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レバノンのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、レバノンのヤギ肉生産量は1961年の6,174トンから始まり、2023年には2,879トンと全体として減少傾向にあります。特に1970年代から大きく減退する時期が見られ、一時的な増加の局面を経ても、安定した成長には至っていません。1960年代と比較すると、現状の生産量は半分以下に落ち込んでおり、地政学的要因や農業の効率性の問題が影響している可能性があります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 2,879
-1.79% ↓
2022年 2,931
-4.06% ↓
2021年 3,055
-1.49% ↓
2020年 3,102
-1.28% ↓
2019年 3,142
2.07% ↑
2018年 3,078
13.43% ↑
2017年 2,714
-16.67% ↓
2016年 3,256
-0.34% ↓
2015年 3,267
5.28% ↑
2014年 3,104
-11.03% ↓
2013年 3,488
-10.63% ↓
2012年 3,903
0.12% ↑
2011年 3,899
37.16% ↑
2010年 2,843
-5.57% ↓
2009年 3,010
-28.84% ↓
2008年 4,230
3.21% ↑
2007年 4,099
57.69% ↑
2006年 2,599
-20.57% ↓
2005年 3,272
4.18% ↑
2004年 3,141
19.52% ↑
2003年 2,628
4.66% ↑
2002年 2,511
-10.94% ↓
2001年 2,819
11.88% ↑
2000年 2,520
-17.21% ↓
1999年 3,044
-8.99% ↓
1998年 3,344
-8.29% ↓
1997年 3,647
-50.52% ↓
1996年 7,370
126.21% ↑
1995年 3,258
2.26% ↑
1994年 3,186
50% ↑
1993年 2,124
-30.59% ↓
1992年 3,060
-11.92% ↓
1991年 3,474
6.04% ↑
1990年 3,276
4% ↑
1989年 3,150
6.06% ↑
1988年 2,970
1.85% ↑
1987年 2,916
-8.99% ↓
1986年 3,204
-10.1% ↓
1985年 3,564
-16.1% ↓
1984年 4,248
-7.81% ↓
1983年 4,608
8.47% ↑
1982年 4,248
-4.84% ↓
1981年 4,464
21.34% ↑
1980年 3,679
-9.16% ↓
1979年 4,050
12.5% ↑
1978年 3,600
-9.09% ↓
1977年 3,960
76% ↑
1976年 2,250 -
1975年 2,250
-19.35% ↓
1974年 2,790
-27.91% ↓
1973年 3,870
-12.24% ↓
1972年 4,410
-12.5% ↓
1971年 5,040
10.67% ↑
1970年 4,554
33.16% ↑
1969年 3,420
-13.64% ↓
1968年 3,960
-37.14% ↓
1967年 6,300
-5.41% ↓
1966年 6,660
19.35% ↑
1965年 5,580
-2.82% ↓
1964年 5,742
-10.39% ↓
1963年 6,408
-6.81% ↓
1962年 6,876
11.37% ↑
1961年 6,174 -

レバノンのヤギ肉生産量の推移からは、過去から現在にかけての変動の背景として、地域の社会経済的状況や地政学的リスクが大きな影響を及ぼしていることが読み取れます。1960年代から1970年代初頭までは、生産量は6,000トン台を維持していました。しかし1975年から始まったレバノン内戦を契機に生産量は急減し、最盛期の約6,700トンから1975年には2,250トンまで低下しました。この内戦期間を中心に、国内の生産基盤が著しく弱体化したことがうかがえます。

1990年代以降も生産量は完全には回復せず、むしろ波のある低迷が続いています。特に1993年の2,124トンといったような最低水準を記録する一方、1996年には7,370トンと突然の高い生産量を示しており、局地的な要因や特定の政策が影響した可能性が考えられます。しかし、その後も安定的な生産が続くことはなく、全般的に低下基調で推移しています。

近年のデータを見ると、2010年の2,843トンから2023年の2,879トンまで一進一退の様相を呈しつつも、わずかな減少傾向にあります。この減少傾向に影響を与えている要因としては、農業従事者の高齢化や都市化による農村人口の減少、気候変動による放牧環境の劣化、さらには経済危機に伴う農業部門への投資不足が挙げられます。また、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の影響や、同国内での経済危機が食肉生産全般に多大な影響を与える中で、ヤギ肉生産もその例外ではなかったと考えられます。

他国と比較すると、例えば中国やインドなどヤギ飼育に適した他のアジア諸国では、ヤギ肉生産が拡大傾向にあります。これらの国々では、人口増加による食肉需要拡大が背景にあります。一方で、ヤギ肉の需要が限られる地域、例えば日本やヨーロッパの一部では文化的嗜好もあいまって生産が欠落している状況です。

レバノンの場合、ヤギ肉は国内農業と放牧文化に長く根付いていますが、持続可能な生産が難しい環境が整っているとは言いがたい状況です。地政学的な要因、紛争の影響、さらには気候変動が強く関係しているため、この生産縮小には複合的な課題が横たわっていると言えます。

未来の課題の一つは、まず放牧環境の改善や近代化の取り組みです。例えば、気候変動に適応した農法や、飼料の輸入支援のための政策が必要となるでしょう。また、小規模農家の支援を通じて、若い世代にとって魅力的な農業分野を育成することも重要です。さらに、地域間、国際間の協力を強化し、ヤギ肉の市場拡大と輸出促進を進めることで、地元経済への貢献を拡大する余地があります。地域内での消費拡大と輸出市場の需要促進の両方に注力することが、レバノンのヤギ肉生産が再び成長軌道に乗る鍵となるでしょう。

最後に、国際的な支援の重要性にも触れるべきです。FAOや国際NGOが担うべき役割として、資金援助だけでなく技術支援やインフラ整備への貢献が挙げられます。こうした取り組みがレバノンの農業全般の持続的発展を支える基盤となると考えられます。データが示す厳しい現状を機に、長期的な視野で政策を打ち出すことが必要不可欠です。