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レバノンのサトイモ生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新のデータによると、レバノンにおけるサトイモの生産量は、1961年の1,100トンから始まり、一時的な増減を経て、2022年には744トンとなっています。全般的には減少傾向が確認されますが、特定の時期にピークや回復の兆しが見られるなど、その動向には地政学的リスクや気候、農業政策の影響が色濃く反映されています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 734
-1.44% ↓
2022年 744
0.78% ↑
2021年 739
-0.2% ↓
2020年 740 -
2019年 740 -
2018年 740
0.54% ↑
2017年 736
-4.1% ↓
2016年 767
4.24% ↑
2015年 736
-1.32% ↓
2014年 746
-9% ↓
2013年 820
2.5% ↑
2012年 800
0.83% ↑
2011年 793
-0.83% ↓
2010年 800
-0.89% ↓
2009年 807
-0.95% ↓
2008年 815
-1.18% ↓
2007年 825
9.02% ↑
2006年 756
-4.55% ↓
2005年 793
-4.53% ↓
2004年 830
3.77% ↑
2003年 800
-11.11% ↓
2002年 900
-10% ↓
2001年 1,000
-4.76% ↓
2000年 1,050
-8.7% ↓
1999年 1,150
-3.04% ↓
1998年 1,186
0.51% ↑
1997年 1,180
0.34% ↑
1996年 1,176
-2% ↓
1995年 1,200
-11.11% ↓
1994年 1,350
3.85% ↑
1993年 1,300
-24.42% ↓
1992年 1,720
13.16% ↑
1991年 1,520
8.57% ↑
1990年 1,400
12% ↑
1989年 1,250
13.64% ↑
1988年 1,100
10% ↑
1987年 1,000
11.11% ↑
1986年 900
12.5% ↑
1985年 800
14.29% ↑
1984年 700
7.69% ↑
1983年 650
16.07% ↑
1982年 560
-2.61% ↓
1981年 575
-4.17% ↓
1980年 600
-14.29% ↓
1979年 700
-12.5% ↓
1978年 800
-11.11% ↓
1977年 900 -
1976年 900 -
1975年 900 -
1974年 900
6.89% ↑
1973年 842
-48.97% ↓
1972年 1,650
1.23% ↑
1971年 1,630
1.88% ↑
1970年 1,600
-0.31% ↓
1969年 1,605
14.64% ↑
1968年 1,400
169.23% ↑
1967年 520
-27.78% ↓
1966年 720
-4% ↓
1965年 750 -
1964年 750
7.14% ↑
1963年 700
-30% ↓
1962年 1,000
-9.09% ↓
1961年 1,100 -

1961年から2022年までのレバノンにおけるサトイモ生産量データは、経済環境や政治情勢、自然災害、農業技術の変化が生産に多大な影響を及ぼしてきたことを示しています。この期間、1960年代初頭には1,100トン程度の生産量から始まり、1967年の520トンと最低水準に達した後、1968年以降は1,400トンを越える増加傾向が確認されました。しかし、その後は安定期と停滞期を繰り返し、2000年代以降、徐々に減少傾向が続きます。2022年の744トンという数値を見ると、1961年の生産量とほぼ同等で、過去60年以上かけてほぼ横ばいに戻ったような印象を受けます。

このような生産量の動向には、さまざまな要因が考えられます。特に、レバノンは1975年から1990年にかけて内戦を経験しており、この期間の農業基盤や生産インフラへの甚大な影響は避けられませんでした。また、レバノンの地理的位置からくる地政学的リスクも関係しています。隣国との緊張や紛争、輸入資源への依存度が高い中での供給リスクなど、経済全体に及ぼす不安定要因により、農業生産環境が悪化することとなりました。一方、1988年には1,100トンと回復の兆しが見られ、1992年には1,720トンのピークを記録しました。この時期には、平和構築の進展や農業支援の回復が生産に寄与したと考えられます。

近年では、サトイモ生産量は800トンを下回る水準で安定しているものの、2022年にはかろうじて744トンを維持しています。他の主要な生産国であるインドや中国とは規模が大きく異なり、これらの国々は生産・消費ともに急成長を遂げていますが、レバノンはそのような成長基盤には至っていません。日本など他の国と比べても競争力が限られており、特に技術革新や農業効率化の進展が求められる状況です。

課題としては、気候変動や水資源の不足、インフラの老朽化などの環境面だけでなく、農業技術の停滞や若年層の農業離れ、政治的不安定さも挙げられます。2020年以降の新型コロナウイルスの流行は、社会インフラや流通に悪影響を及ぼし、小規模農家の負担が増大するなど、農業全般の競争力低下に拍車をかけました。

これらの課題を解決するためには、まず政策支援の強化が必須です。例えば、農業補助金の導入や無利子融資を通じた小規模農家支援、灌漑技術や気候適応型農業技術を普及させることが有効でしょう。また、地元市場だけでなく国際市場を視野に入れた生産体制の強化が求められます。そのためには、地域協力の枠組みを通じて近隣諸国との連携を図る一方、地政学的リスク軽減のための外交政策も重要です。

結論として、長期的な生産量の推移を見ると、レバノンはサトイモ生産において安定した状況に至っているとはいえませんが、技術支援や政策対応によって回復の余地を残しています。農業分野への継続的な投資と環境改善を通じて、こうした課題に取り組むことが、今後の地域経済全体の復興にもつながるでしょう。特に、地元農家の利害を尊重しながら、持続可能な農業を目指すことが不可欠です。