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レバノンの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、レバノンの牛乳生産量は歴史的な変動を経て成長してきたものの、近年はやや安定的または減少傾向が見られています。2023年の牛乳生産量は331,986トンとなっており、2008年以降ではピークの367,471トン(2013年)を下回りつつ、2019年以降の水準に近い推移をたどっています。これらのデータは経済的、地政学的、農業政策の影響を受けた結果として読み取ることができます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 331,986
-1.34% ↓
2022年 336,490
-0.26% ↓
2021年 337,367
4.74% ↑
2020年 322,102
-7.97% ↓
2019年 350,000
2.94% ↑
2018年 340,000
23.05% ↑
2017年 276,306
-4.03% ↓
2016年 287,916
-15.32% ↓
2015年 340,000 -
2014年 340,000
-7.48% ↓
2013年 367,471
22.03% ↑
2012年 301,125 -
2011年 301,125
36.95% ↑
2010年 219,881
30.73% ↑
2009年 168,200
-30.58% ↓
2008年 242,300
31.97% ↑
2007年 183,600
10.07% ↑
2006年 166,800
-12.12% ↓
2005年 189,800
1.9% ↑
2004年 186,255
-4.29% ↓
2003年 194,600
0.57% ↑
2002年 193,500
15.76% ↑
2001年 167,162
5.53% ↑
2000年 158,400
5.86% ↑
1999年 149,630
4.2% ↑
1998年 143,600
2.51% ↑
1997年 140,084
-10.52% ↓
1996年 156,545
4.36% ↑
1995年 150,000
3.45% ↑
1994年 145,000
7.41% ↑
1993年 135,000
3.85% ↑
1992年 130,000
5.27% ↑
1991年 123,494
33.51% ↑
1990年 92,500
42.87% ↑
1989年 64,745
3.49% ↑
1988年 62,561
-0.36% ↓
1987年 62,787
-0.02% ↓
1986年 62,800
-0.32% ↓
1985年 63,000
-11.27% ↓
1984年 71,000
-6.58% ↓
1983年 76,000
-13.14% ↓
1982年 87,500
-2.78% ↓
1981年 90,000
0.15% ↑
1980年 89,865
19.82% ↑
1979年 75,000
25% ↑
1978年 60,000
33.33% ↑
1977年 45,000
-10% ↓
1976年 50,000
-13.49% ↓
1975年 57,800
-12.29% ↓
1974年 65,900
11.2% ↑
1973年 59,261
-11.55% ↓
1972年 67,000
1.52% ↑
1971年 66,000
-1.49% ↓
1970年 67,000
8.41% ↑
1969年 61,800
2.05% ↑
1968年 60,559
6.87% ↑
1967年 56,666
-12.69% ↓
1966年 64,900
-2.26% ↓
1965年 66,400
3.43% ↑
1964年 64,200
28.4% ↑
1963年 50,000
13.64% ↑
1962年 44,000
10% ↑
1961年 40,000 -

レバノンの牛乳生産量の推移を振り返ると、国の農業発展や政治的・社会的影響を如実に反映しています。1960年代から1970年代にかけて生産量は穏やかに増加していましたが、1975年から1990年にかけて続いた内戦の影響で生産は大きく落ち込みました。この期間、経済的混乱や農業基盤の破壊が要因となり、生産量は最低で45,000トン(1977年)にまで減少しています。

内戦終結後の1990年代には農業政策の再建と経済の復興が進み、牛乳生産量は大きく回復しました。特に1990年から2000年にかけては、92,500トンから193,500トンまで成長しており、この回復は安定した社会を取り戻したことや、乳製品需要の高まりが主な原動力でした。2000年代に入るとさらに生産が増大し、2008年には242,300トンに達しましたが、この後のデータを見ると、生産量が一定の上下を繰り返していることがわかります。

興味深い点として、2011年から2013年にかけての急激な増加があります。この時期の生産量は301,125トンから367,471トンへと目を見張る成長を遂げています。この成長は、農業補助の拡大や乳牛の改良、そして隣国シリアの紛争による乳製品需要の変化が影響した可能性が考えられます。しかし、2014年以降は再び減少に向かい、2016年および2017年には300,000トンを割り込みました。これは主に経済の低迷や気候変動による影響、さらには地域での政治的不安定さが影響を及ぼしていると予測されます。

ここ数年間(2018年以降)の生産量は、概ね300,000トン台で推移していますが、2023年には331,986トンとなり、2019年の350,000トンを下回る結果となっています。近年の減少傾向は主にレバノン国内の厳しい経済危機やインフラ整備の課題が影響している可能性が大きいです。また、気候変動の影響や牧草地の減少、さらには輸入飼料コストの上昇が、牛乳生産量の拡大を妨げる要因として挙げられるでしょう。

レバノンの牛乳生産量の動向を考えると、牛乳は食料安全保障や国民の栄養摂取において重要な役割を果たしています。特にレバノンのように輸入食品に強く依存する国では、乳製品の自給率を高めることが、食料システムの持続可能性と国の経済的安定に寄与します。この点から、今後は農業生産インフラの改善を中心とした政策の強化が求められます。

具体的には、農業従事者への技術指導や気候変動に強い乳牛品種の導入、飼料生産の国内拡大が重要となるでしょう。また地域間での協力や貿易環境の整備も検討すべき課題です。たとえば新たな農業融資プログラムを設け、小規模牧場経営者に資金援助を行うことが、その一助となるでしょう。また、周辺諸国との乳製品貿易協力を深め、安定した供給網を構築することも重要です。

経済的な要因に加えて地政学的リスクも農業に大きな影響を及ぼします。紛争地域の近隣国として、地域的な不安定さが続くことで、乳牛や生産資材の輸送に障害が生じる可能性があります。このため、地域の国際機関などと連携し、輸送路の確保や危機時の対応計画を策定することが重要です。

結論として、レバノンは過去の困難を乗り越え牛乳生産量をここまで成長させてきましたが、現在直面している問題を解決し、生産基盤を強化するための長期的な努力が必要です。レバノン政府だけでなく、国際機関やNGOも含めた多層的な支援が求められます。これにより、食料安全保障の確立と、持続可能な農業モデルが実現されることが期待されます。