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シリア・アラブ共和国のさくらんぼ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が提供する最新データによると、シリア・アラブ共和国のさくらんぼ生産量は、1961年の675トンから2023年の72,694トンに達しました。この間、特に1990年以降、さくらんぼの生産量は顕著な増加傾向を示し、一部の年代で生産の乱高下が確認されました。また、近年(2012年以降)はシリア内戦などの地政学的リスクが影響したと考えられる一時的な低迷も見られますが、2022年以降は回復基調を取っております。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 72,694
1.6% ↑
2022年 71,546
61.35% ↑
2021年 44,343
5.06% ↑
2020年 42,206
-36.09% ↓
2019年 66,039
8.05% ↑
2018年 61,117
-10.26% ↓
2017年 68,106
-10.7% ↓
2016年 76,268
8.58% ↑
2015年 70,242
29.57% ↑
2014年 54,211
-13.09% ↓
2013年 62,373
-24.25% ↓
2012年 82,341
32.39% ↑
2011年 62,195
7.08% ↑
2010年 58,084
2.11% ↑
2009年 56,886
17.78% ↑
2008年 48,300
-35.63% ↓
2007年 75,034
19.17% ↑
2006年 62,966
17.82% ↑
2005年 53,441
50.96% ↑
2004年 35,400
-35.4% ↓
2003年 54,800
37.94% ↑
2002年 39,728
-21.79% ↓
2001年 50,795
-9.75% ↓
2000年 56,285
4.02% ↑
1999年 54,112
-3.38% ↓
1998年 56,003
35.55% ↑
1997年 41,315
3.36% ↑
1996年 39,973
-2.03% ↓
1995年 40,800
26.14% ↑
1994年 32,344
-11.14% ↓
1993年 36,400
-12.95% ↓
1992年 41,814
107% ↑
1991年 20,200
4.12% ↑
1990年 19,400
-26.79% ↓
1989年 26,500
-8.93% ↓
1988年 29,100
53.97% ↑
1987年 18,900
-8.7% ↓
1986年 20,700
-6.38% ↓
1985年 22,111
26.35% ↑
1984年 17,500
2.94% ↑
1983年 17,000
-18.24% ↓
1982年 20,792
93.72% ↑
1981年 10,733
10.01% ↑
1980年 9,756
-14.83% ↓
1979年 11,455
-11.36% ↓
1978年 12,923
-6.25% ↓
1977年 13,784
111.61% ↑
1976年 6,514
27.13% ↑
1975年 5,124
37.04% ↑
1974年 3,739
-49.03% ↓
1973年 7,336
4.73% ↑
1972年 7,005
381.44% ↑
1971年 1,455
-22.98% ↓
1970年 1,889
85.38% ↑
1969年 1,019
-33.36% ↓
1968年 1,529
3.87% ↑
1967年 1,472
-17.54% ↓
1966年 1,785
46.07% ↑
1965年 1,222
-6.43% ↓
1964年 1,306
107.96% ↑
1963年 628
-29.91% ↓
1962年 896
32.74% ↑
1961年 675 -

シリアにおけるさくらんぼの生産動向を長期的に振り返ると、大きな変化が見られます。1960年代は年間生産量が1,000トン前後で推移しており、生産規模は非常に限定的でした。しかし1970年代に入り、1972年や1973年には生産量が7,000トンを超えるなど、急激な増加が見られました。これには、農業技術の導入やさくらんぼの栽培に適した地域(主にシリア西部の高地)での大規模な植林が影響したと考えられます。

1980年代から1990年代にかけては、さらなる生産増が記録され、1988年には29,100トン、1992年には41,814トンと急拡大しました。この時期は、農業政策の強化や新しい栽培技術の導入が奏功したと評価できます。特に灌漑技術の向上と気候条件に適した品種の導入が、生産効率の改善に寄与した可能性が高いです。

一方で、2000年代は、自然災害や市場の変化による影響から、生産量に波が見られました。例えば、2004年には35,400トンと低下しましたが、その後の2006年には62,966トン、2012年には史上最高の82,341トンを記録するなど、波乱の多い時期と言えます。特に2011年に勃発したシリア内戦は、農業資源の喪失や労働力不足を招き、さくらんぼを含む農産業全般に深刻な影響を与えました。この影響は2014年から2021年にかけて顕著であり、生産量は連年50,000トン台、時に40,000トン台にまで減少しました。

最新のデータを見ると、2022年以降、政治的な安定化が一部進行したことで生産量は71,546トン(2022年)、72,694トン(2023年)と持ち直しています。この回復は、国際支援や地域農業の復興努力の成果と捉えることができますが、依然として経済的課題やインフラの問題が完全には解決されていない状況です。

シリアのさくらんぼ生産の特徴を他国と比較すると、日本やアメリカ、中国といった大規模生産国には遠く及びませんが、国内消費や近隣諸国への輸出を中心とした地域レベルの供給基盤を担っています。ただし、シリアの地理的特性や気候条件はさくらんぼ栽培に適しているため、ポテンシャルとしてはさらに拡大が見込まれる分野です。

課題としては、第一に内戦によって荒廃した農地の再整備が挙げられます。具体的には、土壌の回復や破壊された灌漑システムの復旧が喫緊の課題です。第二に、農業従事者を確保し育成する仕組みの再立ち上げが求められます。近年の紛争により、若年層が農業から離れて都市部や海外に流出しており、この人材不足が生産回復のボトルネックとなっています。また、輸出規制や経済制裁の影響を受けやすい状況も改善が必要です。

今後の具体的な対策として、気候変動への対応を視野に入れた持続可能な農業の導入が挙げられます。例えば、適した品種の選定や、水不足に直面する地域における灌漑技術の改善が有効です。また、国際協力を通じて他国と技術や資金を共同利用する枠組みが必要です。さらには、地域間での輸出入の円滑化を図るため、近隣諸国との経済連携を強化し、安定したマーケットを築いていくことが挙げられます。

総じて、シリアのさくらんぼ生産は、過去数十年間で大きな成長を遂げてきましたが、内戦の影響を完全に克服するには、まだ課題が多い状況です。ただし、改善の余地は広く、特に将来的には地域協力の強化や持続可能な農業政策の採用によって、生産レベルをより高める可能性が望めます。このような取り組みが進めば、シリア産のさくらんぼが国際市場でも重要なブランドとなる日が来ると期待されます。