Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、レバノンにおける馬の飼養数は1961年から2022年の間で著しい変動を見せています。レバノンの馬飼養数は、全体として減少傾向が見られるものの、特定の時期には急激な増加や減少が確認されました。特に1970年代の内戦期間や1990年代以降の社会経済的混乱が、馬の飼養数の動向に大きな影響を与えたと推測されます。2022年の飼養数は3,350頭と報告され、2020年からの減少が続いています。
レバノンの馬飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 3,350 |
2021年 | 3,667 |
2020年 | 3,780 |
2019年 | 3,270 |
2018年 | 3,290 |
2017年 | 3,576 |
2016年 | 3,804 |
2015年 | 3,612 |
2014年 | 4,000 |
2013年 | 3,800 |
2012年 | 3,650 |
2011年 | 2,634 |
2010年 | 3,580 |
2009年 | 3,580 |
2008年 | 3,580 |
2007年 | 3,580 |
2006年 | 3,580 |
2005年 | 3,580 |
2004年 | 3,580 |
2003年 | 3,580 |
2002年 | 3,580 |
2001年 | 3,580 |
2000年 | 3,580 |
1999年 | 4,000 |
1998年 | 4,000 |
1997年 | 5,000 |
1996年 | 4,919 |
1995年 | 5,280 |
1994年 | 6,810 |
1993年 | 8,000 |
1992年 | 9,000 |
1991年 | 10,440 |
1990年 | 8,250 |
1989年 | 6,000 |
1988年 | 5,000 |
1987年 | 4,500 |
1986年 | 3,500 |
1985年 | 2,500 |
1984年 | 2,200 |
1983年 | 2,200 |
1982年 | 2,200 |
1981年 | 2,250 |
1980年 | 2,229 |
1979年 | 2,000 |
1978年 | 2,000 |
1977年 | 2,000 |
1976年 | 2,000 |
1975年 | 3,000 |
1974年 | 3,700 |
1973年 | 3,699 |
1972年 | 3,904 |
1971年 | 3,900 |
1970年 | 3,858 |
1969年 | 2,950 |
1968年 | 2,944 |
1967年 | 2,860 |
1966年 | 3,204 |
1965年 | 3,327 |
1964年 | 2,851 |
1963年 | 3,500 |
1962年 | 3,500 |
1961年 | 3,200 |
レバノンにおける馬の飼養数の推移を観察すると、いくつかの特徴的なパターンが浮かび上がります。一つ目の重要なポイントは、1960年代から1970年代初頭までの間におおむね安定した動向が見られる一方で、1970年代半ばから急激に数が減少した時期が存在することです。この時期の背景には、1975年に始まったレバノン内戦が関係していると考えられます。内戦期間中(1975~1990年)は、社会の混乱が深刻化し、農牧業のインフラの崩壊や治安の悪化から、飼育環境の維持が困難になったことが馬の飼養数減少の直接的な原因と推測されます。
1986年から1991年にかけて、馬の飼養数は初めて劇的な増加傾向を示しました。この期間は内戦が終盤に差しかかった時期であり、安定への兆しが現れたこと、さらに農村部での再生産や生活の再建が進み始めたことが影響したと考えられます。ただしその後、1990年代初頭からは再び減少傾向に転じ、1995年以降は一貫して4,000頭を大きく下回る水準が続きました。この減少傾向は、農業政策の転換や都市化の加速、さらには経済的な要因などによるものと推測されます。
近年のデータでは、飼養数は大幅な増加または減少を伴わない安定した推移を見せていますが、全体的には減少が続いている状況です。2022年の3,350頭というデータは、レバノンが抱える現在の経済危機や地域情勢が影響している可能性があります。特に2019年以降は、レバノン・ポンドの急落や政治的な不安定性などが生活全般を直撃しており、動物の飼育維持のコスト上昇が馬の飼養者にさらなる負担をかけています。また、2020年の新型コロナウイルス感染症の流行も、飼育関連の供給網に影響を与えたと見られます。
課題として挙げられるのは、このような経済的および社会的要因が馬の飼養を巡る環境に及ぼす長期的な影響です。例えば、馬を利用する伝統的な農業や文化活動の継承が困難になる恐れがあり、これに対する具体的対策が必要とされます。一方で、ファーム観光や馬術競技のような新たな用途を模索することも経済的な復興の一助となる可能性があります。
将来的な対策としては、まず飼育者への支援策を強化することが重要です。具体的には、家畜飼料や医療の補助金制度を導入し、飼育維持のコストを抑える取り組みが有効です。また、農村部へのインフラ整備を進めることで、伝統的な牧畜業の基盤を安定化させることも必要です。さらに、レバノン国内での馬産業の多様化を図るため、国際機関や近隣諸国との協力を深めることも検討すべきです。
全体として、レバノンの馬飼養数の推移は同国の政治的、経済的そして社会的な歴史を反映しています。今後の政策立案においては、単なる動物飼育数の確保に留まらず、持続可能な農牧業と地域経済の発展を目指した包括的なアプローチが求められます。この意味で、国際的支援や多国間協力は鍵となるでしょう。レバノンの馬飼養数データは、同国の発展と安定に向けた重要な指標の一つといえます。