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レバノンのトウモロコシ生産量推移(1961-2022)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、レバノンのトウモロコシ生産量は、1961年以降大きな変動を経て現在に至っています。1960年代初頭は1万トンを超える高水準を維持していましたが、その後減少傾向となり、1970年代には1,000トン前後まで落ち込みました。1990年代後半には再び増加傾向を見せ、一時は約5,000トンに達したものの、2000年代以降生産の変動幅が小さくなり、近年では一貫して3,000トン前後で推移しています。この生産量の変動は地政学的背景や農業政策、自然環境の変化など多くの要因に影響されています。

年度 生産量(トン)
2022年 3,000
2021年 3,000
2020年 3,000
2019年 3,000
2018年 3,570
2017年 4,864
2016年 2,745
2015年 3,404
2014年 3,000
2013年 3,000
2012年 3,000
2011年 3,000
2010年 6,023
2009年 4,700
2008年 3,400
2007年 3,100
2006年 3,100
2005年 3,400
2004年 3,300
2003年 3,300
2002年 2,744
2001年 3,800
2000年 3,500
1999年 4,000
1998年 5,000
1997年 2,800
1996年 4,772
1995年 4,670
1994年 4,086
1993年 3,500
1992年 3,380
1991年 3,013
1990年 2,900
1989年 2,789
1988年 2,555
1987年 2,471
1986年 1,900
1985年 1,400
1984年 1,344
1983年 300
1982年 320
1981年 450
1980年 2,000
1979年 2,000
1978年 2,000
1977年 1,000
1976年 1,000
1975年 1,500
1974年 1,216
1973年 891
1972年 1,018
1971年 1,245
1970年 1,122
1969年 1,111
1968年 3,727
1967年 5,185
1966年 8,841
1965年 9,065
1964年 11,000
1963年 12,000
1962年 15,000
1961年 12,500

レバノンのトウモロコシ生産量データを振り返ると、1960年代に12,500トンで始まった生産量が、1967年には5,000トンを下回り、1969年にはわずか1,111トンにまで減少したことが確認できます。この急激な低下は、当時の地政学的リスクや限界的な農業インフラが影響した結果と考えられます。この時期、国内の政治的不安定や中東地域の紛争が農業全般に悪影響を与えたと見られます。

1970年代後半から多少の回復期を迎えるも、1980年代初頭には再び300トン台に下落しました。この減少は、1982年以降のレバノン内戦の影響によるものと考えられます。内戦は農業資源への投資を制限し、土地利用や物流などにも悪影響を及ぼしました。しかし、1986年以後からはじわじわと回復の兆しを見せ、1990年代には生産量が3,000トンを上回る安定的な水準に戻りました。この背景には内戦終結後の農業復興政策や、農業従事者の取り組みが影響したと推測されます。

特に1998年の5,000トンという記録は、1990年代のピークに位置していますが、それ以降は再び大幅な変動が見られるようになります。2000年代に入り、トウモロコシの生産量はおおむね3,000~4,000トンで推移しています。この安定性には、国内の農業技術向上や、輸出よりも国内消費を重視した政策が影響しています。ただし、2010年に6,023トンという突出した生産量が見られたものの、その後2011年から2022年までの12年間は3,000トン前後で停滞しています。

この長期的な停滞の背後には、いくつかの主要な課題が存在すると考えられます。一つは、気候変動の影響です。地中海性気候で知られるレバノンですが、近年降水量の減少や干ばつの頻発が農業活動を阻害しています。また、土壌劣化問題も深刻であり、肥沃度の低下が収穫量減少につながっています。さらに、経済危機の影響で農業部門への投資が制限されていることもネックとなっています。

地政学的な課題も無視できません。近年のシリア紛争や難民流入は、国内農業資源の競合を招き、農業インフラ整備や輸送効率の向上を妨げています。さらに、レバノンの金融危機による輸入燃料や肥料の高騰が農家の生産コストを押し上げています。新型コロナウイルスのパンデミックも一時的ながら流通や市場の動きを減速させ、農家の収入安定を損ねています。

こうした現状を踏まえ、トウモロコシ生産量を安定的に増加させるには、具体的な対策が必要です。まずは、持続可能な農業技術の導入を推進し、ドリップ方式の灌漑や干ばつ耐性種の普及を進めることが重要です。また、地方自治体や国際機関と連携し、農業従事者向けの教育や訓練プログラムを提供することも有益でしょう。さらに、農家に対する財政支援の拡充や、農機具や肥料の支援を通じて、効率的な生産を後押しする取り組みも不可欠です。

一方で、長期的にはトウモロコシ以外の作物との作付け変更を検討し、気候や経済条件に合った多様な農業経営を促すことも重要です。このような施策に加えて、地域間協力の枠組みを強化し、近隣諸国との情報共有や資源連携を進めることで、農業分野の全体的な底上げも目指すべきです。個別の取り組みと国際的な協力をバランスよく進めることが、レバノンの農業の持続可能性の向上につながるでしょう。

データから読み取れる過去の動向は、地政学的リスクや気候変動が大きく影響を及ぼしてきたことを示しています。今後の課題は、これらリスクに対応する柔軟で効率的な施策の展開と、新たな農業基盤の構築にあります。これにより、レバノンのトウモロコシ生産が再び上昇基調に転じる未来が期待されます。