レバノンの豚飼育数は1961年の7,500頭からスタートし、1980年代半ばにかけて増加傾向が見られました。ピークは1987年の49,120頭でしたが、それ以降、減少傾向に転じました。特に2000年代に入ると急激な減少が見られ、2006年以降はおおよそ1万頭を下回る低い水準で安定しています。2022年には飼育数が7,093頭となり、記録されたデータの中で最低水準となっています。この推移は、地域の経済状況、地政学的リスク、宗教的・文化的背景など、多様な要因の影響を受けている可能性があります。
レバノンの豚飼育数推移(1961-2022)
年度 | 飼育数(頭) |
---|---|
2022年 | 7,093 |
2021年 | 7,257 |
2020年 | 7,379 |
2019年 | 7,544 |
2018年 | 7,658 |
2017年 | 7,702 |
2016年 | 7,564 |
2015年 | 7,845 |
2014年 | 8,000 |
2013年 | 7,900 |
2012年 | 7,800 |
2011年 | 7,650 |
2010年 | 7,735 |
2009年 | 8,000 |
2008年 | 8,500 |
2007年 | 9,000 |
2006年 | 10,000 |
2005年 | 11,000 |
2004年 | 12,500 |
2003年 | 14,000 |
2002年 | 21,000 |
2001年 | 23,000 |
2000年 | 26,000 |
1999年 | 28,000 |
1998年 | 34,000 |
1997年 | 35,000 |
1996年 | 40,000 |
1995年 | 45,000 |
1994年 | 52,795 |
1993年 | 48,000 |
1992年 | 45,000 |
1991年 | 43,703 |
1990年 | 45,000 |
1989年 | 48,865 |
1988年 | 47,355 |
1987年 | 49,120 |
1986年 | 39,000 |
1985年 | 33,000 |
1984年 | 27,000 |
1983年 | 22,000 |
1982年 | 19,000 |
1981年 | 19,000 |
1980年 | 18,805 |
1979年 | 16,000 |
1978年 | 16,000 |
1977年 | 16,000 |
1976年 | 16,000 |
1975年 | 18,000 |
1974年 | 19,000 |
1973年 | 20,650 |
1972年 | 18,396 |
1971年 | 17,535 |
1970年 | 16,492 |
1969年 | 13,160 |
1968年 | 13,610 |
1967年 | 8,802 |
1966年 | 9,609 |
1965年 | 9,034 |
1964年 | 7,915 |
1963年 | 8,500 |
1962年 | 8,000 |
1961年 | 7,500 |
国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによれば、1961年から2022年の期間でレバノンの豚飼育数には顕著な変動が見られます。1961年の7,500頭から開始し、1970年代後半までは1万6千頭前後で停滞していましたが、1980年代になると急速に増加し、1987年には49,120頭というピークに達しました。しかし、その後1990年以降は減少傾向に転じ、特に2000年代に入ると急激な減少が記録されています。2022年には7,093頭にとどまり、記録期間中で最低値を更新しました。
この長期的な変動には複数の背景が考えられます。一つには、1970年代後半から1980年代にかけては経済的・社会的な成長が飼育数の増加を後押しした可能性があります。特に、当時の中東地域における畜産業の拡大は、生産性の向上や需要の増加につながったと考えられます。しかし、1980年代末から1990年代以降の減少傾向には、レバノン内戦(1975年~1990年)の影響が重要な要因として挙げられます。この内戦期にはインフラの崩壊や経済的な混乱が顕著であり、農業や畜産業を含む生産基盤の弱体化が進みました。
地政学的な側面も見逃せません。レバノンの豚飼育は、その消費者層が宗教的制約を受けることもあり、国内市場が限定的である点が課題です。イスラム教徒が多い国では豚肉の消費は制限されるため、レバノンでも同様の需要制約が存在します。このため、周辺諸国への輸出を視野に入れることは可能性としてありますが、地域の不安定な情勢や国際競争の激化が障壁となっています。
飼育数減少には、経済的要因も深く関与しています。2000年代以降、特に2020年以降の経済危機や新型コロナウイルスの影響が、畜産業の縮小を加速させたと推測されます。経済危機による飼料価格の高騰や資金調達の困難さが、中小規模の畜産事業者に大きな打撃を与えました。また、コロナ禍に伴う物流の混乱や需要の減少も、さらなる生産減退につながったと考えられます。
レバノンの豚飼育数の現状と課題に対して、いくつかの具体的な対策が考えられます。まず、地域間協力の枠組みを構築し、飼料供給網の安定化を図ることが重要です。例えば、国際的な農業支援プログラムに参加し、技術移転や資金援助を受けることで、生産性の向上が期待されます。また、宗教的な制約を補完する形で、豚肉以外の副産物(有機肥料や飼料加工品)を活用する新たなビジネスモデルを確立することも可能性の一つです。
さらに、政策面での改革も必要です。畜産業における規制を見直し、中小規模事業者が参入しやすい環境を整えることが、持続可能な発展の鍵となります。また、消費者層の多様化に対応し、輸出市場の拡大を目指すことも選択肢です。特に、隣国やアフリカ地域への輸出可能性を探ることで、新たな市場の開拓が見込まれます。
結論として、レバノンの豚飼育数は、長期的なトレンドでは減少しているものの、適切な政策や地域協力によって回復の余地があると考えられます。農業と畜産業の再建は、同時に地域の安定化や経済成長にも寄与するため、これらの分野への重点的な支援が求められます。国際社会とのパートナーシップを深めることで、持続可能な発展への道筋が開ける可能性があります。