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レバノンの小麦生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表したデータによれば、レバノンの小麦生産量は長期的に見て大きな変動を示してきました。1961年の68,500トンから始まり、年によって大幅な増減がありました。最新の2022年では100,000トンと、2000年代後半のピークに比べると減少傾向が見られます。特に、内戦期間や地政学的な影響を受けた時期には生産量が著しく低下しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 100,000 -
2022年 100,000 -
2021年 100,000
-28.57% ↓
2020年 140,000
7.69% ↑
2019年 130,000 -
2018年 130,000
3.34% ↑
2017年 125,797
-2.51% ↓
2016年 129,037
-7.17% ↓
2015年 139,000
-0.71% ↓
2014年 140,000 -
2013年 140,000
-6.67% ↓
2012年 150,000
20% ↑
2011年 125,000
50.6% ↑
2010年 83,000
-25.49% ↓
2009年 111,400
-22.48% ↓
2008年 143,700
23.67% ↑
2007年 116,200
-24.25% ↓
2006年 153,400
6.75% ↑
2005年 143,700
5.04% ↑
2004年 136,800
17.63% ↑
2003年 116,300
-2.27% ↓
2002年 119,000
-14.7% ↓
2001年 139,500
29.05% ↑
2000年 108,100
48.08% ↑
1999年 73,000
-9.43% ↓
1998年 80,600
38.03% ↑
1997年 58,394
0.09% ↑
1996年 58,342
-2.77% ↓
1995年 60,005
13.92% ↑
1994年 52,675
-4.23% ↓
1993年 55,000
-10.69% ↓
1992年 61,580
5.1% ↑
1991年 58,594
12.68% ↑
1990年 52,000
-7.86% ↓
1989年 56,438
9.61% ↑
1988年 51,490
4.62% ↑
1987年 49,218
64.06% ↑
1986年 30,000
33.33% ↑
1985年 22,500
25% ↑
1984年 18,000
-10% ↓
1983年 20,000
-13.04% ↓
1982年 23,000
4.55% ↑
1981年 22,000
10% ↑
1980年 20,000
-50% ↓
1979年 40,000
-11.11% ↓
1978年 45,000
-10% ↓
1977年 50,000
25% ↑
1976年 40,000
-38.46% ↓
1975年 65,000
-13.98% ↓
1974年 75,560
37.04% ↑
1973年 55,138
-13.42% ↓
1972年 63,686
55.44% ↑
1971年 40,971
-4.73% ↓
1970年 43,005
30.49% ↑
1969年 32,956
-30.87% ↓
1968年 47,673
-29.57% ↓
1967年 67,690
-3.29% ↓
1966年 69,992
27.26% ↑
1965年 55,000
-7.56% ↓
1964年 59,500
-0.83% ↓
1963年 60,000
-20.26% ↓
1962年 75,247
9.85% ↑
1961年 68,500 -

レバノンの小麦生産量の推移を俯瞰すると、いくつかの特徴が際立ちます。1960年代から1970年代半ばまでは生産量が概ね安定しており、50,000~70,000トンの範囲で推移していました。しかし、その後1975年に勃発したレバノン内戦(1975年~1990年)は農業生産に壊滅的な影響を及ぼし、生産量は1980年代初頭に最低の18,000トンまで減少しました。この間、国内の農業インフラの破壊や農家の安全環境の悪化などが主な要因となりました。

1990年以降、内戦が終結し復興が進む中で、小麦の生産量は徐々に回復を見せました。1998年以降は80,000トンを超える生産量となり、2000年代初頭には100,000トン台に到達しました。特に2005年から2007年にかけてのデータでは、生産量が150,000トンに近づく水準となり、この期間がレバノンの小麦生産におけるピークの一つと捉えられます。

しかし、その後の情勢変化により、再び生産の不安定さが浮き彫りとなります。2010年代後半には一時停滞し、2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大や国内の政治的不安定、加えて経済危機が重なったことにより、2021年以降は100,000トンとやや低迷した数字が続いています。このような状況の背景には、肥料や種子といった農作物生産の重要な資源の調達困難や、燃料価格の高騰が関与していると考えられます。

レバノンの自然環境は小麦生産に決して適しているとはいえません。降水量の不足や耕地面積の限界に加え、過去の地域紛争や地政学的リスクなど、外部的要因が農業に大きな影響を与えてきました。他国と比較すると、例えば中国やインドなどの主要な穀物生産国は、安定した生産基盤と広大な耕地面積により比較的高い小麦生産量を維持しています。これに対し、レバノンでは自給率を高めるための取り組みが引き続き課題となっています。

将来に向けて、いくつかの具体的対策が求められます。まず、気候変動への適応を目指した農業技術の導入が重要です。一例として、乾燥地でも育つ小麦の耐性種の普及や灌漑技術の効率化が挙げられます。また、国際協力体制の強化も効果的です。他国の成功事例を参考にした政策を導入し、技術・資材の供給支援を受けることで、生産力を向上させることが可能です。

また、国内の経済改善も欠かせません。特に、農家を支える補助金制度や小規模農家への融資支援などが、農業従事者にとってのリスク軽減につながります。そして、食料輸入の依存度を下げるために、持続可能な国内生産体制を構築することが重要です。

結論として、レバノンの小麦生産量は時代とともに大きな変動を見せながらも、近年の情勢不安により減少傾向が顕著です。この課題を克服するためには、技術革新や国際的な支援の活用、経済的安定が求められます。政府や国際機関はこれを受け、早急に具体的な支援政策を進める必要があります。これらの取り組みの成果によって、レバノンは安定した食料生産と自給率向上への道を切り開くことができるでしょう。