、農業技術の進展や農地拡大により、1980年代に入ってから大幅な増加が見られました。1988年には一時的に21,300トンを記録し、さらに1996年には30,812トンというピークに達しました。

しかし、1996年以降、気候変動による水不足や農地への影響が懸念される中で、一部の年で顕著な減少が記録されています。特に2000年代では、比較的安定してはいたものの、20,000~25,000トンの範囲で推移しており、生産量の持続的な伸びは見られませんでした。

2011年以降、シリア国内の内戦が勃発した影響により、農業インフラが崩壊し、輸送や物流の停滞、労働力不足が大きな問題として浮上しました。同時に、紛争による農地の荒廃や設備の破壊が農業生産全体に打撃を与えました。これにより、ナシ生産量も急激に減少しました。例えば、2011年の19,715トンから、2021年には15,996トンまで落ち込んでいます。

この減少は大きく二つの要因に起因します。一つは、内戦や地域衝突による直接的な影響であり、もう一つは、気候変動や干ばつによる水資源不足です。特にシリア北部では、農業灌漑システムの破損や水供給の制限が頻繁に発生しており、これが農作物全般に負の影響を与えています。

さらに近年の新型コロナウイルス感染症の拡大も、農業従事者の移動制限や物流の混乱を通じて生産量の回復を妨げる要素となりました。2020年以降、ナシ生産量は18,170トン前後で停滞しており、2023年には17,206トンと、ここ数年は伸び悩んでいます。これに対して政策的な対策が急務となっています。

シリアのナシ生産量の復活にはいくつかの課題が挙げられます。まず、農業インフラの復旧と再構築が必要不可欠です。現在も内戦の影響は続いており、農地の回復とともに、灌漑設備や輸送システムなどの基盤整備が最優先されるべきです。また、気候変動に対応した持続可能な農業方法の導入も重要です。具体的には、水効率の高い灌漑技術の導入や、耐干ばつ性の高い品種への転換が効果的と考えられます。

国際社会においては、シリアへの支援枠組みを強化し、国際組織や周辺国が協力して農業技術や資金援助を提供することが求められます。同時に、地域間の紛争を平和的に解決するための外交努力も重要です。例えば、トルコなどの隣国との協力を強化し、輸入・輸出ネットワークを回復させる取り組みが考えられます。

結論として、ナシ生産量の回復と持続可能な成長には、政治的・経済的な安定が欠かせません。これに加え、農業分野の技術投資と気候変動適応策を組み合わせた長期的な戦略が必要です。国内外の協力による支援プログラムの充実や、農地保護のための法整備を進めることで、シリアのナシ農業は再び成長軌道に乗る可能性があります。