国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、レバノンの羊肉生産量は1961年の12,716トンから始まり、2023年には4,982トンとなっています。この約60年にわたるデータは、特に1970年代半ば以降の大幅な生産減少とその後の不安定な推移が顕著です。また、2000年代初頭には一時的な急増がある一方、直近の10年では低迷状態が続いています。
レバノンの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 4,982 |
13.06% ↑
|
2022年 | 4,406 |
-1.87% ↓
|
2021年 | 4,491 |
-2.28% ↓
|
2020年 | 4,595 |
-18.25% ↓
|
2019年 | 5,622 |
1.93% ↑
|
2018年 | 5,515 |
20.49% ↑
|
2017年 | 4,577 |
-7.32% ↓
|
2016年 | 4,939 |
-25.41% ↓
|
2015年 | 6,621 |
-14.2% ↓
|
2014年 | 7,717 |
1.22% ↑
|
2013年 | 7,624 |
14.75% ↑
|
2012年 | 6,644 |
-18.84% ↓
|
2011年 | 8,186 |
-23.55% ↓
|
2010年 | 10,708 |
-19.84% ↓
|
2009年 | 13,358 |
44.57% ↑
|
2008年 | 9,240 |
14.91% ↑
|
2007年 | 8,041 |
10.09% ↑
|
2006年 | 7,304 |
-5.14% ↓
|
2005年 | 7,700 |
-33.08% ↓
|
2004年 | 11,506 |
-23.08% ↓
|
2003年 | 14,958 |
4.76% ↑
|
2002年 | 14,278 |
-18.1% ↓
|
2001年 | 17,433 |
189.3% ↑
|
2000年 | 6,026 |
2.2% ↑
|
1999年 | 5,896 |
11.85% ↑
|
1998年 | 5,271 |
-22.16% ↓
|
1997年 | 6,772 |
8.05% ↑
|
1996年 | 6,267 |
-13.68% ↓
|
1995年 | 7,260 |
-44.72% ↓
|
1994年 | 13,134 |
0.34% ↑
|
1993年 | 13,090 |
58.67% ↑
|
1992年 | 8,250 |
10.29% ↑
|
1991年 | 7,480 |
37.65% ↑
|
1990年 | 5,434 |
-21.59% ↓
|
1989年 | 6,930 |
-25.71% ↓
|
1988年 | 9,328 |
112% ↑
|
1987年 | 4,400 |
-2.91% ↓
|
1986年 | 4,532 |
-6.36% ↓
|
1985年 | 4,840 |
-31.89% ↓
|
1984年 | 7,106 |
-13.87% ↓
|
1983年 | 8,250 |
29.53% ↑
|
1982年 | 6,369 |
-1.7% ↓
|
1981年 | 6,479 |
8.47% ↑
|
1980年 | 5,973 |
-4.06% ↓
|
1979年 | 6,226 |
6.79% ↑
|
1978年 | 5,830 |
-8.62% ↓
|
1977年 | 6,380 |
79.01% ↑
|
1976年 | 3,564 |
-10% ↓
|
1975年 | 3,960 |
-52.63% ↓
|
1974年 | 8,360 |
-5% ↓
|
1973年 | 8,800 |
-21.57% ↓
|
1972年 | 11,220 |
-5.56% ↓
|
1971年 | 11,880 |
-14.96% ↓
|
1970年 | 13,970 |
8.55% ↑
|
1969年 | 12,870 |
-18.18% ↓
|
1968年 | 15,730 |
39.65% ↑
|
1967年 | 11,264 |
-28.99% ↓
|
1966年 | 15,862 |
6.19% ↑
|
1965年 | 14,938 |
-9.47% ↓
|
1964年 | 16,500 |
22.75% ↑
|
1963年 | 13,442 |
-5.71% ↓
|
1962年 | 14,256 |
12.11% ↑
|
1961年 | 12,716 | - |
レバノンの羊肉生産量推移データは、同国の農業と経済、さらには地政学的状況と深い関連性があります。1961年から1974年にかけて、羊肉の生産量はほぼ一貫して12,000~16,000トンの範囲内で保たれ、安定した生産が見られました。しかし、1975年以降、レバノン内戦(1975年~1990年)が勃発したことで農業全般が大きな打撃を受け、1975年には3,960トンと急激に落ち込みました。
内戦中およびその後の約20年間は、政治的および経済的混乱が続き、羊肉生産量も不安定な推移を示しています。1988年の9,328トンという回復に見える数値も一時的なものであり、その後の生産量は依然として低水準に留まりました。内戦による農地破壊や家畜資源への甚大な影響が背景にあります。
2001年には17,433トンと大幅な生産増加がありました。この一時的な回復は、国内の安定化や地域の需要の変化が原因と考えられます。しかし、この回復は持続せず、2005年以降は再び減少傾向に転じます。その後の10年間では8,000トン前後で横ばいになりましたが、2016年以降はさらに低迷し、2023年まで平均的に5,000トン前後と過去最低水準で推移しています。この低迷は、一部では経済危機やレバノン・シリア間の紛争や移民問題が影響しているとされています。
羊肉はレバノンの他の農産品と同様に、国内消費だけでなく一部輸出にも関わる重要な産品です。しかし、近年の生産低迷は、農業基盤の弱体化、人材不足、インフラの老朽化、気候変動の影響など多岐にわたる要因が複雑に絡み合っています。また、COVID-19のパンデミックが物流や市場流通に与えた混乱も見逃せない影響要因です。
一方で、近隣諸国と比較を見ると、例えばトルコやエジプトでは、生産効率向上や支援政策により羊肉生産が大きな伸びを見せています。例えばトルコのように農村振興計画と輸出支援を導入することで、レバノンも持続的な成長を目指すべきです。また、ヨーロッパ諸国のような環境に配慮しながらの高付加価値作物(例:有機羊肉など)への転換も一つの方策です。
レバノンの現状を見ると、内政と農業政策がしっかり統合されていない点が課題です。国家全体で農業従事者への資金援助、教育、技術導入を進める必要があります。また、牧草地の適切な管理や水資源の効率化など、気候変動を踏まえた取り組みも急務です。さらに、近隣諸国や国際機関(FAOやUNDP)の支援を積極的に活用し、地域協力の強化を図ることが重要です。
結論として、データから見えるレバノンの羊肉生産の低迷は、長期的な内戦の影響だけでなく、政策的な不備や環境負荷、地政学的リスクによるものです。しかしながら、現在の状況は改善のチャンスでもあります。根幹的な改革を行い、地域全体での相互支援を深めることで、レバノンの羊肉産業は持続可能な形で回復し得るでしょう。具体的には、持続可能な農業プログラムの策定、輸出市場の多角化、教育訓練の充実などが挙げられます。国際協力を活用しながら、農業産業の復興を目指していくべきです。