国連の食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、レバノンのニンニクの生産量は1961年以降、顕著な波を描きながら増減を繰り返しています。特に1980年代後半から1990年代前半にかけては大幅な増産が見られましたが、その後生産量は減少へと転じ、その変動の幅がさらに大きくなっています。2023年時点での生産量は2,999トンと小幅に増加しましたが、過去のピークである1996年の46,890トンと比較すると大きな落差があります。
レバノンのニンニク生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 2,999 |
8.51% ↑
|
2022年 | 2,764 |
15.68% ↑
|
2021年 | 2,389 |
-16.46% ↓
|
2020年 | 2,860 | - |
2019年 | 2,860 |
-33.49% ↓
|
2018年 | 4,300 |
-14% ↓
|
2017年 | 5,000 |
360.41% ↑
|
2016年 | 1,086 |
-38.39% ↓
|
2015年 | 1,763 |
-6.29% ↓
|
2014年 | 1,881 |
-15.54% ↓
|
2013年 | 2,227 |
1.15% ↑
|
2012年 | 2,202 |
-29.2% ↓
|
2011年 | 3,110 |
-15.88% ↓
|
2010年 | 3,697 |
32.03% ↑
|
2009年 | 2,800 |
-15.15% ↓
|
2008年 | 3,300 | - |
2007年 | 3,300 |
6.45% ↑
|
2006年 | 3,100 |
-6.06% ↓
|
2005年 | 3,300 |
-13.16% ↓
|
2004年 | 3,800 |
-25.49% ↓
|
2003年 | 5,100 |
-44.57% ↓
|
2002年 | 9,200 |
-16.36% ↓
|
2001年 | 11,000 | - |
2000年 | 11,000 |
-44.72% ↓
|
1999年 | 19,900 |
-7.01% ↓
|
1998年 | 21,400 |
55.07% ↑
|
1997年 | 13,800 |
-70.57% ↓
|
1996年 | 46,890 |
17.23% ↑
|
1995年 | 40,000 |
14.29% ↑
|
1994年 | 35,000 |
6.06% ↑
|
1993年 | 33,000 |
18.82% ↑
|
1992年 | 27,772 |
3.93% ↑
|
1991年 | 26,722 |
12.75% ↑
|
1990年 | 23,700 |
18.5% ↑
|
1989年 | 20,000 |
25% ↑
|
1988年 | 16,000 |
33.33% ↑
|
1987年 | 12,000 |
50% ↑
|
1986年 | 8,000 |
23.08% ↑
|
1985年 | 6,500 |
30% ↑
|
1984年 | 5,000 |
25% ↑
|
1983年 | 4,000 |
33.33% ↑
|
1982年 | 3,000 |
7.14% ↑
|
1981年 | 2,800 |
12% ↑
|
1980年 | 2,500 | - |
1979年 | 2,500 | - |
1978年 | 2,500 |
4.17% ↑
|
1977年 | 2,400 |
9.09% ↑
|
1976年 | 2,200 |
10% ↑
|
1975年 | 2,000 |
-58.81% ↓
|
1974年 | 4,856 |
196.46% ↑
|
1973年 | 1,638 |
-4.82% ↓
|
1972年 | 1,721 |
-41.74% ↓
|
1971年 | 2,954 |
21.76% ↑
|
1970年 | 2,426 |
-14.91% ↓
|
1969年 | 2,851 |
5.99% ↑
|
1968年 | 2,690 |
-27.75% ↓
|
1967年 | 3,723 |
48.92% ↑
|
1966年 | 2,500 | - |
1965年 | 2,500 |
-3.85% ↓
|
1964年 | 2,600 |
-13.33% ↓
|
1963年 | 3,000 |
150% ↑
|
1962年 | 1,200 |
71.43% ↑
|
1961年 | 700 | - |
1961年に700トンの生産量からスタートしたレバノンのニンニク生産量は、1970年代後半から1980年代後半にかけて年間2,500トンから3,000トンの水準を維持していました。しかし、その後、1980年代半ば以降、農業改革や灌漑技術の導入、肥沃な土地の利用率の向上などにより飛躍的な生産増加を記録しました。1986年には8,000トン、1989年には20,000トン、1996年には46,890トンという前例のないピークに達しました。その背景には、輸出向け対策の強化や市場需要の拡大が影響していると考えられます。
ところが、1997年を境に生産量は急激に減少しはじめ、2003年には5,100トン、2006年にはわずか3,100トンに低下しました。この急落の要因として、まず、レバノン国内での政治的不安定さや、地域紛争の影響が挙げられます。こうした状況は農業従事者の減少や主要生産地における生産環境の悪化につながりました。また、近年、消費者嗜好の変化や輸入品の競争激化も、国内の生産者に負の影響を与えた可能性があります。
さらに、2006年以降の数値を見ると、停滞状態から抜け出すための具体的な政策や技術的サポートが不足していることがうかがえます。特に2020年以降、パンデミックや経済危機による農業サプライチェーンの混乱が、収穫量のさらなる減少を引き起こしました。2023年には2,999トンまで回復しましたが、依然として安定的な基盤を築けていないことが明らかです。
今後の課題として、土壌の塩害や乾燥化といった自然環境の問題、および気候変動の影響が強く指摘されています。また、農業の機械化が他国に比べて遅れている点も顕著です。この点では、隣国のトルコやシリアの先進的な農法を取り入れる、あるいは日本や韓国のような精密農業技術を導入することが求められます。
政策的には、農家を支援するための国際的な支援プログラムの創設や、政府による補助金の提供が重要です。また、持続可能な農業発展のための国際協力の推進も欠かせません。特にEUや国際連合の支援を得ることができれば、インフラ整備や高品質の種苗の提供を実現できるでしょう。さらに、国内消費量の増加を目指した価値付加型商品としてのマーケティングも試みるべきです。
結論として、レバノンのニンニク産業を再建するためには、地域の特性を活かした発展計画の構築と、国際的な協力体制の強化が必要です。また、農業の近代化を図ると同時に、地元農家が安定して生産を続けられるような環境整備が急務です。これにより、持続可能な発展を実現し、再び世界市場での競争力を高めることが期待されます。