Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が2024年7月に更新したデータによると、レバノンにおけるカリフラワーとブロッコリーの生産量は過去60年以上にわたって大きな変動を見せています。1960年代には年間約3,000トンで推移していましたが、1980年代後半から急激に増加し、一時的に30,000トンを超える生産量を記録しました。しかし、1997年以降は急激な減少が見られ、その後は断続的ながら20,000トン前後で推移しています。2023年の生産量(16,209トン)は、近年の中でも低い水準となっています。
レバノンのカリフラワー・ブロッコリー生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 16,209 |
-7.33% ↓
|
2022年 | 17,490 |
1.18% ↑
|
2021年 | 17,286 |
-1.56% ↓
|
2020年 | 17,560 |
-7.72% ↓
|
2019年 | 19,030 |
-5.37% ↓
|
2018年 | 20,110 |
-4.02% ↓
|
2017年 | 20,952 |
39.05% ↑
|
2016年 | 15,068 |
-18.81% ↓
|
2015年 | 18,558 |
-4.88% ↓
|
2014年 | 19,511 |
-9.46% ↓
|
2013年 | 21,549 |
2.32% ↑
|
2012年 | 21,060 |
22.1% ↑
|
2011年 | 17,248 |
26.53% ↑
|
2010年 | 13,631 |
5.67% ↑
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2009年 | 12,900 |
-58.92% ↓
|
2008年 | 31,400 |
30.29% ↑
|
2007年 | 24,100 |
-2.82% ↓
|
2006年 | 24,800 |
-21.02% ↓
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2005年 | 31,400 |
-13.97% ↓
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2004年 | 36,500 |
81.59% ↑
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2003年 | 20,100 |
-43.85% ↓
|
2002年 | 35,800 |
171.21% ↑
|
2001年 | 13,200 |
14.78% ↑
|
2000年 | 11,500 |
64.29% ↑
|
1999年 | 7,000 |
-10.26% ↓
|
1998年 | 7,800 |
-54.12% ↓
|
1997年 | 17,000 |
-59.36% ↓
|
1996年 | 41,835 |
10.09% ↑
|
1995年 | 38,000 |
15.15% ↑
|
1994年 | 33,000 |
10% ↑
|
1993年 | 30,000 |
2.78% ↑
|
1992年 | 29,188 |
4.32% ↑
|
1991年 | 27,980 |
11.92% ↑
|
1990年 | 25,000 |
13.64% ↑
|
1989年 | 22,000 |
22.22% ↑
|
1988年 | 18,000 |
28.57% ↑
|
1987年 | 14,000 |
40% ↑
|
1986年 | 10,000 |
17.65% ↑
|
1985年 | 8,500 |
13.33% ↑
|
1984年 | 7,500 | - |
1983年 | 7,500 |
-2.6% ↓
|
1982年 | 7,700 |
-8.33% ↓
|
1981年 | 8,400 |
5% ↑
|
1980年 | 8,000 |
33.33% ↑
|
1979年 | 6,000 |
20% ↑
|
1978年 | 5,000 | - |
1977年 | 5,000 |
25% ↑
|
1976年 | 4,000 |
33.33% ↑
|
1975年 | 3,000 |
50% ↑
|
1974年 | 2,000 |
72.56% ↑
|
1973年 | 1,159 |
-42.05% ↓
|
1972年 | 2,000 | - |
1971年 | 2,000 | - |
1970年 | 2,000 |
-40.3% ↓
|
1969年 | 3,350 |
4.69% ↑
|
1968年 | 3,200 |
3.23% ↑
|
1967年 | 3,100 |
3.33% ↑
|
1966年 | 3,000 | - |
1965年 | 3,000 |
-25% ↓
|
1964年 | 4,000 |
33.33% ↑
|
1963年 | 3,000 | - |
1962年 | 3,000 | - |
1961年 | 3,000 | - |
レバノンのカリフラワーとブロッコリーの生産量の推移は、その時期ごとの国内外の事情や農業環境を明確に反映しています。最初に注目すべきは、1960年代から1970年代初頭にわたる生産量の安定性です。この時期、生産量は概ね3,000トン前後で推移しており、国内消費の需要に見合った規模に保たれていました。しかし、1970年から1973年の連続した減少は内戦前の経済的・社会的混乱の兆候を示していると考えられます。特に1973年の1,159トンという記録的な低さは、生産基盤が一時的に脆弱化したことを示唆しています。
その後1970年代末から1980年にかけて、生産量は着実に増加をはじめ、1986年には10,000トンを超え、1989年には22,000トンを突破するなど急成長を遂げました。この時期の背景には、農業支援政策と経済再建の動きがありました。また、国内の安定化が進むにつれて農地開発も進み、生産規模が拡大したと考えられます。しかし、1990年代後半になると17,000トンを下回る急激な減少が起こり、1997年以降の年間生産量は大きく上下を繰り返すようになります。
特に2002年の35,800トン、2004年の36,500トンという急激な増加は、適した気候条件や輸出市場の需要増加に支えられたと予想されます。しかし、その後継続的に高水準を維持するのではなく、むしろ不安定なトレンドが目立ちます。2023年の16,209トンという数字は、最近では過去10年で最低水準に接近しており、気候変動の影響、農業資材のコスト上昇、そして国内の経済的混乱などの複合的要因がその背景にあると考えられます。
さらに、周辺国との比較に目を向けると、たとえばトルコやエジプトのような近隣の主要農業生産国では、安定した政府の支援と輸出モデルの多様化により、カリフラワーやブロッコリー生産が順調に拡大しています。一方、レバノンにおける農業政策の断続性やインフラ不足、輸出市場の未整備は、競争力を失わせる要因となっています。
レバノンがこの農産物の生産を持続可能な形で発展させるには、いくつか解決すべき課題があります。まず、農業の近代化と気候変動への適応として、省エネルギー型の灌漑システムや耐干ばつ性のある新たな作物品種の導入が不可欠です。これにより、生産の安定と収量性の強化が期待されます。加えて、農家に対する金融および技術的支援の拡大も重要です。これにより、農業資材の購入負担軽減や持続可能な農法の普及が達成されるでしょう。
さらに、農産物の輸出促進のためのインフラ整備や貿易交渉力の向上も必要です。レバノンは地政学的にも中東地域内で戦略的な位置にあるため、これを活用した輸出モデルの構築が求められます。また、外部市場の多様化を図り、国内経済に与える市場依存リスクを軽減することが重要です。
結論として、レバノンのカリフラワーとブロッコリーの生産動向は、国内外の経済や政策の影響を強く受けてきたことが明らかです。将来的に農業生産を強化し、競争力を高めるためには、持続可能な農業技術の導入、政策の一貫性、地域間のインフラ協力の促進が求められます。こうした取り組みを進めることで、レバノンの農業は安定した成長路線に戻る可能性を秘めています。