Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新のデータによると、レバノンのレモン・ライムの生産量は2023年で107,245トンに達しました。過去60年以上のデータを振り返ると、生産量は比較的変動していますが、近年は安定した成長を見せています。ただし、1970年代中盤から1980年代中盤にかけての生産量の急減や、2010年をピークにその後一時減少するなど、政治的・経済的背景や地理的要因が影響を及ぼしてきたことが伺えます。
レバノンのレモン・ライム生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 107,245 |
0.29% ↑
|
2022年 | 106,932 |
0.43% ↑
|
2021年 | 106,479 |
0.78% ↑
|
2020年 | 105,650 |
0.25% ↑
|
2019年 | 105,390 |
1.96% ↑
|
2018年 | 103,360 |
-0.6% ↓
|
2017年 | 103,979 |
-10.16% ↓
|
2016年 | 115,740 |
8.85% ↑
|
2015年 | 106,332 |
1.49% ↑
|
2014年 | 104,773 |
0.89% ↑
|
2013年 | 103,844 |
0.13% ↑
|
2012年 | 103,706 |
13.98% ↑
|
2011年 | 90,987 |
14.46% ↑
|
2010年 | 79,491 |
-34.52% ↓
|
2009年 | 121,400 |
6.49% ↑
|
2008年 | 114,000 | - |
2007年 | 114,000 |
24.32% ↑
|
2006年 | 91,700 |
-18.99% ↓
|
2005年 | 113,200 |
6.29% ↑
|
2004年 | 106,500 |
28% ↑
|
2003年 | 83,200 |
2.38% ↑
|
2002年 | 81,263 |
-21.18% ↓
|
2001年 | 103,100 |
-0.58% ↓
|
2000年 | 103,700 |
27.4% ↑
|
1999年 | 81,400 |
-4.8% ↓
|
1998年 | 85,500 |
-16.44% ↓
|
1997年 | 102,323 |
-5.05% ↓
|
1996年 | 107,762 |
5.65% ↑
|
1995年 | 102,000 |
3.18% ↑
|
1994年 | 98,853 |
5.16% ↑
|
1993年 | 94,000 |
1.23% ↑
|
1992年 | 92,862 |
3.04% ↑
|
1991年 | 90,122 |
15.54% ↑
|
1990年 | 78,000 |
17.25% ↑
|
1989年 | 66,523 |
5.46% ↑
|
1988年 | 63,080 |
-2.58% ↓
|
1987年 | 64,753 |
29.51% ↑
|
1986年 | 50,000 |
25% ↑
|
1985年 | 40,000 |
33.33% ↑
|
1984年 | 30,000 |
-47.37% ↓
|
1983年 | 57,000 |
1.79% ↑
|
1982年 | 56,000 |
1.82% ↑
|
1981年 | 55,000 |
-8.33% ↓
|
1980年 | 60,000 |
-7.69% ↓
|
1979年 | 65,000 |
8.33% ↑
|
1978年 | 60,000 |
-7.69% ↓
|
1977年 | 65,000 |
-19.75% ↓
|
1976年 | 81,000 |
1.25% ↑
|
1975年 | 80,000 |
-24.48% ↓
|
1974年 | 105,929 |
33.4% ↑
|
1973年 | 79,408 |
-7.37% ↓
|
1972年 | 85,729 |
4.58% ↑
|
1971年 | 81,973 |
9.96% ↑
|
1970年 | 74,546 |
22.72% ↑
|
1969年 | 60,744 |
2.31% ↑
|
1968年 | 59,374 |
4.33% ↑
|
1967年 | 56,910 |
-17.4% ↓
|
1966年 | 68,900 |
-0.14% ↓
|
1965年 | 69,000 |
6.15% ↑
|
1964年 | 65,000 |
8.33% ↑
|
1963年 | 60,000 |
9.09% ↑
|
1962年 | 55,000 |
-3.51% ↓
|
1961年 | 57,000 | - |
レバノンのレモン・ライム生産量の推移を見ると、1960年代にはおおむね50,000トンから70,000トンの間で推移していました。この時期は安定した増加傾向が見られ、国内の農業技術や市場需要の向上がこの成長を支えたと考えられます。1970年から1974年にかけては81,973トンからピークの105,929トンまで急激な上昇を記録しましたが、1975年から始まったレバノン内戦により状況は一変します。同内戦の影響で農業インフラが破壊されるとともに、生産活動が著しく縮小し、1984年には30,000トンという最低記録を記しています。
その後、1990年代にレバノン内戦が終結すると生産量は回復基調に入り、特に1996年には107,762トンと歴代最高値を更新しています。この期間の回復には、国際的な支援や国内の復興政策が貢献しています。しかし、2000年代初頭には再び波を打つような変動がありました。これは国際市場の変動、輸出ポートの制限、気候変動の影響など複合的な要因が影響していると考えられます。
2010年代以降になると、生産量は再び安定化し、年間10万トン前後を維持しています。特に2023年には107,245トンで、安定した増加傾向が確認できます。この安定は、農業技術の進歩や政府による農業振興策、国際市場の需要増加によるものと推測されます。また、気候変動の影響に対してもレバノンの農業部門がある程度適応していることが示唆されます。
一方で、これらのデータは以下の課題も浮き彫りにしています。まず、レバノンの政治的・経済的状況がレモン・ライムの生産に与える影響についての脆弱性です。例えば、紛争や経済危機の際に農業インフラが打撃を受けやすく、長期的な回復に時間を要することが過去の推移から明らかです。さらに、地中海性気候を特徴とするレバノンでは近年の気候変動が乾燥や水不足を増加させており、これが生産に与えるリスクにも注意を向ける必要があります。
これらの課題に対応するためには、いくつかの具体的な対策が検討されるべきです。まず、灌漑インフラの改良と水資源管理の強化は、農産物の持続的生産を支える重要な対策です。また、地中海地域内での農業協力を深め、気候変動の影響や市場変動に対する地域的な連携を図ることも効果的です。さらに、レバノン産のレモン・ライムの品質向上を目指したブランド戦略を策定し、国際市場での競争力を高めることが輸出拡大に繋がります。
結論として、レバノンのレモン・ライム生産量は歴史的に様々な上下動を経験してきましたが、現在は比較的安定した状況にあります。過去の経験から、政治的安定と経済基盤の整備が農業の成長を支える鍵であることがわかります。レバノンが長期的な視点で未来を見据え、継続的な農業支援策を展開することが、今後の食品安全保障や経済発展において重要であると言えます。FAOや近隣諸国との協力を深化させることで、レバノンはそのポテンシャルをさらに活かすことができるでしょう。