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レバノンのブドウ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関が発表したデータによれば、レバノンのブドウ生産量は1961年から2023年の間に大きな変動を見せています。特に、1991年に記録したピークの358,138トンに対し、2023年には55,014トンと大幅な減少が確認されています。この長期的な減少傾向には、さまざまな地政学的リスク、経済的課題、環境要因が影響していることが示唆されます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 55,014
-1.77% ↓
2022年 56,006
-5.43% ↓
2021年 59,221
-5.93% ↓
2020年 62,955
1.52% ↑
2019年 62,014
20.02% ↑
2018年 51,670
-33.28% ↓
2017年 77,440
-34.79% ↓
2016年 118,754
12.29% ↑
2015年 105,752
15.03% ↑
2014年 91,932
18.84% ↑
2013年 77,358
-2.94% ↓
2012年 79,699
2.06% ↑
2011年 78,093
-15.57% ↓
2010年 92,495
-14.36% ↓
2009年 108,000
-9.17% ↓
2008年 118,900 -
2007年 118,900
5.88% ↑
2006年 112,300
1.54% ↑
2005年 110,600
-10.3% ↓
2004年 123,300
3.27% ↑
2003年 119,400
17.04% ↑
2002年 102,015
-12.21% ↓
2001年 116,200
3.2% ↑
2000年 112,600
-10.63% ↓
1999年 126,000
3.28% ↑
1998年 122,000
-4.46% ↓
1997年 127,700
-47.51% ↓
1996年 243,298
-30.36% ↓
1995年 349,360
6.54% ↑
1994年 327,920
-4.95% ↓
1993年 345,000
-4.78% ↓
1992年 362,315
1.17% ↑
1991年 358,138
55.71% ↑
1990年 230,000
5.93% ↑
1989年 217,122
3.46% ↑
1988年 209,851
1.33% ↑
1987年 207,104
15.06% ↑
1986年 180,000
5.88% ↑
1985年 170,000
6.25% ↑
1984年 160,000
-6.98% ↓
1983年 172,000
6.83% ↑
1982年 161,000
7.33% ↑
1981年 150,000
7.14% ↑
1980年 140,000
3.7% ↑
1979年 135,000
3.85% ↑
1978年 130,000
62.5% ↑
1977年 80,000
-5.88% ↓
1976年 85,000
-5.56% ↓
1975年 90,000
-24.07% ↓
1974年 118,533
10.27% ↑
1973年 107,490
-1.74% ↓
1972年 109,396
-4.89% ↓
1971年 115,023
13.04% ↑
1970年 101,753
32.77% ↑
1969年 76,640
-8.34% ↓
1968年 83,609
-5.34% ↓
1967年 88,321
16.23% ↑
1966年 75,988
-9.32% ↓
1965年 83,800
-16.2% ↓
1964年 100,000
11.11% ↑
1963年 90,000
5.88% ↑
1962年 85,000
-5.56% ↓
1961年 90,000 -

レバノンは地中海性の温暖な気候と肥沃な土壌を有し、古くからブドウ栽培が盛んな地域として知られています。この国のブドウ生産は1960年代には年間約90,000トン程度で推移していましたが、1970年代終盤から1980年代にかけて急激に増加し、1989年ごろには217,122トン、さらなるピークとして1991年には約358,000トンに到達しました。この急成長は、農業技術の進歩や輸出拡大政策、気候条件の好適さなどが寄与したと考えられます。

しかし、1996年以降には生産量が減少に転じ、約127,700トンとなり、大幅な下降傾向が顕在化しました。その後も低迷が続き、2000年代以降は年間およそ100,000~120,000トンを中心に推移、さらに2010年代後半以降は急激に落ち込み、2018年には約51,670トンと最低値に近づきました。その後も緩やかな減少が見られ、2023年には55,014トンにまで減少しています。

この背景には、地政学的リスクと紛争の影響が大きいと言えます。特に、1980年代から1990年代にかけてのレバノン内戦、またその後の政情不安が、農業インフラの破壊や農村部人口の流出を招きました。農地の荒廃や人材不足が生産能力に直接的な影響を及ぼしたのです。また、中東地域全体が不安定な状況にあるため、輸出市場の縮小も生産意欲に影響を及ぼしました。さらに、近年は気候変動の影響による異常気象が農作物の収量に悪影響を与えており、他国でも見られる課題と同様にレバノンのブドウ産業にも打撃を与えています。

他国と比較すると、日本や韓国といった立地上ブドウ輸入に依存する国々や、アメリカ・フランス・イタリアといった大規模輸出国では、それぞれの政府と農家が協力し、気候変動リスクに対応する政策的枠組みを整えています。例えば、アメリカでは新しい栽培技術の導入と灌漑システムの強化、ヨーロッパ諸国では環境に配慮した持続可能な農業への転換が進んでいます。一方、レバノンはこうした先進的取り組みを行うための資源に乏しい点も課題といえます。

将来のブドウ生産量を回復するためには、まず地域の安定が不可欠です。具体的な対策としては、農業従事者への再教育と支援プログラム、荒廃した農地の再生プロジェクト、優良品種の導入や乾燥耐性のある品種への転換が挙げられます。また、国外市場の需要を取り込むための輸出促進策も強化する必要があります。さらに、近年多くの国で注目されている、気候変動への適応技術や環境負荷の低減に配慮した農法の導入は、レバノンのブドウ産業の未来にとって重要となるでしょう。

結論として、レバノンのブドウ生産量推移は、政策的、環境的、政治的な多くの要因に左右されてきたことがわかります。この現状を改善するためには、地政学的リスクの低減と多国間協力による持続可能な農業政策の構築が求められます。これにより、ブドウ生産は再び安定し、農村地域の経済復興や国際市場への復帰という形で大きな前進を図ることができる可能性があります。