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レバノンのヤギ飼養頭数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、レバノンにおけるヤギ飼養頭数は、1961年の470,000頭をピークに、その後減少傾向に転じ1980年代には一時的に回復期を迎えました。2011年以降は再び増加し、550,000頭を記録しましたが、この水準は2015年以降減少傾向を示しています。2022年の飼養頭数は526,021頭と、近年やや減少傾向にあることが確認されています。この飼養頭数の動向を通じて、地政学的リスクや経済活動、気候変動の影響が見受けられます。

年度 飼養頭数(頭)
2022年 526,021
2021年 537,181
2020年 534,500
2019年 521,220
2018年 541,420
2017年 541,667
2016年 499,176
2015年 516,218
2014年 550,000
2013年 550,000
2012年 550,000
2011年 550,000
2010年 403,861
2009年 430,100
2008年 450,000
2007年 434,700
2006年 484,400
2005年 494,700
2004年 432,158
2003年 428,035
2002年 408,933
2001年 399,183
2000年 417,000
1999年 435,965
1998年 466,339
1997年 496,714
1996年 482,220
1995年 437,630
1994年 418,979
1993年 445,000
1992年 465,000
1991年 471,972
1990年 435,000
1989年 406,130
1988年 401,605
1987年 398,530
1986年 400,000
1985年 420,000
1984年 440,000
1983年 440,000
1982年 440,000
1981年 445,000
1980年 444,480
1979年 390,000
1978年 330,000
1977年 260,000
1976年 250,000
1975年 260,000
1974年 362,162
1973年 330,043
1972年 354,548
1971年 356,900
1970年 366,182
1969年 348,038
1968年 357,310
1967年 431,291
1966年 442,311
1965年 441,164
1964年 470,886
1963年 450,000
1962年 450,000
1961年 470,000

レバノンのヤギ飼養頭数は、1960年代初頭に約47万頭であったものの、60年代後半には大きく減少しており、1968年には35万頭台に到達しました。この減少は、国内の農村から都市への人口移動や、農業基盤の変化が主な要因と考えられます。また1975年以降のレバノン内戦(1975–1990)は、飼育活動に深刻な影響を与え、1975年の260,000頭を底値としました。この時期には、紛争に伴う土地の荒廃、家畜飼料の不足、農業従事者の減少が問題として挙げられます。

1990年代には飼養頭数が再び回復し、1997年には496,714頭となりました。この回復は、内戦終結後の安定化と、農業復興への政策的支援が影響したと推察されます。しかしながら、世界的な価格競争や農村部の人口減少が続く中で、2000年代には再び減少の兆候が見え始め、2010年には約40万頭に落ち込みました。

その後、2011年から2014年にかけて再び増加期を迎え、550,000頭を記録しています。この背景には、近隣諸国との貿易拡大や、内陸部におけるヤギの乳製品への需要の高まりが寄与しています。ヤギの乳製品は地域の伝統的な食文化に重要であり、特にフェタチーズやヨーグルトの材料として経済的価値が高いです。しかし、2015年以降はやや下降傾向にあり、2022年には526,021頭となりました。これは、気候変動による飼料生産の影響や、経済不安が影響していると考えられます。

特に気候変動は、乾燥地帯での餌の不足を招き、飼育コストの増大につながっています。また、隣国シリアにおける紛争の波及効果も無視できません。これにより、人口動態にも影響が及び、農村部の労働力不足も課題となっています。加えて、経済的困難が続く中で食肉や乳製品の価格競争により小規模農家の収益が圧迫され、飼育数減少の要因となっています。

未来に向けた課題としては、ヤギ飼育の効率化が挙げられます。具体的には、気候変動への適応策として耐乾性の作物や飼料を導入し、近代的な畜産技術を現地に普及させることが求められます。また、中小農家への技術支援と融資制度の拡充も重要です。さらに、乳製品の輸出産業を強化し、市場の多様化を図ることも課題です。

レバノンのヤギ飼養頭数は、過去のデータからも地政学的なリスクや、気候条件、経済状況に強く影響を受けることが分かります。今後は国際的な協力を通じた農牧業の技術革新と、地域内の安定化が必要です。国や国際機関が主体的に農業支援プログラムを策定することで、レバノンの畜産業の持続可能性が高まり、農村経済の安定化にも寄与するでしょう。