国際連合食糧農業機関(FAO)が提供するデータによれば、レバノンのテンサイ(甜菜)の生産量は1960年代から1980年代にかけて不安定ながらも増減を繰り返し、1990年代には大幅な増加を記録する時期が見られました。しかし、2000年以降は急激に生産量が減少しており、その後も減少傾向が続きました。直近の2023年には6,837トンを記録していますが、過去のピーク時である1999年の369,500トンとは大きな差があります。データは、レバノンのテンサイ生産が長期的に低迷している現状を示しています。
レバノンのテンサイ(甜菜)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 6,837 |
12.03% ↑
|
2022年 | 6,103 |
0.88% ↑
|
2021年 | 6,050 |
10.4% ↑
|
2020年 | 5,480 |
20.7% ↑
|
2019年 | 4,540 | - |
2018年 | 4,540 |
-18.36% ↓
|
2017年 | 5,561 |
22.71% ↑
|
2016年 | 4,532 |
-31.29% ↓
|
2015年 | 6,595 |
15.71% ↑
|
2014年 | 5,700 |
338.46% ↑
|
2013年 | 1,300 |
-72.93% ↓
|
2012年 | 4,802 |
-28.05% ↓
|
2011年 | 6,674 |
242.62% ↑
|
2010年 | 1,948 |
94.8% ↑
|
2009年 | 1,000 |
-96.76% ↓
|
2008年 | 30,900 |
-16.49% ↓
|
2007年 | 37,000 |
5.71% ↑
|
2006年 | 35,000 |
-55.81% ↓
|
2005年 | 79,200 |
-6.6% ↓
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2004年 | 84,800 |
457.89% ↑
|
2001年 | 15,200 |
-95.55% ↓
|
2000年 | 341,700 |
-7.52% ↓
|
1999年 | 369,500 |
23.17% ↑
|
1998年 | 300,000 |
-16.11% ↓
|
1997年 | 357,619 |
47.63% ↑
|
1996年 | 242,233 |
-1.59% ↓
|
1995年 | 246,150 |
7.33% ↑
|
1994年 | 229,346 |
23.48% ↑
|
1993年 | 185,737 |
-9.88% ↓
|
1992年 | 206,095 |
3145.59% ↑
|
1991年 | 6,350 |
-93.17% ↓
|
1990年 | 93,000 |
-2.82% ↓
|
1989年 | 95,700 |
7.9% ↑
|
1988年 | 88,695 |
-0.21% ↓
|
1987年 | 88,878 |
11.1% ↑
|
1986年 | 80,000 | - |
1985年 | 80,000 |
6.67% ↑
|
1984年 | 75,000 |
22.95% ↑
|
1983年 | 61,000 |
-0.21% ↓
|
1982年 | 61,130 |
-38.87% ↓
|
1981年 | 100,000 |
132.56% ↑
|
1980年 | 43,000 |
-60.19% ↓
|
1979年 | 108,000 |
-8.47% ↓
|
1978年 | 118,000 |
-4.07% ↓
|
1977年 | 123,000 |
-23.13% ↓
|
1976年 | 160,000 |
220% ↑
|
1975年 | 50,000 |
-37.5% ↓
|
1974年 | 80,000 |
-42.62% ↓
|
1973年 | 139,431 |
-26.62% ↓
|
1972年 | 190,000 |
29.98% ↑
|
1971年 | 146,181 |
45.66% ↑
|
1970年 | 100,356 |
6.76% ↑
|
1969年 | 94,000 |
-20.98% ↓
|
1968年 | 118,952 |
8.14% ↑
|
1967年 | 110,000 |
-4.35% ↓
|
1966年 | 115,000 |
67.15% ↑
|
1965年 | 68,800 |
-5.36% ↓
|
1964年 | 72,700 |
105.37% ↑
|
1963年 | 35,400 |
18.39% ↑
|
1962年 | 29,900 |
22.04% ↑
|
1961年 | 24,500 | - |
レバノンのテンサイ生産量は、1961年の24,500トンから始まり、その後数十年にわたり大きな変動を記録してきました。特に1960年代後半から1970年代初頭にかけては大幅な増加が見られ、1972年には190,000トンを超えるピークを迎えました。しかし、1975年以降のレバノン内戦(1975年~1990年)が生産に深刻な影響を与え、一時的な大幅減少が発生しました。内戦終了後の1990年代には安定と政策支援の影響で再び生産が回復し、1999年には369,500トンという過去最大の生産量が記録されました。しかし、その後2000年から急激に生産量が減少し、現在に至るまで長期的な低生産の状態が続いています。
この変動の背景には、内戦の影響だけでなく、全般的な農業インフラの不足、技術革新の遅れ、気候変動、および地政学的リスクが大きく関与しています。特に2000年以降は、気候発展に伴う水資源の不足がレバノンの農業全般に影響を与えており、テンサイの生産も例外ではありません。また、レバノンは近年経済的な困難に直面しており、その結果として農業分野への投資が制限され、農業支援の欠如が生じています。テンサイは、食料および飼料用作物として地域経済に重要な役割を果たすため、この低生産量の継続は地元経済と食料安全保障に悪影響を及ぼしています。
2023年には生産量が6,837トンとなり、多少の増加が見られましたが、依然として過去の生産量ピークには遠く及びません。この数値の増加は、主に近年の生産性向上を狙った政策介入や、世界市場動向の影響によるものとも考えられます。ただし、これはまだ小規模な改善に留まり、持続性のある回復基調とは言えません。
レバノンのテンサイ生産を回復させるためには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、農業インフラへの投資が不可欠です。特に灌漑技術や肥料供給の近代化は、生産効率を向上させる鍵となります。さらに、気候変動に適応する農法の導入が必要です。たとえば、耐乾燥性の品種の開発や、省水型農業技術の普及が求められます。また、政府による農業政策の安定化や補助金制度の見直しを通じて農業支援を強化し、農家が安心して作付けができる環境を整えることが重要です。
さらに、地域間および国際的な協力も重要です。近隣国や国際機関と協力して技術支援や資金援助を受けることで、自国の課題解決を加速させることが可能です。例えば、国連機関やEUの農業支援プログラムを活用すれば、持続可能な農業の実現に向けた取り組みの一部を補完することができます。地政学的リスクを抱える地域ゆえに、安定した経済基盤の構築と農業振興が国家安定策としても有効です。
最後に、世界的な気候変動や地政学的状況を考慮すると、レバノンのテンサイ生産は国の安全保障および地域経済全体にとって重要な指標となり得ます。つまり、農業分野への適切な投資と政策の持続が国の安定化に繋がるため、迅速かつ継続的な行動が必要です。生産量増加のためには、国内外からの協力や、長期的な視点での持続可能な農業モデルの導入を推進することが求められます。